06話・ぎゅーっとドンッ!
「ふぅ、危なかった」
アリスに手を引かれて、私はどこかの部屋に連れてこられた。
ここはいったいどこですか?
「あの、ア、アリスト……さん?」
アリスの耳がピンッと立ち、手をグイッと引かれ、顔が近づいてくる。
「アリスちゃんでいいよー?」
ニコニコしながら、圧をかけてくる。お、怒ってる? だんだん近づいてくる綺麗な顔にドキドキして、顔が赤くなる。
「アリスちゃん!」
よしっと言って、にこりとし、手と顔が離れた。ほっとしたのも束の間、目の前が急に真っ暗になった。これは、まさかのハグ?!
ぎゅっと、抱き締められて心臓が破裂しそうなほどドキドキしている。なんで私は抱き締められてるんだろう?!
「やっぱりいい匂いだねー」
あ、マタタビですか? そういえば、なんとなくおきっぱなしもなーって思って身につけてた。どこにとは言えないけど……。
「あのアリスちゃん! 聞きたいことが――」
なんとか拘束から抜け出して、確かめたいことを聞くことにした。少し残念そうな顔と垂れた耳が可愛かったがまずは確かめなくちゃ。
「まず、ここはどこ?」
「ボクの部屋」
おーのー。初男性の部屋。じゃなくて! 城の中にこんなお部屋があって、先程の王様やカトル王子に対する態度から推察するに、もしかして、
「えっと、アリスちゃんは王子様?」
「そうだよ? 第二王子だけどねー」
おーのー。綺麗なお姉さんどころか王子様。あれ、しかも年下だったりしますか? じゃなくって!
「さっきの、危なかったって? どういうことですか?」
アリスが指輪を指差す。これが何なんだろう?
「陛下の言う力を貸してくれ。忠誠を誓ってくれっていうのはね、この国と契約してくれってこと。ボクと先に契約してるから出来ないけどねー。国と契約しちゃうとさ、この国に縛られちゃうんだ」
「えっ」
「リサちゃんは元の世界に帰りたいんだよね? でも、国と契約してしまうとたとえ帰る方法が見つかっても帰ることが出来なくなっちゃうよね?」
「あ、そっか」
帰る可能性を消滅させるところだったのか。それはたしかに危なかった。
「だから国と契約しちゃ駄目だよ。ボクのは個人契約だから外せないことはないけど国の方は結んじゃうと外せなくなる」
その話、聖女の子はしっかり説明してもらったのかしら? 聞いて納得してるなら別にいいのだけど――。だけどもし、聞いてなかったら……? ぶるっと身震いする。
「ボクと契約しておけば、国と契約は結べないし、ボクの専属ってことで城の中で探し物ができる。ボクは第二王子だから、父上兄上より自由がきく、顔もきく。探し物するなら便利でしょ!」
「なるほど」
たしかに、とても助かる。でも、アリスにメリットはあるの? さっきも王様やカトル王子に怒られそうだったような。
「マタタビのお礼にしては、助けてもらいすぎなような?」
「んー、その契約っていうのはね、花嫁になるっていうことだよ。だから、ボクの花嫁さんだから何でも手伝うよ!」
どーーーーん。
ニコニコと笑いながら爆弾を落としてきた。は、花嫁?!
私、結婚しちゃったの?! しかも超美人な王子様と!?