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私は聖女じゃない?じゃあいったい、何ですか?  作者: 花月夜れん
第三章・水の精霊の国

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81話・もう一人の王子

「あ……」


 誰だろう。男の人が一人戦っている。

 上が青色と下が緑色のグラデーションの髪がバサバサと揺れている。


「あれは、ハーフィ王子――」


 王子様? つまりクレス王子のお兄さん?

 小さな本を片手に、魔法を放っているようだ。


「水の刃?」


 アリスが驚いている。

 聞いたことがあるような気がする。水に圧力をかけたら切れるようになるんだっけ?


「降りよう」


 紫の煙が漂っていない場所に降り立ち、私達は先ほどのハーフィ王子の所へと向かった。


「加勢します!」


 アリスがハーフィ王子に告げると、彼は急にこちらに駆けてきた。


「ちびが取り込まれてる、気をつけてくれ」

「ちび?」

「あそこだ」


 そう言った彼が指差す方向を見ると、青色の髪の女の子が幹のねじれの中でぐったりとして挟まれている。

 あの子は、まさか、ルミナ?!


「彼女は――」


 ルードも気がついたようだ。


「誰か、火は使えるか?」

「私が」


 ルードが答える。私も使えるのに……。答えていいのか口に出せない。


「なら、あそこは避けてくれ」

「わかりました」

「毒の霧は水の膜をはる。あまり長くは持たないから切れたら下がってくれ」


 やっぱり、あれは毒なのね。じゃあ、あそこにいるルミナは――。


「水の精霊よ」


 大きなシャボン玉にアリス達が包まれる。


「女の子は下がってな。危ない」


 そう言って、ハーフィ王子はまた巨大なトレントの根元に向かう。


「リサちゃんはここで待ってて。危なかったら逃げるんだよ?」


 そう言って、アリスとルードも後に続いた。

 もう、バレるバレないなんて言っている場合ではない。ルミナの命がかかっているかもしれない。けれど――。

 連れ戻されてしまえば、闇の精霊に会いに行くことが出来なくなる。そう、カナちゃんの命もかかっている……。


 悩んでいると、馬が駆けてくる音が聞こえてきた。


「アミス、水の加護を!」

「はい! ウォータ!」

「兄上は何をちまちまとしているんだ。バッサリと刈ってしまえばいいものを」


 水を纏ったクレス王子が三人の所へと向かった。

 アミスも自分に水の魔法をかけて近づいてそして、悲鳴をあげた。


「なんでっ?!ルミナぁぁっ!?」


 気がつくがはやいか、彼女はすぐにルミナへと水の膜をはる。

 クレス王子も状況を飲み込んだようで、舌打ちをしている。大きな攻撃が出来なくなったようだ。

 アミスの動揺のせいか、クレス王子の動きが悪くなった。

 少しずつ、彼らの勢いよりもトレントの攻撃が(まさ)りだす。


 どうしよう、このままじゃ……。


「僕達を呼んでよ」

「アタシを呼んで?」


 私は――。


 巨大なトレントの幹から枝が何本も伸び、しなる鞭のように皆へと振り下ろされた。

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