4 図書館の女性司書
柄池は移動中に図書館を見つけ、そこで調べ物を始めた。
主要都市の図書館というだけあって、中は高い本棚が綺麗に並べられていた。
かなりの種類の本をそろえていることが一目で分かる。
そこで柄池と愛川は机に多くの本を置いて、一緒に調べ物をしていた。
ちなみにめぬえもんは外で待機だ。
「救済者についての本も思ったよりあったのは収穫だ」
「書いてあるといいね、帰れる方法が」
「まあ、それもだけど、この世界に来た理由と女神についても調べたいね」
見つかるといいと愛川は話すと、柄池は別の調べるものもあると言葉を返す。
本を探すときにほとんど愛川は離れず、柄池の視界内に愛川はほとんどいた。
というよりも、愛川自身が柄池を視界内に常に収めておきたかったというべきか。
「この図書館も水の都市の物ですからね。ワタクシも自慢できるほどです」
青い短髪の女性司書が近くで自慢をした。
愛川が離れなかった理由はこの司書にある。
なにせ、水着で露出も高い女性であって、愛川が快く思っていない視線を向けていた。
「ともかく、一緒に探してくれて助かりました。司書さん」
「救済者ですもの。ワタクシ、これぐらいのお手伝いはしてあげないといけません」
柄池の礼に、司書は当然という。
同時に愛川は司書に視線を向ける、敵意に近いものが含まれた物を。
司書は柄池の探し物を探してくれたので、礼は言わないといけない。
「じゃあ、探すとするか。元の世界に帰った救済者の話があると手掛かりにもなりそうだね」
「はーい」
調査の開始を柄池は告げると、愛川も肯定して本での調査を始める。
調査をしていく中で、司書は柄池から少し離れたところで待機をしていた。
「あの……もう、手伝ってもらうことはありませんので、持ち場に戻ってもらっても結構ですよ」
「あら、そうですか? ふーん……」
司書に頼むことはもう無いと柄池は話すと、司書は何か理解したように話す。
その後に司書は柄池の後ろへと近づく。
「ワタクシはこの図書館の司書ですので、ワタクシを調べれば何か分かるかもしれませんよ」
「ああ、そうなのですか。ただ、こちらで色々と情報を集めたいので、まずは本を見ようと」
司書の提案に柄池はやんわりと断りを入れる。
この司書は探しているときにもこちらをよく見ていたので、この好意にも何か違和感を覚えていた。
司書はさらに柄池の背後へと距離を縮める。
「では、ワタクシが手伝いますわよ。こうすればどうでしょうか?」
「あの、有難いですけど……申し訳ないですが、本が捲りづらくなるので……」
司書から手伝いの申し入れがあったが、有難いことも伝えて、柄池は断る。
何せ今の司書は柄池の肩に胸を押し付けて、柄池の見ている本へと手を伸ばそうとしたのだ。
「では、こうしましょうか」
「あー、困るので……その、本当に申し訳ないのですが、離れてくれると助かります……」
その様子を見て司書は離れて、柄池は困っていたので助かると話す。
しかしだ。
次に司書は向き合う形で座った柄池の太ももの上へと足を延ばす。
結果として、司書の太ももで柄池の太ももを挟みこむ形で、柄池の上に座る。
「それだったらワタクシがこうすればよろしいですか?」
「それだと本が見えづらくなるので……えっと、手伝ってくれる意思は分かるのですが……」
司書からの質問に柄池は困惑の声を出す。
司書との密着度は高く、いかがわしい行為にも見えてしまう。
愛川から怒りの声が出た。
「はい! もうやめなさーい! 迷惑でーすよー!」
愛川が司書と柄池の間に強引に体を差し込んでいく。
ここまでされると、柄池も困ったので愛川の介入はありがたかった。
司書は柄池からやっと離れる。
「あら、そうでしたか? 少し気分がよかったので、申し訳ありません」
「気分がよかったくらいでそんなことすな! やらしい雰囲気罪で逮捕されるわよ!」
頬に掌を触れて司書は申し訳ない気持ちを話すと、愛川は突っ込みを入れる。
それを聞いて、司書は柄池から離れていく。
一息ついてから柄池からの言葉が出ようとする。
「えっと、気を付けてくださいね。とりあえず、再開しようか」
柄池からの言葉の後に愛川の言葉も出る。
「はーい。お邪魔入りませんからねー」
愛川は司書へと警戒の言葉を入れる。
それから、司書はその場を離れて、難なく調査が出来た。
「元の世界に帰った救済者もいるみたいだね。名前は何だろう?」
「女神については今のところ記述もないし……うーん、眠くなって……」
柄池は調査を進めて、愛川も女神についての調査を進めた。
名前を探ろうと思ったところで、奥から先ほどの女性司書の声が聞こえる。
「あら、女神については何か分かりましたか?」
「む! 来たな! やらしい女め! これ以上近づくと、サキュバス認定だー!」
司書の声に愛川は上体をすぐに起こして、警戒の言葉を出す。
司書は近づいてきたため、柄池から声をかける。
「本を読んでも分からないもので、しかも神様についても女神の女の字も出てこない状況です」
「よろしければ、その女神について特徴をワタクシに教えてくれませんか?」
「あ、はい。この世界に来る前にあったのですが、水色の髪で確か羽衣を翼のように見立ててまとってました」
司書の質問に柄池は頼れるかもとの判断で、答えた。
特徴を聞いて、司書は考えるための間を開ける。
その間に愛川は警戒のまなざしを司書に送る。
「もう、あなたはサキュバス認定だ! 取り消しは効かないわよ!」
「その認定はあまり効果ない気もするよ、もうここまで近づいているから……」
愛川のサキュバス認定に柄池は突っ込む。
事実、司書は近づいても愛川にはお構いなしである。
司書は思考の行動を終えて、口に出した。
「もしかすると、それは女神ではないと思います」
「え、それってどういうこと?」
司書のまさかの言葉に柄池は無意識に疑問を出した。
「救済者様の会ったその女神は、都市の力が具現化したものだと思います。言うならば女神は都市そのものでもあります」
「ああ、それで女神といっても分からなかったんだ。みんなは」
「ええ、女神という呼び名はありません。都神と呼ばれていますから、救済者様の会った女神は」
柄池は納得をして、司書からさらに解説をしてくれた。
カイゼルに聞いた時に女神で分からなかった理由に合点がいく。
この世界に女神という呼び名は浸透してないからだ。
「それで、その水色の髪の都神はこの水の都市で会えますか?」
「ええ、会えますよ。都市の神殿に行けば会えます」
柄池が会えるかと聞くと、司書は都神に会えると答える。
この水の都市に来て正解であった。
*補足
ちなみに、この司書さん。実はサキュバスです




