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Q、異世界母体なし転生で最初にすることといえば? A、拠点を探すor拠点を作る

 廃墟を出て森の中を2人で歩いてたときのことだ。


「家を建てるってどゆこと?」


 事の始まりは暦の住居どうする宣言だ。

 確かに野宿するのは嫌だ。

 なので暦が住んでいる家はどうなのかと聞いたところ、


「広いんだけど立地最悪だしそもそも今のお姉が生きてける環境ではない」


 と言われてしまった。

 なので言われたのが家を建てようだ。

 しかし家を建てるまで飛ぶことはないだろ。

 私は女子高校生だったんだぞ。

 建築経験なんてゲームでしかないわ。それも立方体で構成された世界での。


「そのまんま家を建てるってこと。今回の場合は素材集めからだけどね」


「いやごめん。無理無理無理」


「?できるよ」


「今の私幼女だよ!?絶対役に立たないし無理だって!」


「安心してお姉。私が建てるよ」


「は?」


「私何年生きてると思ってるの?そのくらい建てれるって」


 怖い怖い怖い。

 暦を信頼してないわけじゃない。

 確かに生前はそこそこなんでもできてたけど建築なんかに携わったなんて話聞いたことないよ。


「ねえ暦、建築家とかに頼も。それがいいって」


「それは無理」


「何で!?」


「今いる場所はね『天帝の社』っていう山の麓なんだ」


 なんですかその危なそうな名前は。

 天帝とか絶対やばいやつなのでは。


「で人間たちは山にすっごく長生きなドラゴンが住んでるって思ってるから麓のここにも来ないんだよ。来るとしたら怪物狩り(モンスタースレイヤー)ぐらいだよ。ちなみにお姉にわかりやすく説明するならライトノベルとかの冒険者みたいなもん」


「そ、そんな……」


「それにここに来ようとする物好きな建築家を見つけたとしても無理だよ」


「なんで?」


「人間からしたらドラゴンは神様とか化け物で、吸血鬼は人類の敵対者って思われてるから」


「な、なるほど」


「ということで家は私たちだけで建てないといけないってわけ。あと安心してね、私がいる限りお姉を害する奴らは塵すら残さないから」


 暦、恐ろしい子。

 生前はこんなに交戦的じゃなかったのに、私といない間に何があったんだ。


 それにしても人類の敵対者って。

 先任の吸血鬼の方々は一体どんなことをしたのだか。


「そういえば話は変わるんだけどこの世界ってモンスターとかいるの?」


「知ってる限り種類は少ないけどいるっちゃっいるね」


「へぇ、例えばどんなの?」


「んとね、あんなの」


「GRYA!GRYA!GRYA!」


「GROOOOO!」


 暦は指を向けるとそこにはいくつもの小さな影が出てきた。

 その影の持ち主たちは小学生低学年ぐらいの身長に緑色の肌。服は殆ど着てなく唯一着ている腰蓑もボロボロの状態。手に持っている物棍棒や剣も共通してボロボロだ。

 しかしその黄土色の眼からは汚らしい欲望の輝きを放っている。その一部分だけははっきりとした何かを感じる。


「な、に、アレ?」


「アレはゴブリン。簡単に言えば自己中と性欲の塊」


「それは、簡単に言い過ぎなんじゃ――」


「GRYAAAAAAAAAAAAA!」


 ゴブリンの叫び声が聞こえた途端ゴブリンが騒ぎ始めた。何を意味する言葉なのかはわからないがキモチワルイ。



 ――ヒュッ!


 バチッ!!



