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笑いの方程式 大漫才ロワイヤル  作者: くろすけ
第十三章 楽屋裁判
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13-4話 盗られた物とは何ですか?

 トイレから楽屋に戻って来た鉄太と開斗。


 しかし、鉄太は入り口をくぐるととすぐに異変に気付いた。


 なんと自分のショルダーバックの中身が散乱していたのだ。


「楽屋泥棒や!」


 鉄太の声に、楽屋にいた面々は、しらじらしく驚いて見せる。


「なんやて楽屋泥棒やと?」


「あ、ホンマや」


「誰の仕業だにゃー?」


 鉄太は室内を見渡す。


〈アリババ〉の二人と〈マウス小僧〉が壁にもたれて座っており、菓子やら弁当を食べていた。


〈ポンビキズ〉と〈マゾ西錠〉の姿は見えない。


 もちろん全員が容疑者だ。


「楽屋探偵〈シャーロック西錠〉の出番やな」


 突然の声に鉄太が振り返ると、そこには〈マゾ西錠〉が立っていのたが、


「シャーロック?」


 鉄太が聞き返す。


 すると西錠は胸を張って答えた。


「西錠を英語で言うたらシャーロックやろ。シャーロックと言えば名探偵シャーロック・ホームズやがな」


「西は英語でウエストや。シャーは中国語やろ」


 すかさず開斗がツッコんだ。


 とりあえず断わっておくが、西をシャーと読むのは日本の麻雀だけであって、中国語の発音にはない。間違って伝わったというのが通説だ。


「そんなことより現場検証や」


 西錠は楽屋に上がり込むと、ショルダーバックから散乱した鉄太らの私物を検分する。


 といっても、ただ腕組みをして覗き込んでいるだけだが。


「お前ら怪しいヤツ見たか?」


 西錠が〈アリババ〉の二人と〈マウス小僧〉に問うと、彼ら3人は西錠を指さした。


「……なるほど……密室犯罪やな……」


「ちゃうやろ」


 間髪入れずに開斗が言葉でツッコんだ。


 西錠はスルーして鉄太に尋ねた。


「立岩、(なん)か心当たりはあるか?」


「……さっきトイレで小便してたら、ポリ袋被った男が入って来て、あやうく財布盗られるとこでしたわ。ズボンに小便引っ掛けてやったらビックリして逃げてきましたけど」


「な、なんやて!」


 コントのような臭い驚き方をする西錠。


「小便引っ掛けられた時、そのポリ袋の男は何か言うてなかったか?」


「そういえば、『汚いにゃー』って言うてました」


「なんやて!? 『汚いにゃー』やと! それは重要な手がかりやで」


 西錠はわざとらしく猫馬場パクルを睨みつけた。


 しかし、財布の件について、鉄太は猫馬場を犯人だとは思っていない。


「……ところで西錠兄さん……なんでズボン履いてへんのですか?」


 鉄太が指摘したとおり、西錠はズボンを履いておらず、よれよれのYシャツの(すそ)から黄ばんだ白ブリーフが見えていた。また、トレードマークの緊縛もしていない。


「……こ……これが楽屋探偵のコスチュームや」


「逮捕だにゃーー!!」


 猫馬場パクルと有潟ガメルは、西錠を捕らえると強引に正座させた。


 するとマウス小僧が彼らの前に行き(おごそ)かに宣言する。


「これより楽屋裁判を始めます」


(なんやこの茶番は……)


 鉄太はそう思ったが、いつまでも楽屋の入り口に立っているのも疲れたので、とりあえず開斗を連れて中に入る。


 そして、開斗を座らせて、散乱した荷物も片付けようとすると、有潟ガメルから注意を受ける。


「そこ! 証拠品に触ったらアカン」


「ええやろ別に!」


 警告を無視して鉄太は、空の弁当箱やら空のペットボトルやらチケットの束など荷物をショルダーバックに入れる。


〈ウフフ座〉のケータリングから頂戴して来た菓子やら弁当が半分ぐらい無くなっているのが非常に腹立たしい。


 そんな鉄太をよそにして楽屋裁判が始まった。


 頬っかむりをした裁判官が、パンツ丸出し男に問う。


「被告人西錠笑夢男(さいじょうえむお)。あなたは窃盗の容疑が掛けられてます。間違いないですか?」


「ちゃうちゃう。ワシは盗られた物を取り返そうとしただけや」


「盗られた物とは何ですか?」


「朝戸イズルちゃんの電話番号が書かれたメモや」


 その証言を聞いて鉄太は怒る。


「何言うてんねん! アレはワテが痛い痛い思いして手に入れたもんや!」


「でもお前、楽屋に入ってきた時、テレビのヤラセでホンマはもろてないって言うてたやろ」


「いや、それは……」


 有金ガメルからの指摘に鉄太は顔を引きつらせた。


「つまり、もし、立岩がイズルちゃんの電話番号を持っていたら、西錠兄さんから盗んだ物だということだにゃー」


「立岩氏の身体検査を要求します」


 マウス小僧がそう告げると、西錠を取り押さえていた有潟ガメルと猫馬場パクルが立ち上がる。


 そして西錠も立ち上がると、鉄太の方にゆっくり振り向いた。


 身の危険を感じた鉄太は一目散に逃げようとするが遅すぎた。


 立っていた3人から座っていた鉄太が逃げられるはずもなく、あっという間に取り押さえられてしまった。


「覚悟せい!」


「大人しくするにゃー」


「いやああああ!! カイちゃん助けてえええ!!」


 鉄太が3人に取り押さえられたその時、入り口からハスキーな怒声が飛んできた。


「お前ら静かにせい! 何度言うたら分かるんや!」


 鉄太と、鉄太を押さえつけていた3人は死んだふりをした。

次回、13-5話 「ワテも携帯買うたろか」

つづきは11月27日、土曜日の昼12時にアップします。

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