表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/79

エピローグ 元の世界に戻ってから

 柄池は元の世界へと戻ってきた。

 帰ってきた時間は消えてから、仲間たちの間で騒ぎになって一週間後の日時であった。


 安心もあったが、それ以上に迷惑をかけた仲間たちに謝りたい気持ちがあったのだ。

 帰ってきてから、柄池は仲間たちに謝る。


 友人の父親にもこの件では起こったことも包み隠さず話して、調査するとの返事があった。

 エルラがまた呼ぶようでは友人の父親も何もしないわけにはいかないだろう。

 その父親も妖怪やモンスターの事件を解決する力のある人なのだから。


 また、友人はいない間も柄池の名を不意に呟くことがあったらしい。

 仲間の中ではそこをいじられていたとのことで、友人にもそれを謝ることになる。


 そして今、柄池達は


「これでいつも通りに大学へ行けるようになったわけだ」


 こうして呟き、何事もなく大学への道を歩んでいた、愛川と共に。

 帰ってきた日の翌日を今の日付は示す。

 元の世界とは違う道、コンクリートで塗装されて、装飾程度に置かれた花壇のある道を。

 通り過ぎる人も異世界で見た服ではなく、モンスターが横から出る気配もない。


「メイプルムーンのことも心配だったけど、来海ちゃんと店員のみんなが頑張ってくれたから何とかなったんだよ」


「そっか。なら愛川さんがこれからも迷惑かけた分頑張らなきゃだ」


「はーい。店のみんなの為に頑張りまーす」


 柄池が理解を話して、愛川は肯定と共に頑張ることを伝える。

 彼女も元気そうに日常を送れそうであるので安心していた。


「そういえば、ロカリアさん。別れの時に来なかったね。あの人なら絶対来ると思っていたのだけど……」


 柄池は気になっていたことを呟く。

 ロカリアはあちらの世界から帰還するときにただ一人姿を見せなかったのだ。

 帰ってからもそれは気がかりであった。


「あーそういえば、そうだったねー。なんでなのかなー……王女としての仕事で行けなかったのかなー……?」


 愛川はなぜかとの口調で語る。

 心なしか愛川は何か隠しているようであったが、疑うのも悪いと思って敢えて疑わなかった。


「そうかもしれないけど、まあ、帰ってきてしまったから勘繰ってもどうしようもないんだよな」


「あ、そうそう。私くノ一の職に就いたでしょ?」


「そういえば、そんなことを」


「あの時に力を授かったのだけど、あれ、まだ少し残っている感じなの」


「え? それはいいこと……なのかな? 下手にあっちの世界に影響ないといいのだけど」


 愛川からの報告に柄池は戸惑いを見せる。

 意外な事であった。

 異世界からの力がまだこの世界にいながらでも影響があることに。


 その影響がいい方向にもたらすか、それとも悪い方向にか、そこが柄池の戸惑いの元になった。

 柄池が愛川と共に歩くと、噴水を横切ることになる。

 その横切りに違和感を感じ模した。


「ねえ? この噴水ってさ……」


「ん、柄池君、何?」


 柄池の疑問に愛川は何かと聞く。


「こんなところにあったっけ?」


 柄池の疑問。

 ここは大学へと向かうのに良く通る道だ。

 異世界へと行く前にはこんな噴水はなかった。


「あ、確かに。でも私たちのいない間に出来たんじゃ?」


「でも、一週間でできるものなのかな? 工事するって告知もなかったしな」


「はっ、言われてみると……あれ、それに人もいつの間にかいなくなってない?」


 柄池が疑問すると、愛川は周りの異変に気付く。

 いつの間にか人もいなければ、周囲の雑音も聞こえない。

 鳥の声も、車の音も、他人が歩く音さえも。


「……本当だ。……まさか、まさかなのか……?」


 柄池は周りを見回して、妙な感覚を呟く。

 確かに違和感、だが、今後起こることも何となく予想も出来ていた。

 その予想も当たると複雑なので、出来れば当たってほしくない。

 微妙な気持ちも柄池にあった。


 噴水の水が湧く、音もなく。

 その後に水から上半身を出したのは出てきたのは女神

 ではなく、都神のエルラであった。


 彼女は周囲に泡を発生させていた。