「そうかそうかお姉を狙うのか。確かにどう考えてもお姉は戦闘では戦力外、真っ先に狙うのは当たり前だ。――けどね、お姉を殺そうとする奴らなんて生きてる価値はないよ」


 急に変な音が聞こえたと思ったら暦がキレていた。

 私が殺されそうだとか言っていた意味がわからなかったがその意味は周りを見渡せばすぐに分かった。

 目の前に錆び付いてまともに使えそうにない剣が落ちていた。

 先程までなかったのに今はある。ということはゴブリンが投擲してきた剣をなんらかの方法で暦が塞いでくれたってことかな。


「何があったかよくわかってはないんだけど暦がなんかしてくれたんでしょ。ありがとう」


「…………あっお姉よかった。傷は、いや汚れ付けられてない?もしあいつらの吸った空気がお姉についてたらあいつらとその巣を焦土にしてやるから」


「え?え?焦土ってやりすぎじゃない?」


「全然やりすぎじゃない」


「そ、そう。私は大丈夫だよ――って暦!後ろ後ろ!」


「んっ、大丈夫大丈夫」


 話している間に今度は暦に向かって剣が投げられてきたが、暦はそれを尻尾で打ち落とした。

 というか打ち付けた瞬間に剣が粉々になった。

 ゴブリンたちはその光景を見たせいかこちらに対し手を出してはこない。


「にしてもお姉と私の会話の邪魔をするなんて――生かしておけないな〜」


「ちょっ大丈夫なの!?剣粉々になったんだけど!というかあいつらどうするの!?」


「殲滅してくる、とっさの前に――」


「その前に?」


「『 防性( インヴァィアラァ)結界(ブル・サンクチュアリ)』」


「へ?」


 暦が何か言った途端私の周りに薄い光の幕が出てきた。

 最初から中にいるから言い回しがおかしい気がするが、中にいると暖かく感じる。


「今お姉の周りに私に何かない限り絶対壊されない結界を張ったんだけど、私が帰ってくるまでそこから出ないでね」


 そう言うと暦はゴブリンの群れに飛びかかりゴブリンたちはすぐさま逃げ出した。

 ちょっと待て、今帰ってくるまでって言った?


「ちょっと暦ぃぃ。置いてかないでよ〜!」


 私の弱々しい叫び声は誰に聞かれることもなく霧散していった。



 *



(何故だ、何故俺は腹身袋から逃げているんだ)

 ゴブリンたちのリーダー格であったリーダー格は暦がリーダー格らのみに放った威圧を感じると一目散に逃げ出していた。

 他のゴブリンたちが置いてかれていったがリーダー格は別に気にしない。それに関してはリーダー格らが悪いのだからという他人事な思考のもとに霧散しているからだ。

(クソクソクソクソなんなんだあいつは。上等な腹身袋のを見つけたと思ったらなんであんなのがこんなところにいるんだよ!)


「みぃ〜つけたッ」


「―――――――――ッ」


 何かがリーダー格に飛んできた。

 ギリギリまで気づかなかったリーダー格は片腕をその何かに持っていかれた。

 その何かは腕の先にある木の幹に当たると止まり、その正体が見えた。

 緑の球―正確には緑の肉の塊だ。

 リーダー格は即座に理解した。

 これは―――


 ――ヒュッ!


