92話・しょんぼりアリス
「イヤイヤ、僕の使う魔法なんて、微妙っすから」
勝手にモノローグに現れないで下さい。表情から考えでも読まれたんだろうか。スペードが絶妙なタイミングで魔法の話をしてきた。
「それで、三人も魔法使いが集まって何処にいくんすか?えーっとアリスちゃん君?」
ぴーちゅんとラーファの背の上に乗って移動中、喋りだしたスペードは盛大に間違えた呼び方をした。
「ボクはアリスト!」
「おー、了解っす。で、何処にいくんすか?」
「ウィンドキャニオンだよ!」
「へー、何しにいくんすか? ルード君」
ルードは間違えてない。アリスの名前を呼んだのは私だからしょうがないか。
「それは貴方には関係ないでしょう?」
「まあ、そうっすね」
スペードはきゅっと帽子を押さえて深く被り直した。
ーーー
それで、ここまで一緒にきたのだけれど。
「じゃあ、ボク達はここで!」
「スペードさん、またどこかで」
「では」
ここまでくれば安全だし、これ以上付き合う必要はないだろうと彼を置いて歩きだした私達だったが、
「いやぁー、ありがとうございましたっす。僕もここに数日泊まろうかな」
そう言って、スペードは私達の後についてくる。
「あの、何でついてくるんでしょう」
「そりゃ、あの魔法の説明をまだリサちゃんから聞いてないっす。それにせっかく仲良くなったんで一緒の宿にしたいなーっと」
なんだか、ヤバいのに絡まれてしまったかもしれない。間違った選択をしてしまったかな。でも、ぱっくんと美味しく食べられるのを黙って見てるのもねぇ。
どんどんとアリスの耳と尻尾が完全警戒モードに移行している。
「あ、そうだったっす。すいません、僕ここで、それじゃぁっすー!」
早口でそれだけ言って急にスペードが走り出した。
いったいどうしたんだろう?
「なんだか、バタバタした人だったね」
「うん」
「そうですね」
耳と尻尾が普通モードに移行したので、それを確認した私はホッと胸を撫で下ろした。
走っていく方向に視線をやると、背が低いエルフ達の中に入っていくので長くスペードの後ろ姿が見えていた。
ーーー
ログハウスが建ち並ぶ一角の大きな看板を掲げた建物に入る。
「いらっしゃーい、アリスト様。お久しぶり! あら、今日はお友達が一緒なのね」
身長が私の胸くらいしかないエルフの女性が受付をしている。
耳が尖って少し長く、背中には透明でキラキラする羽がぱたぱた揺れている。この羽で飛べるのかな?
「あっと、ごめんなさい。皆まとめて同じ部屋でもいい? いま小部屋が埋まってて」
それを聞いたアリスの耳と尻尾が全力で垂れ下がった。
「料理は奮発するから、ね?」
慌てて、エルフの女性はアリスに告げていた。




