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4 ゴブリンはポーションビンの中に入りますか?

 柄池は愛川のゴブリンポーションビン入れの提案を結局試すことにした。

 ゴブリンもまた嫌がっている様子はなかったので、スムーズに行った。

 この試行の結論はこうなる。


「上手く行ってよかった。これでみんなで通れるね」


 愛川は試行がうまくいったことを呟く。

 まさかの結果、ゴブリンがポーションビンに入ってしまったのだ。


 やったことは実に素直、ただ、ポーションビンを被せたらゴブリンが小さくなったのだ。

 結果、彼女がゴブリン入りのポーションビンを持ち歩いていた。


「おらもだ。まさか、ポーションビンの中でこの町を見れっとは思わなかっただ」


 ゴブリンは驚きを話す。

 ポーションビンの中に小さくなって納まった状態で。

 そのおかげで今はゴブリンが入れない街を柄池と愛川が歩いていた。


 その町は人通りが多く、剣を背負った戦士、杖を持った魔法使い、世界を冒険しているような人も多い。

 人通りの中にゴブリンが紛れていても、他の部外者には気付かれてもいなかった。

 あと、何故かゴブリンの着ぐるみをしていた人もいたが、そこはあえて見なかったことにする。


「よろしくね。石垣さん」


「ああ、頑張るだ」


 愛川は移動しつつ挨拶をして、石垣と名付けられたゴブリンも挨拶をする。

 石垣と名前が付いた理由は、愛川のバイト先の常連に石垣という人がいるのだ。

 その石垣がこのゴブリンに似ているから、名前が付いた。


 どことなく現実世界の石垣に謝るべきと感じた。

 そのやり取りと先ほどからの経緯に柄池は感想を呟く。


「ホント……異世界ってすごいね。何が起こるか分かんない」


 柄池は疲労も漏れるような感想を呟いた。

 疲労の原因は驚きであろう。

 ただ、かなりいい方向で進んでいるので、それについて柄池は続けて話す。


「ま、こんな格好だけど、とりあえずこの町を通れて助かった」


 通行できたことに柄池は安堵の息を言葉と共に出す。

 元の世界の服ではあるが、救済者の腕輪もあってかこの町の通行許可も出た。

 順調な旅と言えよう。


 そこで、店から男性の声がかかる。


「お? 噂になってる救済者様がこんなところにいるとはな」


 酒場の男性、そのいかにも酒場の親父という、いかつい風貌の男性から声がかかる。


「あ、はい。そうですが」


「ちょっと話を聞きたいんだよ。聞きたいことがそっちもあるなら話すよ」


 柄池が答えると、酒場の男性から話の提案が来た。




 酒場の男性は店長だったようで、柄池は酒場に入って話をしあった。

 現実世界で起こったこと、あと友人がよく寝坊して、柄池が起こしに行っていることも店長に話した。


 その話が気に入ったのか、話の礼としてこの世界の服を彼が渡してくれたのだ。


「ありがとうございます。ここに来たばかりなのに、まさか服と装備まで譲ってもらえるなんて」


 柄池は礼を店長に言う。

 店自体は小さかったが、客の入りもある方で、店員の忙しない歩みと木で出来た床が音を奏でている。


「ははは、気にすんな。実は貰い物だったけど、使い道がなかったからな。冒険する奴らの初めての装備で悪いな」


「いえ、これでも十分です。武器も貰えたのはありがたいですから」


 店長は悪いと話すも柄池は十分と返した。

 お互いに初対面だが、これだけでも十分な厚意である。

 そして服を貰ったのは柄池だけでなく、愛川もだ。


「柄池君、見て。私もこれでらしくなったよね?」


「ああ、愛川さんもこの世界の人らしさが出てきたよ」


 愛川は服をこちらに見せて、柄池は肯定の言葉を返す。

 彼女の衣装はロングスカートからミニスカートへと変わったのは意外であったが。

 また、武器は柄池には剣、愛川にはナイフを、だ。


 と、そこで食器を落とす音が響く。

 付近の男性客が落としたようだ。


「あ、私が取りますよ。待っていてください」


 落としたであろう客の男性が残念を顔に出すと、愛川が言葉で反応する。

 食器は愛川の近くなので、彼女は膝を折って上半身を曲げるのである。

 柄池はその光景に言葉が出た。


「あ……」


 柄池はその光景を見てしまう、愛川の後ろから。

 あんなことをすれば、彼女のミニスカートは尻も覆いづらくなる。

 そして、スカートの中の布も。


「よし、とれた。今店長さんに渡しますからー」


 愛川の渡すとの言葉。


 だが、そこで柄池は目をそらした。

 そこから先は愛川に悪いと感じて。


「……」


「店長さーん、今落としたもの渡します」


 柄池が無言の中、愛川は食器を渡して、店長から礼を伝えられる。

 彼女の姿勢も戻していて、気分替えとして柄池は話を振った。


「えっと、愛川さん。店長さんの話は分かった? 分からなかったら聞いていいよ」


「確かこの国って、主要都市が四つになっていて、ここは水の都市の勢力下なんだよね」


「そう、あと、次の東の町も心配していた救済者への信頼ならおそらく大丈夫だって」


「じゃあ、大丈夫そうね。順調に次の町へ行けそう」


「次の町もそれほど時間がかからないからね。道も真っ直ぐだし」


 大丈夫との愛川の言葉に時間の問題もないと柄池は語る。

 この話も店長のおかげで、この世界のことも少し分かった。


 ただ、それと同時に柄池は店長に悪い気もしていた。

 短い間に気前よく色々親切にしてくれたため、時間をかけると他にも物を貰ってしまいそうで。


「店長さん、色々教えてくれて、ありがとうございます。あと、大した話も出来なくてすいません」


「はっは! 気にすんな、柄池君よ! これからたくさん大した話が出来るようになるんだろ? 出来る話が増えたらそん時にまた来てくれよ!」


「では、俺達はこれで。次の町へ行こうと思います」


「おう、達者でな。救済者の卵さん達よ!」


 柄池は謝りと別れを告げて、店長はまた来てくれと挨拶をしてくれた。

 それから柄池達は店を出て、東の方へと進む。




 柄池達と別れた後に店長は一人呟いていた。


「おっと、この国の名前について言うの忘れてたな……」


「まあいいか、どうせ、いつか分かるよな」


「この国の名前が日本だってことは。おう、お前さん。飲みっぷりはいいが、ちゃんと金は払ってくれよ」


 呟きつつ、店長はこう客と会話もしていた。


「あ? 奥さんのことか? うるせえ、聞くな。他にきれいな女がいるのが悪いんだよ、ったく……」


「なんだって? 救済者の行った町に例の騎士が出没したって!? 噂って言ってもあの騎士と救済者がぶつかったらやばいことになるんじゃ……?」

*石垣と酒場の店長のステータスを設定場所に公開します

酒場の店長はちょっと公開します

名前:酒場の店長


耐久力:100,000

防御力:∞

戦闘経験力:500,000


その他、称号など

称号:全ての魔法を受けし男

説明:奥さんが凄腕の魔法使いなので、制裁としてすべての魔法を受けてしまう。

でも、制裁を受けても一向に浮気癖を治さないこの店長が悪いのです。

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