42話・カナの思い
ここは?!
先ほどの小さな光が幾百幾千と部屋に集まり煌めいている。
それに、地下なのに、花が咲き誇っていて神秘的な美しさに目を奪われる。
「きれい……」
思わず口にでた。
「誰?!」
部屋の真ん中にカナちゃんが座り込んでいた。顔をあげキョロキョロしているが、私の姿は見えないようだった。
「カナちゃん」
「その声は、リサさん?」
「うん、そうだよ」
彼女に私の姿は見えないかもしれないけれど出来るだけ近くに行ってあげようと思い、隣に座った。白い光が足元からも発せられている。
「リサさん、夢なんかじゃないですよね。本当にいるんですよね」
「いるよ。ごめんね、すぐに会いに行けなくて」
「いいです。もう。私、帰れないって……」
彼女のスマホだろう、それをぎゅっと握りしめている。
胸が痛む。順番が違っていたら私がカナちゃんの立場だったかもしれない。私はきっと、すごくアリスに救ってもらっている。
「彼氏がいたんです。私。彼に会いたくて、帰りたいのに。もう、帰れないって……」
うっうっと、小さな嗚咽がもれる。
「お父さん、お母さん、お兄ちゃんにも、もう……」
ポロポロこぼれ落ちる涙がカナちゃんのドレスを濡らしていく。
私は自分の浅い考えを恥じて、何も言えなくなった。
カトル王子からのプロポーズで焦った? 全然違うじゃない。
カナちゃんにはもう大事な人がいて、それなのにこの国に縛られて帰れなくて……
「だから決めたんです。私!」
急に立ち上がり、カナちゃんは言った。
「ここで生きていきます。もうそれしかないから。リサさんと違って……」
少しの沈黙が流れて、カナちゃんはスマホを再度ぎゅっと握りしめた。
「だから、さようなら、リサさん。もう二度と会わないで下さい。……嘘つき」
「まって!」
私の声は彼女に届かなかったのか、扉へと行ってしまった。
バタン
私は扉の閉まる音を聞きながら固まって動けなくなってしまった。
彼女はどこまで知っているんだろう。私は何て言えば良かったんだろう。
「リサ」
ライトがフッと現れて横に立った。
「カナについて伝えたいことがある」
伝えたいこと?
「カナの中に、魔獣の卵が産み付けられた」
?!
「何それ?!」
「昨日の魔物から出てきた蛇を見たか? あれが魔獣だ。精霊と同じでリサ以外の人間には見ることができない。魔物の精神体とでも言うべきか」
「精神体?」
「今のリサみたいなものだ」
手を伸ばし髪に触れようとしたので、私は少し移動した。
きゅっと手を握り、ライトは続ける。
「予言の魔物はまだ生きている」
え?!




