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3 水の都市、到着

 そしてめぬえもんに乗って柄池と愛川は移動していき、ついにあの場所へとたどり着く。

 エリアルスライサーのカットリンも用事があるということで、同行してくれた。

 先に呟くは愛川だ。


「着いた! 水の都市に!」


「回り道もしたけど、ようやくここに着いたわけか」


 愛川の言葉に柄池は感慨深さをかみしめて言葉を呟く。

 今回の目的地である水の都市についたのだ。

 今、柄池達は馬になっているめぬえもんと共に水の上にある道路を歩く。


「水が多いし、まさに水の都市って一目でわかる!」


「しかも、水の中に家があるな。あの中で生活できているってわけか」


 道路の脇の水を覗くと人が泳いでいて、泡に包まれた家もまた水中にあった。

 ただ、都市の人全員が水の中での生活だけではなく、柄池と同じ通路を通る人もいれば、水上にも家があった。


「あと、みんなが水着を着ているね。水での生活が多そうだしそうなるのかな」


「はい、水の都市の人々は水と共に生活してきましたから。技術や魔術で水の扱いに長けているものも多いです」


 愛川の推測に近くで立っていた男性が後ろから答える。

 その男性は柄池も愛川も見知った男性だった。


「カイゼルさん! ここに来ていましたか!」


「はい、ここにも見回りで来ていまして。ただ、あまり目立つような恰好ですと、都市の人々を怖がらせることになりますので、こうして軽装ですが」


「見回りね。まあ、カイゼルさんがこうしていれば、この都市の危機も大丈夫でしょう」


「有難いお言葉です。見回りにも精が出ます」


 大丈夫だろうと柄池が話すと、柄池が見知った男性、カイゼルは感謝を述べた。

 ただ、見回りをやっているという話に、あることにも気付く。

 それを聞こうと柄池はカイゼルの横顔へと近づく。


「しかし、見回りということは、ここにも警戒している人物が出る可能性が、でしょうか?」


「はい、そうなります。この都市の近くに出ボスしたとの情報も。ただ、他の騎士も見回りをしておりますので、心配はおかけしません」


「まあ、それならいいですけど。何かあったらこっちにも気軽に言ってくださいよ。これで救済者ですから」


「ははっ、お気持ち有難い。これでも騎士団長ですから、不安の一つも出させませんよ」


 腕輪を見せつつ柄池は小声で話し、カイゼルは不安にさせないと小声ながら力強い言葉を返す。


「それともう一ついいですか?」


「はい、何か?」


 聞きたいことと柄池の疑問に、何かとカイゼルの言葉。


「カイゼルさんの近くにメイド喫茶があったのは何か偶然なのかな?」


 柄池の疑問、それは近くにメイド喫茶があったことである。

 カイゼルの声がかかった位置も何歩かでいけるところであり、今の場所でもメイド喫茶は近い位置にある。

 カイゼルは答えるまで間を開けた。


「偶然です」


「偶然です……」


「たまたまという意味。それが偶然です」


「偶然です……か」


 カイゼルは意思を押し付けるように偶然と放ち、柄池も押され気味で意思を受け入れる。

 声をかけたとき、カイゼルがメイド喫茶の入り口の近くにいたというのも偶然……きっと偶然なのだろう。


「それでは、私は見回りに戻ります。さて、ここもあの人物はいないので、別の場所を……」


 そういって、カイゼルはメイド喫茶の周辺から離れていく。


(変なことは考えちゃだめだな……うん……)


 変に考えず、柄池は無理に納得しようと考えていた、それが最善だと考えて。

 すると愛川も、近くのメイド喫茶へと体を向けていた。

 考え事も何かしている様子にも見えて、柄池は声をかける。


「どうかしたの? もしかして見覚えのある場所だったりする?」


「ああ、別にこの場所に見覚えがあるわけじゃないけど、私もメイプルムーンって喫茶店でバイトしてたからね」


「そういえばそうだね……店長さんや店員さんのことかい? 心配していたのは?」


「あ、バレちゃった? 隠してもしょうがないけど、あの喫茶店にお世話になっているから、心配かけてないかなって」


 柄池の疑問に愛川は答えてくれた。

 やはり喫茶店の人たちが心配であったようだ。


「店長さんもいい人だったし、サービスもしてくれる人だからね。いい人だって俺も分かるよ」


「そうよ。店長さんは店員のボディーガードも引き受けてくれるって話もするくらいだから。お世辞でも強そうな外見とは言えないんだけど」


「それに、店の人もいい人なんでしょ?」


「あ、分かった? 来海ちゃんもだし、いい人だよ店員もみんな」


 柄池は店の人について聞くと、愛川はいい人たちだと肯定する。


 柄池は愛川のバイト先の店長にも直接会っていて、自慢のメニューをただでごちそうしてくれたのも最近の話だ。

 愛川の友人である来海も含めて、店員皆に良くしてもらっていることはバイト先に行ったときに理解できているのだ。

 これでも柄池も仲間たちの心配してくれることが気がかりなので、愛川の気持ちも十分理解できる。


「前から考えていたけど、この世界と元の世界って同じように時間が過ぎるているのかな?」


「ああ、そういえば、時間の流れってどうなんだろうね?」


「女神にあったら聞きたいもんだね」


 ふと思っていた言葉に愛川も同じく疑問を感じて、女神ならばと柄池は言葉を返す。


 女神はここにいないかもしれないが、それはもしかするとこの都市で分かるかもしれない。

 分からなければ手掛かりを探したり、他の場所へと移動するまで。

 改めて、次の行動を柄池は呟く。


「その女神がこの都市にいるかもしれないし、そろそろ探すとするか」


「そうね。探そっか」


 柄池はそろそろとの言葉を出して、愛川も同意する。

 柄池と愛川はめぬえもんを連れて、移動していくのであった。


「それにしてもさ……こう、みんなが水着だと、私も水着になりたいな」


「え? そう? 今の服でも十分だし、戦闘とか何かあると水着は不便な気もするよ」


 愛川が水着になりたいと話しつつ、柄池はこのままがいいと話しながら二人は移動する。

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