65話・ぺっとり
「すごいね!」
「暑いー」
あちこちで篝火が燃えている。沢山の赤い炎が揺らめき、街を彩り飾っている。雨乞いを兼ねたお祭りが街で始まったのだ。
「炎だから暑いのはしょうがないよ」
「リサちゃんあついよー」
ぺっとりとアリスがくっついてくる。くっつくと余計に暑いと思うんだけど。というか、くっついてるところが熱をもってこっちも暑いです……。二つの意味で。
「おーい、アリスト。お熱いところを邪魔して悪いが、もうすぐはじまるぞ! こっちにきてくれ」
「はーい、いこうリサちゃん」
「うん」
手を繋ぎ、広場中央へと向かう。
あれから、予想通り私達は王様に呼ばれ、筋肉ムキムキを見ながら勧誘を躱し、残念がる彼の頼みでお祭りのお手伝いを請け負った。水の魔法を使うお手伝いだ。
ルードが近くについてきているので、私が魔法を使ってるのがバレないようにアリスが私を隠すという名目でぺっとりとくっついている。暑い。
「出来るだけ小声で、ボクの声に合わせてね」
「はい!」
緊張する。ちゃんと出来るかな。
「それじゃあ、はじめるぞー!!」
ドレン達が集まって、火の精霊に願い炎を起こす。
「火の精霊よ!」
小さな炎が幾つも幾つも空へと打ち上がっていく。
「キレイ……」
ふと、気がついた。瑠璃色の髪のあの大きな鬼さんが皆の後ろで一緒に立っていた。
こっちを見てる……?
「リサちゃん、いくよー!」
アリスの声とともにやるべきことを思いだし、水の精霊さんに急いで命令を伝える。名前を呼ぶ声は小声でね。
あ、えっとこの広場に少しだけ雨を降らせて!
「水の精霊よ!」
「ウォーター」
パラパラパラ
体に感じるか感じないか位の雨が広場へと降り注ぐ。
静かだったまわりから、わーっと、歓声があがった。少し離れた場所で見ていたルードは驚きの表情をしていた。
アリスが魔法を使ったんですよ、ワタシジャナイデスヨー。
そう見えてくれたことを祈りつつ私達はこの幻想的なお祭りが終わるのを眺めていた。
ーーー
あぁ、またきましたよ。この岩のベッド。夜はぴーちゅんが飛べないので、今日もお世話になります。
まあ、またアリスちゃんはさっさと寝ちゃうんだろうなー。私も何も考えず、さっさと寝なきゃ!
そう思っていたら、アリスがベッドに座ってちょいちょいと手招きしている。
えっと? ナンデスカ?
アリスの横に行きベッドの端に腰かける。
「なに……?」
「お疲れ様」
頭をポンポンと撫でられる。
「あ、うん。ありがとう」
私を見つめる青い眼が優しくて、熱っぽくて顔の温度が急上昇する。
「――それじゃ、おやすみ!」
「おやすみなさい……」
すっと、手が離れてアリスはベッドにもぐり込み、またくぅくぅと寝てしまった。
あぅあぅあぅ……。この、熱を持った頭をどうすれば!
何も考えないで寝ようと思っていた私はまた、悶えながら背中合わせで眠りにつく努力をすることになってしまった……。




