02話・用なしですか? 洋ナシですか?
今聞いたことを自分の中で何度も何度も反芻するが、つまりここは私の知らない世界?
「この国は光の精霊が加護する国。ライトコール。君はこの国の聖女召喚の儀式魔法用魔法陣である、ここに現れた」
召喚、魔法? ゲームや小説で出てくる単語だなーと考えつつ聞いてみた。
「私はここに喚ばれたってことでしょうか?」
「いや……」
口に指を当て少し考えるような素振りをされた。
え、違うの? じゃあ、なんでここに?
「すでに聖女は召喚されている」
「んっ?!」
「一週間前に儀式を行い、君のような黒髪の女性が召喚されている。その時に使った魔法陣なのだが。何故、また発動したのか」
え、じゃあ私は洋ナシじゃない、用なしじゃないですか。
「私、帰って大丈夫ですか?」
「それはできない」
きっぱり言われてしまった。え、帰れないの? もう誰かいらっしゃるなら、私いらないですよね?
「ここから現れたということは君も聖女かもしれない。すまないが確かめるまではここにいてもらいたい」
「はぁ、まあ。聖女じゃなかったら帰れるんですよね?」
「……、わからない」
カトル王子は難しい顔をしていた。
「え……」
「召喚された聖女がもとの世界に帰ったという話は聞いたことがないんだ」
がーん、と古典的な感じの石が落ちてきた気がした。帰れないのであればここで暮らすしかない? え、でも洋ナシだったら私どうなるの? おうちにかえらせてー!
頭のなかでぐるぐると考え込んでいると、廊下を走ってくるフードを目深に被った黒いローブの人が見えた。
「殿下、遅くなってすみません!」
黒いローブの人が、カトル王子に頭を下げこちらに近づいてきた。
「よい。君が聖女かどうか確認するための道具だ」
そう言うと、目の前に二つの水晶球が並べられた。ちょうど手のひら位の大きさの、乳白色の水晶と黒色の水晶だ。
「この二つに手をのせてくれるか?」
「……はい」
私は、まだぐるぐる考えつつ手をぺとりと上にのせた。
すると、両方の水晶がふわっと光り、見たことがない文字が浮かびあがった。
その文字を目で読んだ王子も黒いローブの人も、うーん……という顔を浮かべている。
その反応はいったいどういうことなんだろう。はっきり言って望み薄? やっぱり洋ナシ? はやく教えて下さい! でも、やっぱり聞くのはちょっと怖いなぁ。
あ、あのう、いったいどうなんでしょうか……。