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6 女神の挨拶はドロップキックと共に

 突然の都神のドロップキックに柄池は言葉なく驚愕していた。


(ええー……?)


 疑問を浮かべながら柄池は力なく吹き飛ばされ、壁にぶつかる。


「え゛ぇ!? 柄池君、大丈夫?」


 愛川が心配しながら柄池の元へと寄っていく。


「よくこんなところにこれたなあ? なあ、ニイムラさんよ?」


「え……? あの、ニイムラではないです……柄池です……」


「そんなこと言ったって、この私には……ん?」


 柄池からの弁論に都神は疑問を持ってくれた。

 かなり痛いうえに、なぜこんなことが起きたか分からない。

 だが先に弁明が必要と考えて、あの言葉を出した。


 その都神はよく見ると、赤い髪で黒い言葉が周囲に輪として漂っていた。

 少なくともこの都神はエルラでは無いようだ。


「ニイムラ……違います……柄池です……」


「ありぇ? ニイムラじゃない……? うわああ! 本当にごめん! 救済者が来たっていうから、ニイムラしか頭に浮かばなかったから」


「あー……分かりましたが、えっと、エルラ様と話しに来たんですが」


「ああ、そうなの? エルラー、ごめん。私の勘違いだったから、お茶飲んでないでこっちに来てー」


 柄池からの要望に都神は出てきた水の方を向いて、声をかける。


「あら? 昨日来ないと思ったけど、今日来てくれたの? 宮夜(みよ)、お菓子は私の分も食べないでね?」


 声から反応するはエルラと呼ばれた都神。

 柄池が会おうとしている女神である。


「食べないわよ」


「じゃあ、安心ね。それじゃ、ついにお話しできるわね、柄池君」


 宮夜と呼ばれた都神は食べないと話しつつ、エルラが安心と言葉を返す。

 宮夜は水の方へと歩いてこの部屋から去ると、エルラが次にこの部屋へ入ってきた。

 その姿は間違いなく、柄池があの時見た姿である。

 泡は会ったときほど出てないが、エルラの頭上に二つほど浮かんでいた。


「はい。最初は訳も分からず動いてしまいましたが、ここまで何とか」


「私も話できないまでに力がなかったことは計算外だったわ。ジェスチャーで何とかと思ったけど、それもあれだったし」


「え、同じように踊れば、言葉が通じる仕組みじゃなかったのですか? あの時って」


 エルラは話が出来なかったことを話すと、柄池はその時の踊りのことで聞いてみる。

 すると、宮夜から話が入ってきた。


「え? エルラ、あなた踊りの成績0だったじゃない? それなのに?」


「まあ、この話はさておきで、この世界に呼んだ理由を話しましょう」


 宮夜の話をエルラは即座に切り替えた。

 柄池は成績について聞かなかったことにした。

 聞けばややこしい空気になると考えて。


 エルラは言葉を続ける。


「まず、私がこの世界に呼んだ理由だけど。実はね、この世界って何者かに力を受けて改変された世界なのよ」


「改変された世界ですか。元の世界ってどんな感じだったのですか?」


「元の世界はね、あなたのいた世界と全く同じ。そう、この国もね、日本と呼ばれた国なのよ」


「ええっ!? この国って日本だったのですか?」


 エルラは解説すると、その話に柄池は驚く。

 まさかこの国が日本であったとは思わなかった。


「あれ? 二人とも気付かなかったの? 日本語もみんな話しているし、書かれている言葉も日本語だったでしょ?」


 エルラはその様子に疑問を投げかける。


「えっと、通訳の力が働いていて、それで理解できたのかと」


「全く考えてなかった!」


「柄池君も愛川ちゃんも適応力の高さは予想以上ね」


 柄池の答えと、その後の愛川の答えにエルラは驚いた。

 エルラから続いて言葉が切り出される。


「で、話を戻すと……この世界はね、あなたたちのいた世界から300年後の地球なの。ただし、いつの時期からか世界改変の力を受けた地球」


「ということは、世界改変の力が働いた理由を突き止める。それが俺達の目的であると」


「そう、そのためにあなたたちをこの世界に呼んだのよ。誰かまでは分からないけど、おそらく誰かがその力を使ったと思うから」


「分かりました。あと、一つ質問が」


 エルラからの解説を理解した柄池は質問をする。

 今回のことで、もしかしてとの思いでこの質問があった。


「なにかしら?」


「この世界に魔王っていると思うのですが、その人物が怪しくないですか?」


「ああ、その可能性はないわね。はっきりとしているわよ」


「え? それはどういう考えで判断を」


「今、魔王は誰かに倒されて引きこもっているから」


 柄池の疑問にエルラはあっさりとこう答えた。

 まさかの引きこもったという回答に柄池は驚く。


「え?」


「魔王は引きこもっているのよ。私たちも知らない神様、おそらく別の世界の神様が召喚した人が一日もかからずに倒しちゃったのよ。それで、魔王はショックを受けて引きこもったと」


「魔王が、引きこもり……」


 エルラの解説に柄池は衝撃もあってか言葉を再度呟く。


「それで、今は魔王軍直属のモンスターも凄く困って事実上活動停止だし、しかも、他の魔物も暴れることもなくなったわね」


「まあ、一日で台無しにされればショックかな……モンスターがおとなしいのもそれが原因とみていいのですか?」


「ええ、そうね。私は魔王の引きこもりが原因でおとなしくなったとみているわよ」


 モンスターがおとなしくなった理由という柄池の疑問にエルラも肯定をした。

 テスト勉強をしていたら、一瞬で勉強した記憶が全部なくなった。

 そう考えると魔王の気持ちは理解できなくもない。


 そこで愛川が疑問を投げる。


「でも魔王って引きこもらない人なの? アクティブに動いて外にも出没する人じゃないの? 魔王って」


「愛川さん……えっと、それは言わない方がいいことだよ」


「そうなの? 分かった」


 柄池の制止に、愛川は頷いて理解をする。

 基本引きこもりかと言われるとそうなのだが、そこは気にしない方がいいと思って制止の判断を出した。



*補足

あの時、エルラって何を伝えたくて踊ったの?


・プロローグ時


「指をさした後に……片腕を真上に掲げる、凛々しい表情でだ」


エルラ

(あなたは救済者として選んだ! 勇者と同じなの!)


「次は少し離れたところまで歩いて、両手を挙げた。それで変な表情で大きく口も開けているね」


エルラ

(で、この世界を脅かす脅威がいて……)


「その次は……元の場所へと戻って姿勢を低くして、今度は頭を抱えた」


エルラ

(私たちは困っている。恐ろしい表情をしたから世界の脅威があることは分かるわよね?)


「今度は俺に指をさして、横に払った……あ、なんか期待している目だ」


エルラ、

(そして、あなたにはその脅威を払ってもらうように連れてきたの! これで分かるはず!)



・第二章 19 スマホの性能確認と女神の踊り


手を真横に広げて立ち、広げた手を頭上に移動させる。

その後に手を真上にギリギリ伸ばすことを二度伸ばして、次に握った両手を胸に持っていき、頷く。

そして最後に真正面へと人差し指を向けるのであった。


エルラ

(こっちの方向よ、私の向けたての方)


エルラ

(こっちに向かえばいいから、今の進路で問題ないわよ)


エルラ

(あなたはこの方向で進めばいいから、おっけーよ)

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