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12 柄池は恵まれないのか?

「俺は恵まれてないって、ここにきてから思ったことはないぞ」


「何をほざくか。他の救済者よりも圧倒的に弱いお前が」


 恵まれてないことの否定、その気持ちを柄池が伝えると、テイガは戯言をと話す。

 他の救済者よりも弱いという言葉は否定しない。

 それでも、柄池はテイガの言葉に立ち向かえた。


「俺は恵まれている、なにせたくさんの仲間がいるからだ」


「仲間が? 何も出来ずにいたあの仲間がか?」


「カットリンもめぬえもんもにゅるじだって頼れる仲間だし、ライオロスがいて俺はここまで戦える。何もできない仲間なんて、俺はこれっぽっちも考えてないさ」


 テイガの仲間に対しての疑問に、柄池は頼れる仲間と反論をする。


「だが、あの王女は俺様に傷もつけられずに敗北だ。それにそこの女だって、戦闘もできないようだぞ」


「そして、ロカリア王女だってすごい人も共に戦ってくれたし、その仲間としての道をつないでくれた愛川さんがいなければ、俺はここまでこれなかった」


 テイガの言葉を半分聞かずに、柄池は反論を続ける。


 ロカリアもオークとの戦闘で他のオークを食い止めてくれた。

 そして愛川がいなければ、にゅるじも石垣もめぬえもんもカットリンだって仲間にはならなかった上に、ロカリアのやったことを食い止めてくれもしなかった。


 その思いを柄池は次の言葉として出す。


「俺は……これほどの仲間がいるのに恵まれてないなんて言えないさ」


 柄池の抱く気持ちと考え、それをテイガに言葉として表す。

 自分は恵まれているとの気持ちを。


 今回の旅は恵まれた結果、ここまでこれたのだ。

 エルラを責めるつもりもないほどに。


「はっ! 恵まれているか!? お前はその力の差でここまで言えるのはお笑いだな!」


「そっか。じゃあもう一ついいか?」


「なんだ。一つくらいは聞くか」


 柄池はもう一つと話すと、テイガからも受け入れると話す。

 ここまで分かってくれない人間だと疲れるとは思わなかった。


 そして、負ける気もしなくなってきたことも。


「お前に似合う敗北台詞、俺が考えておこうか?」


「はっ……はっはっはっ! ……図に乗るな小僧!」


 柄池の言葉を聞いた後、テイガは笑う。

 その直後に笑いから怒りへと変わるのであった。


 怒りがあふれるテイガは柄池に突っ込む。


「おっと! 危ない危ない!」


 突進しながらのテイガの斬撃、それを柄池は姿勢を低くして滑り込むようにかわした。

 それと同時に柄池は自らの手をテイガの片足に触れた。


 柄池は前転しつつ素早く姿勢を整えて、再度テイガから距離を離す。


「おのれえ! 逃げても変わらんぞ、この現状!」


 テイガはその言葉と共に足に力を込めて、移動する。

 するとだ。


「なんだ……?」


 テイガからの違和感の声。

 直後、テイガは柄池の方へと一飛びをする。

 この飛びはテイガの胴が前面に突き出されて、意図せずだと見て分かる。


「俺は確かに魔法は使えないよ」


 柄池は自身の弱みを語って、言葉を続ける。


「でもさ。最近手に入れたこの腕輪で強化魔法は使えるんだ」


 言葉を続ける、同時に持っている腕輪をテイガに見せて。


「ミスカさんからもらった腕輪!」


 腕輪の説明、その後に愛川からミスカの名前が言葉として出た。


 テイガの力の入れた足は、柄池が腕輪を持った手で触れた足。

 あの時に柄池は強化魔法を、テイガの足にかけたのだ。

 それで、テイガは自身にもコントロールできないほどの跳躍をした。


「自慢の鎧はなかなか便利そうで良かったよ。なにせ、俺の強化魔法がお前の足に効いてくれたんだから」


「しまっ……!!」


 柄池はテイガの鎧を評価すると、テイガは失態を嘆く。

 柄池の剣はすでに腕を伸ばしていて、テイガへと向けてもいた。


「行くぞ、至近距離、竜殺槍」


 意図せず無防備に近づくテイガに柄池は竜殺槍を放つ。

 至近距離で、しかも防ぎようのない一撃。


 テイガに先ほどの竜殺槍よりもすさまじい衝撃が走った。

 それを受けたテイガは大きく吹き飛ぶ。

 様子を見て、柄池は心で呟こうとする。


(竜殺槍、これで二回目か……)


 柄池は息を付きつつ、心の中で呟く。

 一回目は慣れてきた方だが、二回目は初めてで疲労と痛さも感じていた。

 ライオロスに戦闘を任せているとは言え、これからの動きも鈍りが出るのかと不安も感じるほどである。


 そのライオロスから心の声が聞こえてきた。


(柄池殿? 聞こえてましたか? 手ごたえが先ほどよりもでかいですよ)


(え、あ、ごめん、聞きそびれていて。確かにこれはいい一撃だったな)


(まだ鎧の破壊には至りませんが、あと一回の竜殺槍で行けます)


 柄池は謝りを入れて、ライオロスは鎧の破壊について語る。

 その言葉で安心もあったが、聞きそびれたことについては悪いなと感じてもいた。


(考えてたことがあって聞きそびれちゃったか……ごめんごめん)


(いえ、それは構いません。私が体を動かしますので、ご心配なく)


 再度柄池は謝って、ライオロスから構わないとも言われる。

 また、聞き逃しは体のことで考えていたためと結論を付けた。


 そこで、飛ばされたテイガは立ち上がる。

 立ち上がりには剣も使っていて、残ったダメージも垣間見えていた。


「よくもやってくれたな……弱小救済者のくせにここまでやってくれようとは」



*補足

ちなみに年齢 柄池>テイガ


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