 グチャッ。


 思考する時も与えずに塊は飛んでくる。

 今度は反応できたが足を片方持ってかれた。


「GROOOOO!?」


 リーダー格は困惑する。混乱する。

 緑の肉の塊、すなわち使えないグズ達(ゴブリン)の死体を丸めて固められたものが恐ろしい早さで飛んでくる。

 だからリーダー格は使えないグズ達(ゴブリン)にすら隠していたことを使いこの場をどうにかすると考えた。


「ゴブリン、種目モンスター、子供と同程度の身長と緑色の体―そして黄土色の目、自己中心的で性欲の塊」


 実に機械的な声とともに腹身袋予定の片割れ()が出てきた。


「ってのが一般的なはずなんだけどあなたはだいぶ大きいのね。珍しく」


「……オデ、メズラ、シイ?」


 リーダー格が隠していたこと。それは人間が使う言語を少しだけだが扱えることだ。

 他のゴブリンと違って体格が大きいリーダー格は脳の出来も少し違った。少しばかり学習ができ頭の回転も早いのだ。

 ただリーダー格が人間の言葉を覚えようとしたのは実にゴブリン的なものだ。

『腹身袋ので遊ぶ時に何を言っているのか理解したらさらに楽しいのでは?』と言ったものだ。

 結局のところいくら普通のゴブリンと出来が違っても所詮ゴブリンはゴブリンなのだ。


「オデ、シッテル。ニンゲン、メズラシイモノ、スキ。ダガラ、オデ、ニガシテ、クレル?」


「訂正させてもらうけど私人間じゃないよ」


「!?モウシ、ワケ、ナイ。アナタ、ニンゲン、チガウ」


 ゴブリンは暦の地雷を踏んだかと思った。

 リーダー格が幾度か捕まえたことがある腹身袋の中に耳の尖っているもののことを思い出していた。

 言葉を覚えた後に捕まえた時にその腹身袋が

『この!離せ!このゴブリンが!私は森人(ローエルフ)なのよ!」などと言っていたのでリーダー格は『ロー、エルフ?チガウ。オマエ、腹身袋。ローエル、フ、チガウ」と言ってやったら腹身袋が狂ったように叫び散らし暴れ出したのでリーダー格は他の奴らも呼んで遊んで、遊び終わったら静かになった。リーダー格はそこで人間ではない者が人間と呼ばれることを嫌うことを学んだ。ちなみに腹身袋を片言でなく言えるのは多くの腹身袋がそのようなことを言っていたので復唱していたらはっきり言えるようになった。


「大体思ってることは分かるよ。人間といっしょにしたから気を悪くさせてしまったのでは、的なことを思ってるんでしょ」


「………」


「確かにあんなのといっしょにされるのは心底嫌だけど、人間に近い姿をしてる私が今回は悪い」


「ソレ、ジャ、ア」


「うん。()()()()()()()謝らなくていい」


「アリガ、トウ、ゴザ、イ、マズ」


「私が誤って欲しいのは――オマエみたいなやつにこの言葉を出すの心底嫌なんだけど、お姉に剣を投げるよう言ったのオマエだよね」


 リーダー格は悟った。

 地雷はすでに踏んで、いや踏み抜いて爆発していることを。


「モウシ、ワケ、ナイ。オデガ、ワル、イ――ワル、カッタ。モウ、ニドト、ジマ、ゼン。ダガラ、ニガジデ、グレ、マセン、カ?」


「うんうん。よく謝れました。謝れたのならすっっっっっっっっごく嫌なんだけど、特別に許してあげましょう」


「アリガ、トウ、ゴザ、イ、マス。ニドト、コノ、ヨウ、ナ、コトハ、イタシマ、セン」


 嘘である。

 リーダー格は微塵もそんなことは思ってもない。

 むしろ『後ろ向いたら動かないようにして遊んでやる』とでも思ってるのだろう。


「とでもいうと思ってたのか」


「GRYAAaaaAaa!?」


 リーダー格がそんなことを思っている間に顔半分がなくなっていた。

 暦から放たれた見えざる何かがリーダー格の頭を削り取るかのように消滅させたのだ。

 人間でもゴブリンでも頭を半分も失ったら普通は死ぬ。けれどリーダー格はそれでも何故か(まだ)生きていた。


「お姉にオマエらの汚れを付けようとするどころか、傷つけようとするなんて死罪以上にあたる」


 暴論である。

 遥にとってもそうだが、暦にとっては遥が最も大切である。

 いわば宝物。

 それに傷を付けようとした者を暦は許さない。

 しかしそれは暦の中にあるだけでリーダー格には理解もできないものである。


「そもそも」


「GGYA!」


「オマエ達みたいな奴らがさ」


「GRUGYA!」


「お姉に近づくこと自体ダメなんだよ」


「――――――――」


 暦は数多の見えざるものをリーダー格に向かって放ち、何も残ってなかった。


「そうそう聞こえないだろうけど、お前に使った魔術の名前『攻性(インビジブル・)結界(サンクチュアリ)』って言うんだ。別に覚えなくていいよ」

この世界のゴブリンに対する好感度


男タイプ1、村に来た時追い返したことがある

男タイプ2、死ね!死んじまえ!

男の怪物狩り、小遣い稼ぎ

女、生きる価値なし、滅亡しろ

女の怪物狩り、小遣いになるけど滅亡しろ

遥、「なんかキモい」

暦、「いろいろとキモいけど、今はお姉に手を出さない限りどうでもいい」


2020年4月28日に暦の魔術名をルビ付けしました

2020年4月29日に魔術名の表記を変更しました。。

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