第2話
「糸電話?」
反射的に聞き返しながら、私は自分の周囲を見回していた。
視界に入る範囲内に、糸電話なんて影も形もない。スマホはあるけれど、それは机の上に置かれたままであり、通話中の状態ではなかった。
「そうです。ほら、運命の赤い糸という言葉があるでしょう? あれで結ばれた糸電話ですわ」
なるほど、運命の赤い糸ならば、不可視どころか存在も感知できない代物だろう。それで作った糸電話ならば、見えないのも当然だ。
……などと、納得している場合ではなかった。
「いやいや、おかしいでしょう。運命の赤い糸だなんて……。しかも、そんな迷信みたいなもので、糸電話を作るなんて!」
おかしいのは、妄想の存在であろう女性を相手に、普通に会話している私自身。その点は棚上げにして、つい追求してしまう。
「あら、おかしくなんてありません。だって、これ、神様が用意してくださった糸電話ですもの」
良く言えば幻想的な、悪く言えば胡散臭い話になってきた。
「運命の相手に巡り会いたいとお祈りしていたら、神様が現れて……。『運命の赤い糸で繋がっている者と話せるようにしてやろう。代価は死後の魂でよいぞ』と言ってくださったのです」