10 ロカリア王女は二度死す
稲妻が落ちて、黒い電気が周りにほとばしる。
その光景を何もできずに柄池は立ち尽くしていた。
電気のほとばしりもなくなり、そこには横たわるロカリアと、剣を下ろしたテイガがいた。
戦闘の継続などもう無理であった。
「声ぐらいかける時間は許してやろう。強者の余裕と知れ」
テイガはそう告げ、背を向けて離れていった。
すぐさま、柄池と愛川はロカリアの元へと走った。
「ロカリアさん! 大丈夫か!?」
「が、柄池……さん……?」
「良かった、意識はある! なら、愛川さん。治療魔法セットで回復を!」
立てない上に言葉も朧なロカリアを抱き上げ、柄池は治療を頼んだ。
「その、聞いて、ください……私は何も、できずに……負けたわけでは……」
聞いてとのロカリアの言葉。
柄池は耳を寄せると、彼女はあることを話してくれた。
「そうか……分かった。すごい有り難い情報だ。勝機が生まれるほどだよ」
「ここまで……ここまで、やった甲斐は、ありましたわ……ご武運を……」
「本当にありがとう、ロカリアさん」
ロカリアがここまでやった苦労を語ると、柄池はその苦労に礼を言う。
「こういう時は、さん付けでない方が嬉しいのですわ……」
そう言ってロカリアは、糸が切れたように気絶した。
「ロカリアさん! まだ、脈は大丈夫みたいだけど、愛川さん、早急に回復して! 今日の分使い切ってもいいから!」
「分かった!」
柄池の頼みに愛川はすでに治療魔法のステッキを手に収めていて、こちらへと向かっていた。
「それと、愛川さん。にゅるじを貸してほしいんだ」
「うん。にゅるじ、柄池君に協力して」
柄池からの提案にすぐさま愛川は協力を要請する。
にゅるじは体を伸ばして、柄池の腕を伝わっていく。
愛川にロカリアを託して、柄池は立ち上がる。
同時に光玉のライオロスもビンから出てきて、柄池の横に並んだ。
その様子を見て、テイガは口を開いた。
「ほう。あの戦闘を見ても、無駄な戦闘をやろうと考えるか。愚かなものだ」
「悪いね。あの戦闘を見たから、なおのこと無駄な戦闘はしたくないんだ」
「それは逃げるという意味か?」
柄池は無駄な戦闘はしたくないと話して、テイガは意味を確認をする。
当然引く気はない。
倒れたロカリアの戦いを無駄にしないために。
その後に柄池はライオロスを憑依させて、光を放つ。
「んなことはないさ。お前のためになる有意義な敗北をさせたいという意味があるんだ」
「はっ。口の悪い救済者として頭に刻んでおこう。敗北者の欄にな」
光を剣で払って柄池は意味を教えると、テイガは敗北者として覚えておくと告げた。
覚悟があった行動ではあるが、仲間のロカリアがあんな目にあわされた以上、心に沸くものはある。
(ところでライオロス。いまさら聞くのもあれだけど、竜殺槍って何回まで行けそうなの?)
(三回までは行けると思います。それ以上やれば、どうなるかは分かりません)
(そっか、一回の戦闘で一回しかやったことなかったからな)
心の中でライオロスは話すと、柄池は心の言葉で返す。
もっと早めに聞いておくべきことだが、ならば三回までにこの勝負を決めておかないといけない。
柄池はそろそろと戦闘の意思をテイガへの視線に乗せる。
「じゃあ、そろそろ行くとするか」
「王女のような待遇は期待するなよ。お前はすぐに敗北させてやる」
柄池は告げて、テイガも剣を構える。
そして、柄池は走って距離を詰めた。
「にゅるじ、ハンマー状になってくれ」
先にと柄池はにゅるじに話して、にゅるじは柄池の手にまとわりつく。
にゅるじの形状は柄池を中心とした大きな直方体へと変わった。
「何をする気だ?」
それを見ていたテイガは剣を横に薙ぎる。
横薙ぎの斬撃を柄池は剣で受け止めて、柄池はにゅるじのハンマーを斜め下から振るった。
「確かにその鎧は魔法も物理も効かない」
柄池は呟く。
にゅるじでの攻撃を行った理由はロカリアの話にあった。
「でも、モンスターからの攻撃はどうだ?」
柄池はハンマーをテイガに向けた。
あの時ロカリアが拳を向けたとき、実はモンスターの手へと変わっていたのだ。
その手には爪が生えていて、テイガはかわさなかったが、その爪の攻撃に初めて手ごたえがあったのだと。
ロカリアから託された勝機の道はこの話である。
にゅるじのハンマーはテイガに命中した。
手ごたえは確かにあった。
「ああ、確かに効くがな」
そのテイガの声には痛みに染まる様子がない。
どうも効果は薄いようだ。
「スライムの攻撃など、かわすにも値しないんだよ!」
「うわっ!」
テイガからの剣の押し返しと蹴りで、柄池は弾かれて声を出してしまう。
更にテイガは剣を上に掲げる。
「落ちよ。暗黒の雷よ」
黒い稲妻を落とすとのテイガの予告。
視線を上にあげると、空に黒い雲が覆っていた。
「やっ! これはかわさなきゃだ!」
柄池の言葉の後に、すぐさま黒い稲妻が落ちて、柄池は横にかわした。
ライオロスがいなければ、稲妻を避けるなんてできない芸当だろう。
「良くかわしたが、何度もかわせるものではないぞ」
テイガからの注意。
ふと柄池が視線を動かすと、手のにゅるじに目に入る。
にゅるじの体の一部が視線を下げた頭のように見えて、落ち込んでいる様子にも見えた。
「大丈夫だよ。攻撃はダメだったけど、まだまだ、にゅるじにはできることがたくさんあるんだ。まだまだだ」
柄池からの励ましに、にゅるじは視線が上がったように見せた。
柄池の励ましは続く。
「にゅるじに確実に役立ってもらうことがあるから、落ち込む必要はないよ。今からそれを頼むから、聞いてくれ」
柄池の励ましに、にゅるじは頷くしぐさを見せた。
そして、手短にあることを話す。
この話は柄池が感じた違和感につながることでもあり、その違和感が間違ってなければ、にゅるじの力は不可欠にもなる。
それを聞いて、にゅるじは柄池の手から落ちるのである。
にゅるじの落ち込んだ気持ちもすでにないと確認できた。
*テイガのステータス設定場所に公開します
そこで、ここでも少し公開します
名前:テイガ
種族分類:人
職業:暗黒騎士
性別:男
耐久力:4,000
魔法力:2,000
攻撃力:3,000
防御力:5,000
機動力:200
技術力:500
魔法威力:1,500
戦闘経験力:3,000




