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私は聖女じゃない?じゃあいったい、何ですか?  作者: 花月夜れん
第三章・水の精霊の国

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71話・ルミナ

 歌が聞こえる場所にたどり着くと、湖の縁に座りあまり大きくない声で歌っている少女がいた。そして、彼女の目の前をよくみると、湖の水面に小人が数人顔をだしている。あれは、水の精霊? 小さな体の下半分は魚の形をしている。

 小人達はトロンとした顔で彼女の歌を聞いていた。


「リサ様? 何かあったのですか?」


 ルードが私にかけた声で、彼女の歌は止まり、こちらに振り向いた。

 湖と同じ青色の髪の少女は水色の瞳でこちらをじっと見つめる。

 怪しまれてるのかな? 私は腕につけた真珠のブレスレットを見せた。すると、緊張していた彼女の顔が少しほぐれた。


「お姉さん達、だぁれ?」

「私はリサっていうの。旅をしててこの国にきたところなの」

「ルードと言います。リサ様の護衛です」


 ぺこりとルードは礼儀よくお辞儀する。


「わたし、ルミナ」

「ルミナちゃんて言うんだ。ごめんね、お歌の邪魔しちゃったかな?」


 ポッと顔を赤くしてから、ルミナは否定の首振りをした。

 水面の小さな子達が、もっとーもっとーと言っている。彼女の歌を聞いていたのかもしれない。この子達の邪魔もしてしまったようだ。もう一度歌ってもらわないと悪いかな?


「とっても綺麗な歌声だったよ。もう一回、歌ってくれないかな?」

「…………」


 数秒の沈黙のあと、ルミナは答えた。


「お姉ちゃんが、人前で歌っちゃ駄目だって。あなたは下手なんだからって」


 え……? あんなに上手なのに?


「わたし、お姉ちゃんみたいに歌が上手くないから……。お姉ちゃんは美人で何でも出来て、お歌も上手くて。そのお姉ちゃんが下手だって言うんだから、私は人前で歌っちゃ駄目なの」

「でも、さっき……」

「さっきは、誰もいなかったから」


 あ、そうか。精霊が見えてるのは私だけだからこの子達は見えてないのか。


「どんなに歌が上手いからと言って、お姉さんはお姉さん、君は君でしょう? そんな言葉に囚われず、歌えばいいのではないですか? 先程の歌はとても美しかったですよ」


 ルードが、彼女に声をかけた。その表情はどこか違う人を思って言葉を紡いでいるようだ。

 小さなルミナの両頬がぽうと赤みを増す。


「上手だった?」

「うん、とっても上手だったよ!」


 そう私が言うと、とても嬉しそうにルミナは笑った。その笑顔はとても可愛かった。


「じゃあ、もうい――」

「ルミナーー!」


 男の人の声が響く。家族の人のお迎えかな?

 ビクリとしたあと、声の向きに視線を向けたルミナは、言いかけた言葉を飲み込んだ。


「わたし、行かなきゃ。 バイバイ、ルードお兄さん。リサお姉さん」


 小さく手を振り、ルミナは街へと歩きだした。

 彼女が見えなくなる頃、小さな観客達も水面から姿を消していた。


「優しいですね、ルードさん」

「楽しい、嬉しいだけではありませんからね、優秀な兄弟がいるということは……」


 誰のことを言っているんだろう? 少しだけ目蓋を伏せて、ルードはそれ以上喋らなくなった。

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