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17 キスに必要なのは愛と勇気と希望、って俺は聞いた

 愛川は寝ている柄池の横で顔をじっと見ていた。

 柄池が外で用件を済ませた後、柄池はそのまま寝たのだ。

 少ししてから愛川は顔と顔を近づけ合う。


「ダメ……今回も勇気が足りなかった」


 愛川は寝ている柄池から顔を遠ざけて、キスが出来なかったことを悔やむ。

 今回は焦りもあってかダメであったことに一層悔やんでいた。


 実はロカリアから、誰が先に柄池にキスできるか勝負を持ち込まれていたのだ。

 ルールは挑んでいるときは邪魔をしないようにすること、自身が挑んでいるときは彼女が、彼女が挑んでいるときは自身が、だ。


 他に決まっていることとして

 ・挑む回数は特に決めてはいないが、皆の邪魔にならない程度に収めること

 ・ルールにない余程のことをされた場合は、随時話し合って決めること

 ・おやつの持ち込みは禁止すること

 これらが決まっていた。


「勇気が足りないと思っているけど、他にも何か足りないものがあるのかな……?」


 愛川の疑問、それににゅるじが触れて答える。


『だったら、にゅるじが無理やりくっつけるにゅすか?』


「あーそれはダメ! ルールがどうのよりも、それでの結果に納得いかないから!」


『そうにゅすか。難しい問題にゅすね』


 助けはいらないと愛川は阻み、にゅるじも愛川の手に触れながら納得を伝えていた。


「でも、気を遣ってくれてありがとね。にゅるじ」


『愛川さんの困りごとにゅす。にゅるじも気軽に使ってくれにゅす』


「他のことではもっと頼りにするからね。あーそうだ。そういえば最近、あれやってないから今日はあれをやろう」


 にゅるじに感謝をして、その後に愛川はやってないことを思い出した。


『あれとはにゅす?』


「私ってさ、サキュバスなのよ。普通は人間の食事をしてもいいけど……」


 にゅるじは疑問を浮かべて、愛川は説明をする。

 同時に回転してサキュバスへと変わった。


「人間の生命力もたまには摂取しないといけないのよ」


『人間の生命力……もしかして、その人間とは』


 愛川は生命力が必要と話すと、にゅるじは推測話をここで出す。

 にゅるじの予想通り摂取するのは柄池からで、無意識の中に入って生命力を摂取するのだ。


「ええ、そうよ。でも、柄池君の明日の行動に支障がないほどにだから、大丈夫よ」


『なら安心にゅす。にゅるじはかなりの量を摂取するかと思ったにゅす』


「私は大丈夫なのよ。まあ、他のサキュバスの摂取しないといけない量は私以下や私以上と様々ではあるけどね」


 にゅるじから安心したと伝えられてから、生命力の摂取について愛川が語った。

 ちなみに姉二人も誤差はあれど、愛川とほぼ同じ摂取量だ。

 話によれば、一年で少量の摂取でもよければ、毎日摂取しないといけないサキュバスもいるとのこと。


 柄池もまだまだ寝ているが、そろそろ動いた方がいいだろう。


「というわけで、柄池君が眠っている今がチャンスなので……行ってきまーす」


『いってらっしゃいにゅす』


 愛川は柄池の中へと行くと話して、にゅるじは体の一部を振って出迎えとする。

 そして、愛川は柄池の前で小さく飛んだ後、徐々に透明化していき消えた。




 愛川が現れるは草木のある空間で奥に川も流れていた。

 その流れる水も、清涼感のある透明な物であった。

 ただ、奥の空間は白だけで、そこには何もない。


「よし、柄池君の無意識の世界へと到着」


 愛川は柄池の無意識の世界へと足を付けた。

 柄池の世界であるが、ここに柄池の存在はいない。


「無意識の世界といっても、柄池君の意識からかなりかけ離れたところだけどね」


 辺りを見渡して、愛川は柄池以外の人がいないことを確認する。

 柄池のみに何か起きた場合でも、ここならば愛川の存在を認知することはできない。

 そうして、愛川は川の方へと歩いて行った。


「この無意識の世界から湧き出る水に浸れば……」


 呟きつつ愛川は川の中へと入っていく。

 川の深さは足首までが入る深さであった。


 その川へと愛川は身を投げ出す。

 無意識の世界でもあるので、底にぶつかった衝撃は全くない。


「んー、この世界に入って生命力を得るのは初めてねー。味もちょっと違う感じ」


 川に全身で浸って柄池の生命力を摂取していた。

 この川こそが柄池の生命力であるが、この川は生命力があふれ出たもので柄池の生命力のすべてではない。

 例えこの川のすべて飲み尽くしても、柄池に大きな問題がないほどにだ。


 しばらく愛川は浸った後に呟く。


「もっと柄池君の意識に近づけば、得られる生命力も多いのだけど……それは、もっと心の距離を近づけてからだし……」


 愛川は更に出た欲を言葉に出す。

 今回はこれでも満たせるが、生命力はもっと欲しいというのも事実である。

 他の男性よりも柄池の生命力は愛川にとっても特別ではあるからだ。


「それはその時が来たらよ! まずは生命力も得られたし、次こそは柄池君にキスを!」


 愛川はまず見える階段を上るべきと拳を握りつつ、次の目標を言葉に出した。


 十分に生命力を得てから愛川は柄池から出て、柄池が寝ている間に就寝につく。

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