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笑いの方程式 大漫才ロワイヤル  作者: くろすけ
第八章 待ち合わせ
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8-3話 彼女らの余りのワガママ放題に

 第七艦隊は島津とは一応の面識があったようであるが、下水道とは初対面とのことだ。戸惑いながらも茶髪と金髪のデブは自己紹介をしている。


(問題はここからやな)


 鉄太は、少し離れた所からこちらを凝視している6人組の方へ目を向ける。今日の合コン相手、笑天下(しょうてんした)の連中だ。


「立岩どん。どうしたでごわすか?」第七艦隊らと挨拶を終えたようで島津が呼び掛けて来た。


「ど、どうもしてへんよ」


「そうでごわすか? ところで、さっきから気になっていたでごわすが、あそこの連中がずっとガン付けてきてるでごわす。絡まれる前にさっさと移動した方がよかと思うでごわす」


 鉄太の隣りにきた島津は、6人組の方を見て語り掛けてきた。


 鉄太は白スーツの巨漢を眺める。


 彼の意見に同意して移動しようかと迷ったが、どうせすぐにバレることである。鉄太は覚悟を決めて「アレが今日の合コン相手や」と告げた。


 果たして島津は憤慨(ふんがい)した。


「は、はぁ? 何を言っているでごわす? 半分くらい男がいるように見えるでごわすが?」

「ゴワっさん、失礼やで。あれでも全員女や」


「いやいやいやいや、話が違うでごわす。今日の相手は女優と聞いたでごわす?」

「せやからアレ、女優やけど」


「どこがでごわす? よぉ言うても仮装パーティーの帰りでごわしょ」

「ウソは言うてへんよ。正真正銘、笑天下(しょうてんした)過激団の舞台女優たちや」


笑天下(しょうてんした)!? ってあの笑天下(しょうてんした)でごわすか?」


 島津の言う笑天下(しょうてんした)がどの笑天下(しょうてんした)かは知らないが、鉄太は「そうや」と肯定した。


 島津は、膝から崩れ落ちるのではないかと心配するほどに足をガクガクさせている。と、そこへ、


「何や何や?」


 クンカら4人が異変を感じて島津を取り囲んだ。すると島津は彼らに訴えた。


「みなさんダマされたでごわす。今日の合コン相手は女優じゃなくて、笑天下(しょうてんした)の女芸人どもでごわす」


 だが、彼の魂の叫びは他の者に届かなかった。


「別に俺らは合コンが目的ちゃうし……」

「せやな」


「みんなベッピンさんやんけ。余裕で行けるやろ。なぁイッちゃん」

「お前と一緒にすな」


「支配人。なんならずっとマシなクラブお連れしますんで、そっちで飲むでごわす」

「マジか!? あ、いや、スマン。行きたいのは山々なんやけど婿殿の顔を潰すことは出来んのや」


「え!? 婿殿!? 立岩どん、結婚してたでごわすか?」

「してへんわ!」


 やや小首を傾げた白スーツの巨漢は、おもむろに鉄太に近づくと耳打ちして問いかけて来た。


「ひょっとして、支配人はイズルちゃんの父上でごわすか?」

「……それは……言われへん」


 なんだか島津が面白い方向に勘違いしているようだ。


 常識的に考えてあんな下膨れの顔が、朝戸イズルの遺伝子に交じっているワケがないのだが、帰られると困るので鉄太はあえて否定はしないでおいた。


 そして、下須が島津におかしなことを口走る前にさっさと合コンを始めなければと思ったので、鉄太は珍妙な6人組に向かって右腕を上げて集合のシグナルを送った。


 しかし、彼女らは動かなかった。


 さらに「コッチやで~~」と呼び掛けても反応がない。


「照れてんのかな~~? ちょっと待ってて下さい。直接声かけて来ます」


 下須らにそう言うと、鉄太はダッシュで女性陣の元に向かった。


 だが、近づくにつれて足は重くなる。なぜならば見るからに剣呑なオーラを漂わせているのだ。


 鉄太は気付かない振りをして極力笑顔で問いかける。


「何してんのや。合コンしたないんか?」


 すると迷彩ズボンの武松子(たけまつこ)が一歩進み出ると、汚物を見るような目をしながら(なじ)って来た。


「よくも我らを(たばか)ってくれたな。金髪美少年の外人テレビディレクターなどと嘘八百並べよってからに」


「はぁ? そんなん言うてへんわ。金髪美少年の外人テレビディレクターなんか少女漫画の世界でもいてへんやろ! ワイが言うたのは、ディレクターと、外人と、美少年や」


「ならば、そのディレクターと美少年と外人とやらはドコにおる? まさかあそこのデブ3人と老爺(ろうや)2人がそれだと言うまいな」


「そ……そのまさかや」


 鉄太は視線を逸らして答えた。


 しばしの沈黙の後、武松子(たけまつこ)が鉄太の頭を(つか)んで無理矢理首をねじると、正面で見据えながら吐き捨てた。


愚弄(ぐろう)するな! チェンジだ。本物のディレクターと美少年と外人を連れて来い」


 また、それに呼応して、サバトらが勝手な要求をしてくる。


「そうじゃそうじゃ。ナメとんのか! ペナルティーとして夜景の見えるレストランをセッティングせぇ!」

「ジャネーズジュニアの誰でもええから連れて来い!」

「青年実業家も一緒にな!」


 だが、彼女らの余りのワガママ放題に鉄太の堪忍袋の緒が切れた。


「ええかげんにせぇ! ナメてんのはそっちやろ!!」


小説家になろうの評価の☆や感想を頂ければ、励みになりますのでよろしくお願いします。


次回、8-4話 「そいつにはドコでやるか言うてない」

つづきは12月22日の日曜日にアップします。

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