「柄池君、ごめん! また来てほしいの! 水の都市ではどうしようもない犯罪組織があったから、助けてほしいの!」


「え゛!? その、呼んでもいいって言いましたけど! こんな時にですか?」


「うう……そうなのよ。悪いと思っているわ、その五芒星って犯罪組織がどうしようもなくて……」


 柄池の驚きにエルラは呼ぶ理由を語る。


 呼んでいいとは言っても、帰還した翌日にか。

 だが、そのことは呼び出す本人も理解はしていて、当の本人は申し訳ない顔だ。

 それを分かってのお願いなのだろう。


 エルラは言葉を続ける。


「柄池君、助けて……」


 エルラからの心からの願い。

 こう頼まれてしまっては柄池も断り切れない。

 まだ、救済者のつもりであったから。


「んー……分かりました! ただ、今回は戻ってくる時間として細かい時間の指定もしてもらいますよ。今この時に戻れるようにお願いします」


「ありがとう! 時間は都神のみんなできっちり調整して帰すからね」


 柄池の了解にエルラも礼を言って了承する。

 とりあえず、帰ってくることに関してはひとまず安心か。


 その安心も愛川に伝わったようだ。


「やった! くノ一の力も見せることが出来そうね!」


「ちょっとよろしいかしら、愛川さん?」


 愛川の歓喜の声にエルラでもない声が割り込んで来る。

 その声は柄池も聞いたことがある、そしてその声は愛川を気まずくもさせる。


「あ……」


「私に別れの日付を間違って教えましたわね? わざと……」


 愛川の声に対して、ロカリアが噴水から顔を出して声を出す。

 彼女の声は静かに怒りを秘めていた。


 同時に彼女があの時に居なかった原因も判明する。

 彼女の言うことが真実であれば、愛川の気まずさも納得がいく。


「あ、っと……そ、それはー、間違っていったのは認めますけどー、結局謝る時間がなかったしー」


「あれ以来、いら立ちをぶつけられなかったのですわよ。ライオロスさんを憑依させて鍛錬に励んでも、対して効果的でないですもの」


「もうちょっと頑張れば効果も上がるんじゃ……?」


「あなた、まだしゃべるのですわね? 私がいれば強引に柄池さんを引き留めるつもりだったと考えたのでしょうね?」


「わ、悪かったわね! あなたと柄池君がくっつくのは困るのよ! 問題なの!」


 怒りを顔に出さずにロカリアは語ると、愛川も負けじと反論をし始める。

 あの二人だけが分かる話をしているようだが、どうも愛川に落ち度があるような様子だ。


 ここでライオロスもまた噴水の横から光玉として出てくる。


「が、柄池殿……ロカリア殿はやはり合いません上にこんな私で疲労を感じるほどの荒使いです……できれば戻ってくれると……」


 ライオロスの申し訳ない言葉。

 どうもロカリアの不満は彼へと向けられているようだ。

 不満のはけ口になるのは正直気の毒である。


 それらをまとめて、柄池はある言葉を下した。


「あー分かった! まだ必要なんだね、俺が! でもさ、連絡だけはさせて、すぐ戻れるかもしれないけど、一応みんなにまた異世界へ行くって言っておきたいから」


「すみません、柄池殿……やはり私には柄池殿が必要です、面目ない」


 柄池の割きりの言葉に、ライオロスは謝りを入れる。


 スマホを取り出して柄池はメールを急いで打つと、愛川もスマホを取り出してメールを送ろうとする。

 不都合があっった時のための連絡、これで十分だ。

 一通のメールだけで仲間と友人の父親も理解してくれるはずだ。

 上手くいけば、あっちがメールを読まない間に帰還も可能だが、その時は特に問題はない。


 柄池が一足先にメールを送り終える。


「じゃ、愛川さんも行くよ!」


 柄池の呼びかけ、そして自身は噴水へ走る。


「はーい、じゃあ、また私と一緒に!」


 愛川は言葉と共に噴水へと走っていく。


「無能力で異世界転移したので、話せないモンスターとも協力して異世界を救います! か、再び!」


 柄池は噴水の出る水へと飛び込んでいき、愛川も後に続いた。


 二人の異世界での旅はもう少し続くようだ。




 END

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