8 カイゼルとの約束
柄池からの提案を話して、しばらくした。
愛川はカイゼルを連れてきて、声をかけた。
「カイゼルさんを連れてきたよ!」
「愛川さん、ありがとう。カイゼルさんもご助力感謝します」
愛川の声に柄池は礼を言う。
礼を受けたカイゼルから声がする。
「やはり、このデュラハンがライオロスでしたか」
愛川に引っ張られながら、カイゼルはやはりと話す。
見当はついていたという口ぶり。
「はい。デュラハンの正体、ライオロスさんのためなら、どういう事情でもここに来てくれると思いまして」
柄池はカイゼルの確認に肯定した。
デュラハンの本名は事前に教えてくれて、こうしてカイゼルにも話が出来た。
「しかし、なぜライオロスはこんなことになってしまったのだ? あの時は不可解な死だったと大きく騒がれたものだぞ。あのライオロスが、と」
「まあそれはライオロスさんのミスだと言ってましたので、それよりも今は解放のご助力を」
「おお、そうでしたな」
柄池の説得に対して、カイゼルは理解を話す。
この場でライオロスの死因に触れるのは色々な方向性で悪い。
怨霊への悪化も、場の雰囲気を壊すという意味でも。
「さ、二人は下がっていて。これから戦うから」
「はーい」
柄池の指示に、愛川と石垣はこの場を離れる。
柄池自身が離れなかったことから、カイゼルから声が出た。
「救済者様、あなたも離れた方がいいのでは?」
「いや、俺もこの戦闘を頼まれているからね」
「それは一体?」
「こういうことさ」
カイゼルの疑問に柄池は答えた、これからこうすると。
すると、ライオロスの鎧は糸が切れたように落ちる。
鎧が落ちたところから淡い光が現れ、その光は柄池の頭上へと跳ねるよう移る。
「まさか……」
カイゼルが一言呟く。
その光は柄池を纏ってから消えていく。
「俺の体を使って勝負したいという訳だ、カイゼルさん」
ライオロスが入っていると説明を柄池はしながら、落ちた剣の元へ向かう。
そして、柄池は剣を拾うと、別の腕で手を真横に投げて、手をスナップさせる。
カイゼルとの勝負を柄池の体を用いて行えば、怨霊としての束縛はなくなるはず。
それが柄池の考えた解決策だ。
自身の体を使うのは、怨霊としての暴走を防ぎ、抑えるためのフォロー役もになっている。
「おお、確かにライオロスだ。戦闘前にその癖をよくする……私も覚えているぞ」
カイゼルは驚きを言葉にしていた。
柄池もライオロスのするその手のスナップは見てもいる。
そのライオロスは心の中から言葉をかける。
(一度はテストでやりましたが、こうして他人の体を操作できるとなるのは驚きです)
「ま、俺も一度、怨霊になりかけた霊をこうして憑依させたこともあるから」
ライオロスの驚きに柄池は一度やったこともあると話す。
戦う友人のサポートの一環で憑依をさせた経験もあったのだ。
柄池はライオロスに体を委ねて、剣を構えさせる。
「では、この体を使い、あの時の戦いを」
ライオロスは憑依をしたまま、柄池の口を動かして言葉を出させる。
この勝負の言葉は彼に任せた方がいいと考えて。
「まさか、こんな形でお前の腕を確認出来ようとは」
カイゼルも剣を構える。
「「いざ! 参る!!」」
ライオロス、カイゼルの両者が一気に距離を詰めた。
剣を振るうのは両者同じタイミング。
二つの剣が打楽器となり、戦の開始音として響く。
剣は弾かれて、次は突きを繰り出す、お互いに。
その剣もお互いの体には届かず、それぞれがお互いの突きに阻まれた。
(すげえや。俺と戦った時よりも斬撃の速度が早い)
肉体を貸すだけでここまで違うのかと柄池は心で思う。
現状、相手と渡り合っているため、柄池が少しでも動けばこの均衡が崩れそうだった。
「ふふふ! ならば次はこれだ!」
言葉と共にカイゼルは剣を一度後方へと引っ張る。
すると
(うおぉ!)
柄池は驚く、急にカイゼルの突きが柄池の前に現れたからだ。
まるで、突きを放つ前振りが省略されたかのように。
「お前の剣技の切れ、以前よりも増しているな! 見切るのもやっとだ!」
その突きを受け止めて、ライオロスは柄池の口から評価の言葉を言う。
「ふっ! 嬉しい評価だぞ!」
カイゼルは再び言葉と共に剣を引っ込める。
そして、斜めに切り払いをした。
「しかも、一撃があの時よりも重くなっている。鈍ってないな、その腕は!」
「……ああ、そうだ!」
ライオロスは切り払いを受け止めつつ話して、カイゼルは少し間をおいてから肯定をした。
(しかし、カイゼルさんもすごいな……さっきからこっちは防戦一方だ)
柄池は心の中で状況を分析した。
事実、カイゼルが切れのある攻撃をしてから、こちらは攻撃に出ていない。
あの攻撃が重いことから、こちらが防御から次の動作に移るのに時間を取られるのも理由にあった。
(この状況、何とか奪回したいけど……どうすれば……)
戦うことが目的だが、出来れば勝ちたい柄池は打破できる手段を考える。
(ライオロスさん、どうすればこの状況を……)
柄池が内にいるライオロスに尋ねる。
しかし、その問いに彼は答えない。
それどころか、動きを止めるのであった。
(な、なんだこれは……?)
柄池の足元から黒に近い紫の煙が湧き始める。
*ライオロスのステータスは設定場所に公開します