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閑話2 侍女は畏怖する

感想の方でご指摘頂き有難うございます。助かりました!

これからは間違いを無くせる様に努力させて頂きます。ですが、恥ずかしながら、まだまだ至らない点や知らない事も沢山あると思います。その際は、ご指摘頂けると幸いです。無知で申し訳ないです…!!




「くぅぅん」


 何かの鳴き声が耳に届き我に返る。

 深く考え込んでいる内にいつの間にかお嬢様と私は庭園の奥部にまで来ていた。


 庭園は森と繋がっており奥部は森にとても近い場所であった。


 まずい。


 引き戻す様にお嬢様に声をかけようとして、


「くぅぅ」


 遮られた。


 お嬢様は鳴き声の方へと歩みだした。

 慌ててお嬢様の進路を塞ぐ。


「お嬢様、何が居るやも分かりません。

 ここは私が見て参りますので、ここで暫しお待ちを」

「…分かったわ」


 お嬢様が諾了したのを確認し、私は鳴き声の聞こえた方へと進み出した。


 この辺りでお嬢様を一人置いて行くのは些か不安ではあったが、後方にはまだ何人か使用人達がお嬢様を見守っている様なので大丈夫だろう。プライレス公爵家に仕える使用人は皆一流で、護衛の為にそれなりに武術は体得している。


 歩みを進めると、直ぐに鳴き声の主に辿り着いた。

 鳴き声の主は深手を負った仔犬だった。


 仔犬は倒れ込んでおり、微かに呼吸を繰り返している。

 きっと、野良の仔犬が傷を負ったまま森から降りてきたのだろう。可哀想だが、仔犬は目に見えて重体だった。


 これはもう、助けられそうにないよね…。


 私は、仔犬の前に屈み込んだ。


「ごめんね」


 私には貴方を助けられるだけの力はないの。


 仔犬は瞳だけを此方に向けた。

 その瞳は自分が死ぬ事を悟っている様だった。


 せめて、仔犬を見届けてあげようとその場に屈み込んだままでいると、ふいに直ぐ横から何かが顔を覗かせた。


「!?

 お、お嬢様!」


 近い!……可愛い!!


 突然、至近距離に現れたお嬢様に思わず身悶えしてしまったが、我に返り、もう一度仔犬に目を向けた。

 小さな仔犬の体は深く傷付いている。他の獣に傷付けられたのだろうと直ぐに分かる掻き傷があった。


「この子はもう長くないと思います」


 まだ幼いお嬢様には酷な場面ではないだろうかと、躊躇いつつも現状を伝える。


「そうかしら?」


 お嬢様は飄々と答えた。

 お嬢様のその発言に思わず目を瞠ってしまう。


 そんな私を置き去りにお嬢様は仔犬の前で屈んだ。

 そして、仔犬の傷口に手を翳す。


 お嬢様が一体何をしようとしているのか、理解が追いつかない。


 すると、突然お嬢様の手元が蒼白の光に包まれる。その光は瀕死の仔犬を優しく包み込み、収縮して間もなく消えた。



「わんっ!!」


 あれ程までに弱り今まさに絶命しようとしていた仔犬は溌剌と鳴き声を上げた。



 ……治癒魔法。



 どんなに深い傷も元通りに完治させ、術者によっては病すらも治すことの出来る魔法。

 耳にした事ぐらいはある。

 だけど、自分とは程遠い物だった。

 それ程に、治癒魔法というものはとても上級の魔法なのだ。


 ……お嬢様、貴方は一体…。


 私は只、呆然とお嬢様を見つめた。

 この幼児はその小さな身体に一体どれだけの能力を、可能性を隠し持っているのか。


 思わず鳥肌がたった。


 貴方は、本当に恐ろしい御方です。



「……な、な、なんて、なんて可愛いいの!!」


 唐突に、お嬢様の浮ついた声が辺りに響き渡った。


 お嬢様は、顔を綻ばせ蕩けるような笑みを浮かべ、仔犬と戯れていた。


 …………。


 …可愛い。


 お嬢様だって可愛いですっ!!!!!!!


 思わず叫びそうになり、何とか留めた。


 後方で、一部始終を見ていた使用人達も皆、終始ハンナと同じリアクションをしていたのだった。



 _______________



 深夜。使用人寮。



 使用人A

「今日お嬢様がやばかったの」

 使用人B

「?そんなの当たり前じゃない」

 使用人A

「いや、ちがうの。

 今日もいつもの様に頃合を見計らってお嬢様を見に行ったのだけど、お嬢様、今日は珍しくハンナと庭園を散歩中でしたわ」

 使用人B

「何ですって!ハンナずるい!!」

 使用人A

「わかる。

 ……じゃなくて、そしてね、お嬢様がハンナに話し掛けたの。花の鑑賞も良いとかそう言う事を言う為だけに。あの、お嬢様が」

 使用人B

「ハンナ……(殺意)」

 使用人A

「わかる(殺意)。

 ……って、そうじゃなくって!それから、お嬢様が不敵に小悪魔の様に笑ったりしたの。ニヤリって!!」

 使用人B

「あああっ!なにそれっ見たい」

 使用人A

「最高だったのよ…。

 ……それとね。お嬢様が今日庭園に迷い込んだ重体の仔犬を治癒魔法で治したの」

 使用人B

「治癒魔法って…え!?

 ……やっぱりお嬢様は天使なのねっ!!!?」

 使用人A

「きっとそうなのよっ!!

 コホンッ…………後ね、それからね、お嬢様。その仔犬と戯れてデレデレの笑みを浮かばてたの。仔犬が可愛いって思わず叫んでいたわ。誰かが近くにいたにも関わず」

 使用人B

「お嬢様が可愛い。私も見たかった…」

 使用人A

「お嬢様可愛い」


 使用人A・B

「……ハンナ許さん」




 ハンナ

「何だかさっきから寒気とくしゃみが止まらな…くっしゅんっ!


 ……風邪引いたのかな」

閲覧有難うございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] 何これ可愛い!!! なんかもうすごい理想の作品ですっ!! ありがとうございます!!!!ご馳走様ですっっっっっ!!
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