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笑いの方程式 大漫才ロワイヤル  作者: くろすけ
第十五章 豆球
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15-4話 節分を、スポーツにしたものと言うたれば

「ユニ()ームを作るのはどや?」


「素晴らしいアイデアでごわす」


「ほな、そのユニホームの背中に、SやMのポジションをプリントするのはどないです?」


「最高でごわす」


 島津は左右にクンカと西錠を侍らせ、〈大咲花(おおさか)アイアンズ〉の今後の活動を巡ってアイデアを募っていた。


(ユニフォーム作るとか、そんな金ないやろ)


 彼らの横で鉄太は心の中でツッコんだ。


 チームは、ほぼほぼ島津に乗っ取られた形になっていたが、鉄太はむしろそれでいいと思った。


 彼のような強烈な個性があれば、自分たちがフェードアウトしていくのに都合がいいというものだ。


「さっきから一体なんの話や?」


 カウンターの向こうから、怪訝(けげん)な表情を浮かべたオーナーが鉄太らに問いかけた来た。


「実はな……」


 開斗がオーナーにあらましを説明する。


 鉄太らは楽屋からフロアへ場所を移しており、カウンターの前に一列に座っている。


 それと言うのも島津があまりにも暑がっていたのを見かねて、クンカがフロアへ行くことを提案したからだ。


 フロアには壁に付けるタイプの扇風機がある。真夏であれば力不足かもしれないが、梅雨入り前のこの季節ならばそれなりに役に立つのだ。


 ちなみに、店はまだ準備中なのだが、島津が人数分のドリンク(ミックスジュース)を注文することでオーナーの機嫌を取った。


 島津は生ビールを注文しようとしたが、彼以外の4人はこの後に仕事があるからダメだとオーナーから断られた。


 それでもクンカと西錠は、神仏でも拝むかのように島津に感謝した。


 それに対して鉄太は一言お礼を言っただけであった。


 島津は領収書を切ってもらっていたから会社の経費で落とすつもりだと察した。


 そうなると、公園でのスポーツドリンクの差し入れも経費で落としているに違いない。


 ならば、島津個人に感謝するのは(しゃく)というものだ。



「ポジションMの人は、亀甲縛りをするっちゅーのはどないです?」


「斬新なアイデアでごわすな」


「ですやろ? 若い娘が入ってきたら合法的に縛ることが出来るんですわ」


「西錠君、キミ天才やな」


 隣の三人はミックスジュースにアルコールでも入っていたのかと思うほど、シラフとは思えない会話で盛り上がっている。


「ちょっとアンタら、どうでもエエけど手が後ろに回るようなことは、よしときな」


 開斗からあらたかの事情を聴いたオーナーはタバコをふかしつつ彼らを(たしな)めた。


「笑子ちゃん。手が後ろに回るやなんて、そんなんちゃうで。スポーツみたいなもんや」


「そうでごわす。我々は新しいスポーツについて語り合っているのでごわす」


「SM言うてたやろ」


「SMやなくてSMボールでごわす」


「何が違うんや?」


「老若男女が楽しめるスポーツでごわす」


「ウソこけ。メッチャ如何(いかが)わしいわ」


「ウソやないでごわす。簡単に言えば節分みたいなもんで、豆の代わりにボールを使っているだけでごわす。もしSMボールで捕まるなら、節分はとっくの昔に禁止になっているでごわす」


「デレクターの言う通りや。節分の鬼なんて、真冬にパンツ一丁(パンイチ)で街を徘徊(はいかい)する特級の露出魔やで」


「それだけやないですわ。コート1枚羽織(はお)ればノーダメージなのに、あえて半裸で豆を受けに行くスタイルは完全なドMですわ。そんな半裸のド変態が人の家にあがり込んでなんで逮捕されんのやって話ですわ」


 島津の屁理屈にオーナーは呆れたが、クンカと西錠はそれに乗っかってトンデモ論を繰り広げた。


 どうでもいい話であったが、鉄太としては、節分とSMボールが似ている説には賛同できなかった。


 何しろ節分の鬼は逃げることが許されているのだ。


 この差は大きい。


 そして、相方の開斗は、我慢できなかったようで横から続けざまにツッコミを入れた。


「捕まらんのは身内だからや! 見ず知らずの他人がやったら捕まるわ! つか、今時(いまどき)節分で鬼のコスプレするヤツいてへんやろ!」


「まぁまぁ、霧崎どん。いるとかいないとかが論点ではないでごわす。警察からイチャモン付けられたら、節分をスポーツにしたものと言うたればエエんでごわす」


「SMボール言うとるやんけ」


「ダメでごわすか?」


「逆に何でエエと思った?」


「なら、スーパー(Super)ミラクル(Mrracle)ボールの略でSMボールってのはどうでごわす?」


「いやいや、スーパーボールのごっつい奴みたいで何のことか分からんやろ。どうせなら、節分の要素入れた方がエエんちゃうか?」


 開斗の言葉を聞いて、西錠が手を上げた。


「ほな、節分(Setsubun)(Mame)まきの頭文字っちゅうことで、SMボールならどないや?」


「西錠君、座布団やで!」


「最高でごわす!!」


 クンカと島津から拍手喝采(はくしゅかっさい)を受けた西錠は、立ち上がると後頭部に手を当ててペコペコお辞儀した。


「いや、上手いけども大喜利ちゃうねん。SMに(こだ)りすぎやろ。素直に節分ボールにでもすればええやんか」


「ダサいでごわすな」

「まったくや」

「節分ボールて」


 開斗の案は、島津が否定すると他の二人も同調した。


 チーム名の〈大咲花(おおさか)アイアンズ〉もそうだが、相方ながらネーミングセンスのなさに、鉄太は恥ずかしさを感じた。

次回、15-5話 「ブリッジし、股間でキャッチするなどと」

つづきは1月1日、日曜日の昼12時にアップします。

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[一言] S・M・ボール!!! S:外で(空の下) M:マッパな(マジで?ハンパねぇな) ボール:ボーイミーツガール。(心は)
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