6 強敵との戦闘、だけど俺、戦闘は得意じゃないんです
道の端の鎧の発見に柄池は呟いた。
「これはまさか、デュラハンじゃ……? 気を付けた方がいいよ」
柄池の忠告の後に愛川は足早に鎧へ近づく。
「大丈夫、にゅるじもいるし、守ってくれるって言ってるよ」
大丈夫との愛川の後に、にゅるじが彼女の肩で動く。
ただ、鎧の傍には剣がおいてあるので、不安は残った。
「でも、慎重にね?」
「はーい。やっぱこういうの見ると、ファンタジー世界に来たって感じするねホントに」
「気持ちはわかるよ」
ファンタジー気分を愛川は味わうと、柄池は理解できると話した。
元の世界でも特に海外ではこんな風に鎧が置かれているところもあるとの言葉は奥底に引っ込める。
愛川は鎧に触れていた。
「うん、ただの鎧みたいだね、もし生きているなら、考えが流れてくるはずだから」
「そっか、なら大丈夫かな」
愛川の判断に柄池は安心を呟いた。
触れて判断した愛川の言葉は信用できるためである。
生きて動くことがあれば、何かを感じ取れるだろう。
安心を覚えると、愛川はもう一度鎧に触れた。
先ほどとは違う、疑問の表情を浮かべて。
「あれ? なんなのかしら、流れ込んでくるこれ……」
愛川は疑問を呟く。
その瞬間、にゅるじが彼女を後方に突き飛ばして、大きく球体に膨らんでいく。
「きゃ!」
尻もちをつく愛川の痛みの声、そして
にゅるじは斜めに分かつように切断された。
剣の斬撃で、だ。
次に愛川から声が出た。
「にゅるじ! 大丈夫!?」
愛川の心配の声が響き、二つに分かれたにゅるじは地に落ちる。
「大丈夫だあ! スライムは真っ二つにされたって生きてっから!」
石垣がそういうと、にゅるじの分かれた体は元に戻ろうとお互いの距離を縮めあっていく。
その中でゆっくりと斬撃を放った相手が動き出す。
あの愛川が触った鎧がにゅるじを切断したのだ。
「やはり、あれが今回のデュラハンか……」
言葉と共に柄池は剣を構える。
突然の行動に倒れた愛川は立ち上がろうとしていた。
デュラハンはもたついている彼女の様子をただ見ているだけで、攻撃をすることはなかった。
愛川が立ち上がり切ったのを見て、デュラハンは柄池の方へと向き直す
「よし、こっちだ! 俺が相手になる!」
その柄池の声と共に、デュラハンはこちらに向かっていく。
一度、手を横に投げて、手をスナップさせてから。
が、その歩き方は時々動きが鈍くなったりと人間の歩くような歩き方には違和感があった。
「俺だって少しは剣をつかえるんだ! なんとかいけるはずだ!」
柄池は自分への檄を入れる。
前の世界では警棒を使ってモンスターに近い存在とも戦っていたので、戦闘の経験そのものはあった。
最も、この状況で一番戦えるのは柄池だけ。
愛川や石垣に任せることなんてできなかった。
「愛川さんは下がって! にゅるじと石垣さんも一緒に!」
「うん!」
柄池の指示に愛川は下がり、石垣も連なるよう下がる。
まずは攻撃よりも相手がどう出るかを見極めるため、自身はあえて動かなかった。
そしてデュラハンの攻撃が来る。
「え……?」
柄池の予想は裏切られた。
デュラハンの斬撃は早かったのだ。
その斬撃の速さにまさかの印象を抱くくらいに。
「うわあ!!」
斜めから来た斬撃を何とか件で受け止めて、柄池は声を漏らす。
しかもこの剣から伝わる重み、柄池が受け止めていても徐々に押されていた。
「くっ!」
そこで、柄池は横に力をくわえてデュラハンの攻撃を横に受け流し、同時に自身は横に飛ぶ
受け流された剣は床とぶつかって音を立てた。
(まずい……確実に俺よりも強い……)
柄池は心の中で状況分析をする。
その後に心の中でこうも呟く。
(でも、もしかしたら……)
柄池は心の中である考えを持つ。
飽くまで調査だけだ、ここでデュラハンを巻く戦いもできるだろう。
それでも自身は出来ることの可能性を探るために手を打ちたかった。
そして、柄池は次に口を開く。
「デュラハン。あんたはもしかしてかつて人間だったのか?」
柄池の言葉。。
それにデュラハンの動きが止まる。
「もたついていた愛川さんに攻撃をしなかった、だから、あんたは少なくとも酷いことをするような性格ではないって思うんだ。人間かどうかは憶測だったけど、図星と思っていいみたいだな」
柄池は推測を話す。
礼儀を持っているということは高い知性はあると思っての判断、ならば人間ではないかと。
次に柄池は提案を出した。
「だったらやめよう。俺達だって戦う気はないし、戦わずに済むならそれがいいだろ?」
戦闘はしないとの提案。
その提案にデュラハンは剣をぎこちない動きで下す。
「よかった、戦う気はないようで」
柄池は安心して、剣の構えを解いた。
しかしだ。
デュラハンは急に柄池の方へと走ってくる。
石垣からの言葉が出た。
「んなことが! 救済者様、逃げて下せえ!」
石垣の要求の言葉が響く。
しかし、柄池は剣を構えなかった。
その様子に愛川からも言葉が出た。
「え? どうして? 柄池君、逃げれば……?」
愛川の疑問。
その後に柄池は剣を投げ捨て、デュラハンを見据える。
続いて愛川の声が出る中、剣が振り下ろされんとする。
このままでいけば切られる、誰もが分かる。
「柄池君!!」
デュラハンは無防備な柄池に剣で攻撃した。