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1話 悪役令嬢は絶望する

小説を書くのは初めてなので、至らない点等沢山あると思いますが、最後まで読んでいただけると有難いです!

「アイリス・プライレス。

 君との婚約を破棄させてもらう」



「へ…ぇ?」



  アイリス・プライレスと呼ばれた女性は普段とまるでらしくもない間抜けな声を漏らした。

  アイリスはその瞳を見開き、ただ呆然とその場に立ち尽くしていた。


  訳が分からなかったのだ。


  突然王宮へ呼ばれたアイリスは半ば押し込まれる形で王宮の客間に入った。

  そこにはこの国の第二王子であり婚約者のアーサー・ネフロンドとその隣には子爵家の養娘ルーシー・バラードが並び立っていた。

  そして、唐突に婚約破棄宣言を投げつけられたのである。


  アーサーは普段浮かべる微笑みを消し去り、冷めた眼差しでアイリスを見据えていた。


  アイリスは様々な感情が混ざり合いひしめきあってショート寸前の脳をなんとか動かし、表情が崩れてしまはないように表情筋に力を込める。


「それは、陛下の認可を得ての言葉でございますか。

 もしそうでないのならば、その話をわたくしだけでお答えすることは「勿論認可済みだ」」


  ペラリ


「…ッ!?」


  アイリスの言葉を遮ったアーサーはこの国の王、ネフロンド国王陛下の印が押された書類を一枚アイリスの目の前に掲げた。

  そこにはアイリスとアーサーの婚約破棄を認めるといった内容が書き綴られていた。

  今度こそアイリスは思考を停止した。


  もう少しで、あとほんの一年程でアイリスは愛するアーサーの妻になれた。アーサーの役に立つ為に、お支えする為に、その為に血反吐を吐くような苦痛な日々も耐え、乗り越えてきた。


  アイリスは分からなかった。


  動かない思考の中、ただアーサーの冷えた瞳が視界をいっぱいいっぱいに埋める。その瞳を向けられるだけで心がキシキシと悲鳴をあげる。


  なぜ、なぜ、なぜ…


「なぜ、どうして、どうしてそのような目でわたくしを見るのですか。

 いつものように笑って見せてくださいませ。

 貴方は唯一わたくしに笑いかけてくれる方なのです。愛を、……与えてくれた方なのです」


  アイリスの心の叫びはそのまま口を通り抜けて音となり言葉を紡ぐ。


「わたくしは貴方が愛してくれなければ…貴方がいなければ…、一体これから…」


  どうすれば…どう生きていけと、言うのでしょうか?


  アイリスはその端整な顔をくしゃりと歪めている。その歪む顔すら美しいアイリスにアーサーは冷めた瞳をそのままに言い放つ。


「君を愛した事などこれまで一度たりともありはしない。そして、これからだってない」


  その言葉はアイリスのこれまで歩んできた人生をそしてアイリス自身の存在意義を容易く否定した。

  アイリスの心を壊すには十分すぎる言葉だった。


  何かが崩れてていく。それが何なのかアイリスは理解できない。ただ、胸のあたりからじわじわと温度が消えていく感覚がアイリスを襲う。

  物心が着いた頃からこの瞬間までどんなに辛くても流した事などなかった涙がアイリスの頬を伝い落ちた。


  ぐらり


  視界が歪んでいく中でアイリスは思った。



  ああ、なんて馬鹿らしい。



  それは、誰かに愛されていると勘違いしていた自分に対してなのか、これまでの努力が無駄になる事に対してなのか、自身をこんなにも歪めた冷めた家庭に対してなのか、それとも、誰にも必要とされず生き続けることに対してなのか…。

  いや、きっとその全てが馬鹿らしく思えたのだ。


  世界が傾く。直後に強い衝撃がアイリスの体を襲う。

  鈍痛を受けた体を無視してアイリスはそのまま意識を手放した。

最後まで閲覧有難うございます!

これからも読んで頂けると幸いです。

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