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笑いの方程式 大漫才ロワイヤル  作者: くろすけ
第六章 面子
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6-1話 目の前で大好きな人のパンチラを

 見舞いの後、笑パブの仕事を終え帰宅すると、鉄太は羊山(ようさん)から携帯電話の契約の確認について、店からの返事を伝えられた。


 出来なくもない。というのがその回答であった。


 契約の条件として、初期費用17万円の現金払いと、月々の支払いを銀行口座から引き落とし、もしくはNTTに毎月直接現金振り込みを行うというものだ。


 要するに、固定電話を持っていない鉄太ではクレジットの審査が通らないし、月々のクレジットカードでの支払いができないので、そうする必要があるとのこと。


 借金持ちの鉄太が17万円もの現金を一括で用意するのはかなりハードルが高いので、携帯電話の契約が事実上不可能であることを意味した。


 開斗は一言「残念やったな」で済ませようとしたが、それで収まらなかったのが鉄太である。


 携帯電話の契約を条件に合コンの面子(メンツ)を集めることを取引したのに、契約ができないのであれば、面子(メンツ)を集める理由がないのだ。


 この件は、喧々諤々(けんけんがくがく)した後に、ライブの構成を開斗が考えるということで決着した。


 鉄太としては、ネタの担当が自分である以上、ライブの構成を開斗が考えるということは当たり前のような気がしたので、いまいち得心はいかなかったのだが、笑パブの芸人たちに声を掛ければ4人ぐらいすぐに集まるだろうと、開斗からの言葉で不承不承(ふしょうぶしょう)ながら引き受けることにした。


 確かに。以前、ドブ芸人の巣窟(そうくつ)、笑パブ〈下楽下楽(げらげら)〉に藁部(わらべ)と五寸釘が訪れた際、芸人たちが全員、彼女らに熱狂していたので楽勝だと思った。


 しかし、この見通しが甘すぎたことを鉄太はすぐに思い知ることになった。


下楽下楽(げらげら)〉で合コンの参加者を募ったところ、砂鉄に磁石を近づけるがごとく、我も我もと押し寄せて来たのだが、合コン相手が笑天下の梁山泊であることを口を滑らせた結果、蜘蛛の子を散らすように皆逃げ去って行った。


 しかも、笑パブ仲間の間で鉄太が生贄を探しているとの噂が瞬く間に広がり、他の笑パブでも鉄太が声を掛けると脱兎のごとく逃げるというムーブが発生した。


 貧すれば鈍す。


 追い詰められた鉄太は不適合者にも声をかけまってしまい、気が付けば、ドブ芸人中のドブ芸人、靴下クンカクンカを引き入れてしまい、なぜか、〈ウヒョヒョ座〉支配人、下須一郎も参加することになってしまった。


 下須一郎とは額に美少年との刺青を入れた頭のオカシイ異常性癖者というだけではなく、藁部(わらべ)の父親ということもあり、二度と接触したくないと思った人物である。


 背に腹は代えられないとはいえ、合コンにジジイを2人も連れて行ったら相手は激怒するかもしれない。


 期日までになんとか他に4人以上集めて、あの2人をパージできないかと思った鉄太であった。

 



 5月25日、金曜日の昼過ぎ。


 えーびーすー放送の楽屋で満開ボーイズの二人は、ディレクター兼構成作家の島津正太郎と満開ラジオの打ち合わせをしていた。


 4日前の始球式で予定していたゲリラ収録直前に、島津が球場の階段から転げ落ちて入院して収録中止となったので、その時のしわ寄せが今に来ている。


 幸いにも島津は1日の経過観察後に退院できた。無駄に分厚い脂肪のお陰と言うが、そもそもその脂肪がなかったら転げ落ちなかったのでは? と、鉄太は思う。


 さて、鉄太の前にはリスナーからの葉書が数枚並べられている。ネット社会ではないこの時代において、ラジオの投稿は基本ハガキかFAXで行われるものであった。


 それはともかくとして、並べられた投稿ハガキ数枚を目の前にして鉄太は渋い顔をしていた。


 満開ラジオは大して聴取率も高くない番組なので、元々投稿ハガキ自体少なかった。だが、鉄太が渋い顔をしているのはハガキの枚数の少なさによるものではない。


 どれもこれも投稿の内容が変態すぎるのだ。


 比較的マシなハガキに鉄太はもう一度目を通す。


『ラジオネーム サドル大好きっ子


 満開ボーイズのテツさん、カイトさん、こんばんわ。

 いつも満開ラジオ面白く拝聴させてもらってます。


 実は私、大好きな人がいます。

 先日いくつかの偶然が重なり、目の前で大好きな人のパンチラを拝んでしまいました。

 しかしその人が穿()いていたのは、何とかという魔法少女がプリントがされたパンツでした。

 年齢的にどうなのかなと思ったので、そのことをやんわりと指摘したのですが、

 「何を穿()こうがワシの勝手じゃろ」と非常に立腹させてしまいました。


 そこでテツさんにご相談があります。

 どうしたら彼と仲直りできますでしょうか。


 68才 無職 男性』


 鉄太は島津に文句をぶつける。


「ゴワっさん。こんなん読まれへんで」

小説家になろうの評価の☆や感想を頂ければ、励みになりますのでよろしくお願いします。


次回、6-2話 「合コンの話にホイホイ乗って来る」

つづきは10月13日の日曜日にアップします。

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