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私は聖女じゃない?じゃあいったい、何ですか?  作者: 花月夜れん
第三章・水の精霊の国

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89話・水の国から風の国へ

「わたしからも、お願いします。一緒に歌いましょう」


 ミニウォータもルミナに願った。彼女は、アミスの顔を見ると、フルフルと顔を横に振った。


「わたし、下手だから」


 その言葉にびくりとアミスが驚いていた。そして、ルミナに謝った。


「ごめんなさい、ルミナ。まだ、引きずっていたのね。私、あの時小さなあなたに、嫉妬したの。私の取り柄の歌を奪われる気がして。それが、まだ貴女の心に突き刺さっていたのね。ごめんなさい、気がつかなくて」

「アミスお姉ちゃん」

「もう大丈夫。歌っていいのよ。貴女の歌は私よりずっとずっと上手よ」


 パァッと笑顔を取り戻したルミナは湖の方を向き、口を大きく開けて歌い出した。


「ララーラァーー」

「ララーラァーー」


 隣にミニウォータも立って一緒に歌っている。とても綺麗な澄んだ歌声と、少し低い歌声が重なって美しい旋律を奏でる。湖が歌声にあわせてキラキラと青色に光輝いていた。


「「ラララァーー――――」」


 二人のデュエットが終わると、ルミナがルードの方を向いて言った。


「大事な使命が終わったら、またこの街に来て下さいね!」


 ははは、とルードは困った顔で笑っていた。


 ーーー


 トレントが壊した街の修復で忙しいのか、来た時はのんびりしていた役所がバタバタしている。


「はい、確かに返却頂きました。また、この街に御用がございましたらこちらにお立ち寄りください」


 そう言って、真珠のブレスレットを回収したのは、あの時に王様と一緒に泳いでいたお姉さん……。


「あの、今日は金髪のお兄さんじゃないんですね」


 どうしても気になって私はお姉さんに話を恐る恐るふってみた。


「あぁ、あの人はバイトなので、たまにふらーっときてちゃらちゃらして帰っていくだけですよ。なんだか、王族と繋がりがあるらしく、クビにしたくても出来ないとかいう噂がある人です」


 なんだか、お姉さんの口調がタンタンとしていて少し怖い。あのあと、何かあったのだろうか。

 そして、繋がりというか、その人王様本人なんですけど――。

 アリスはそんなふらーっと来てる日にちょうどお世話になっていたのね……。すごい確率。


 ーーー


「では、いきましょうか」

「何で、ルードが仕切るのかな?」

「そんな事に拘ってる場合ではないでしょう」


 アリスがプリプリと怒っている。


「アリスちゃん、どぅどぅ」

「むー、ルードは置いていかない?」

「ついていきますよ?」


 あー、これはまたマタタビ棒の出番かな。私はポケットから一本引っ張りアリスの顔の前にポンと出す。

 ふにゃと蕩けるアリスが可愛い。


「しょうがないなぁ」


 マタタビ棒を私の手から受け取って、アリスはしぶしぶ承諾する。少しだけ彼の頬が赤くなっている。もしかして、マタタビで酔ってる?


「それは何ですか?」

「んー?」


 ちらりとルードを見てからアリスはニヤリと笑いながら言った。


「ヒミツー!」

「なっ!」


 あははと笑うアリス。良かった。機嫌良くなったみたい。

 そこで、私は気がついた事を後悔する事に、はたと気がついてしまった。

 もしかして、あの日最初に渡した一本目のマタタビ棒でアリスは、酔っていたんじゃないかということに――。

 酔った勢いで間違って指輪を――。

 あぁぁ、余計に怖くなってしまった。マタタビが無くなった時、私は用なしになってしまうなんてことはないよね。残りは、五本……。


「リサちゃん? どうしたの?」


 目の前で手をフリフリされる。だいぶ考え込んでしまっていたようだ。


「何でもないよ」


 私は笑って誤魔化した。


「じゃあ、行こうか。次の国は風の精霊の国ウィンドキャニオンだ!」

「風の精霊さんかー!いつもお世話になってる精霊さんだね」

「そうだね」


 ポケットの中のマタタビをぎゅっと握りながら、私は話していた。


「行くよー!」


 ピィーー


 指笛の音が響く。


 私達は次の国へと飛び立った。

 水色の光を一つ、アリスの横に追加して。

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