表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ウソツキ

作者: L'Arc-en-Ciep




冬の公園、寒くても帰らない意固地な2つの影は、ブランコに揺られながら今日も時間を浪費していた。







「時計の長針と短針の長さの比率って5:3って決まってるらしいよ。」


「へー、そうなんだ。」

僕は小雑把な相槌を打つ。


「うそ。」

彼女はコロコロと笑った。


彼女はしょうもない嘘をついては相手の反応を楽しむ癖がある。

そしてそんな彼女の屈託のない笑顔に僕は恋をしている。


僕は彼女と幼なじみで、愛児園、小学校、中学校(彼女はほぼ不登校だった)、高校(彼女は途中で転校)、音響の専門学校、そして今の職場 有限会社ケビワバラと、ずっと生活を共にしてきている。


だから彼女のいうことはぜーんぶ嘘って分かるし、

それに対応することも慣れっこってわけだ。



「カタツムリって見えないぐらい小さい歯があるんだって。」


「へー、意外だね。」


「うそ。」

彼女はふふっと吹き出すように笑った。



20年間、いつも単調な返事しかしない僕に、いつもしょうもない嘘をついて、よく飽きないものだ。

もっと面白い反応をしてくれる人と話せばいいのに。

僕なんかといても楽しくないだろうに。





「『急がば回れ』と同じ意味のことわざで『蝶の蜜集め』ってことわざがあるんだよ。」


「へー、初めて聞いたな。」


「うそ。」







「人の首の長さってみんな一緒らしいよ。」


「それはうそだな。おまえの首の長さ、僕の3倍ぐらいあるじゃん。」


「バレたか。」







「ヤクルトを1日12本以上飲んだらだいたいの人間は死んじゃうんだって。」


「へー、気をつけないとな。」


「うそ。」




いつもの話の流れだった。

はずだった。






「僕は好きだけど、やっぱ話しかけづらい?」


いつもと何の変哲もない会話の中に投げ入れられた彼女のその言葉は、僕の中の「冷静」を強引にさらっていった。



「えっ、?今、好きって…」


「うん、好き。それが ど、どうかされました?(^_^;)」


「えっ、うそだ、うそだろ?それもまたうそなんだろ?やめろよ〜。」


そうだ、どうせうそなんだ。いつもの事だ。取り乱すことなんかないんだ。



…意志とは反して、恥ずかしさと緊張のあまり吹き出る汗と、持久走をした後のような忙しない鼓動が、僕が平常心でないことを証明するに十分すぎる証拠だった。



「ほんとだよ。」

彼女は照れくさそうにヘラッと笑う。





春はもう、すぐそこだ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