5 貧乳は戦闘の役に立つ
「んほー!!」
ミスカは細い棒になるかの如く声を上げて、体全てを真上に延ばすことで矢を回避する。
愛川は矢を見る様子もなかったが、にゅるじが矢に向けて防壁を貼ってくれたおかげで、矢はにゅるじが受け止めてくれた。
そして柄池は。
(奇妙だと思っていましたが、この算段あっての動きでしたか)
「俺だけだったら避けることもできなかったよ、ライオロス。本当に助かった」
柄池の中にいるライオロスも動きに奇妙を感じていたようで、柄池は感謝を述べる。
彼をすぐさま憑依させて、剣で矢を防いだのだ。
矢を回避したミスカはホッと一息をして、膝をついていた。
「回避するたびに私が貧乳であったことを感謝するです。胸が大きければ刺さっていましたです」
ミスカは一息をしつつ、自身の貧乳に感謝をしていた。
実際に矢は胸の方をかすったので、彼女の言う通りであった。
もう一方で愛川はにゅるじの方にようやく気付いたようだ。
「あれ? にゅるじの持っているものって、まさかスカイフィッシュってやつ?」
「違うから、愛川さん。矢を撃たれたんだ」
愛川の鈍い反応に、柄池は突っ込みを入れる。
矢の飛んできた方向を見ると、三人のオークたちが弓を構えて草木の陰にいたのだ。
それだけならまだよかったが、フェストスをさらった人物の周りには6人のオークが剣や槍の武器を持ってもいた。
さらった人物は安全を確認したのか、フェストスを連れて奥へと行ってしまう。
「待て!」
柄池はそう言って進もうとするも、オークの二人がこちらに槍を突き付けて立ちはだかる。
これで、フェストスの足掛かりは消えてしまい、こちらはオーク達を迎え撃たないといけなくなった。
「まずはこっちを何とかしないと、か」
「柄池さん! お願いしたいです、援護をです! よろしいですか?」
「え? とにかく分かった!」
ミスカの援護要請に柄池は了解する。
彼女は目を閉じて、呟き始める。
集中するための準備のための援護だろう。
それを許さじと二人のオークは剣を振りかぶってミスカへと向かう。
すぐに柄池は移動して襲ったオークに立ちふさがった。
「ごめんね! 集中しているの邪魔されるって精神的にもきついんだってね」
槍を突いてきたオークの攻撃を柄池は言葉と共に弾く。
その後に柄池は片方のオークを剣で受け止めて、もう片方には足蹴りで突き飛ばした。
飛ばした方には槍のオークが二人いて、その二人は飛ばされた方を受け止めてよろめいていた。
ミスカは無事集中しているようだ。
そこで、柄池のスマホが鳴り始めて、スマホをとりだした。
「ライオロス! スマホ出るんで戦闘よろしく! はい、もしもし、柄池ですが」
「戦闘しつつ電話ですか、柄池さん。ともかく、私を召喚して頂きたいですわ。よろしいでしょうか?」
「ああ、そうだね。了解!」
ロカリアの突っ込みながらの要請に、柄池は好機と判断をしたうえで承認する。
召喚方法も確認していたので、柄池はその確認した手順に従って、画面に触れていく。
剣のオークはその様子の中で突きを放とうとするも、ライオロスに任せてそれを回避して、逆に突きのカウンターをこちらから仕掛ける。
剣のオークの一人は命中して、倒れていくのであった。
「柄池君! こっちはオーク二人の動きを止めているから大丈夫!」
「そっか、ありがとう! 愛川さん!」
愛川はオークの動きを封じたと話して、柄池は礼を言う。
うつ伏せに倒れたオークを見ると、各々の足首ににゅるじが絡まっていて、にゅるじが転倒させた様子が見て取れる。
「よしです! いけるです!」
「頼んだよ! ミスカさん! 集中した分の成果見せてくれ!」
「当然です! 今から風の魔法をお見せしますよです!」
柄池からの声にミスカは風の魔法を出すと宣言した。
その言葉の後にミスカの周辺に風が巻く。
ただ、まだまだ妨害の希望を抱いていたのか、槍のオークの一人がミスカ目がけて突っ込んできた
「おっと、それはもう遅いよ」
柄池はオークへの注意と共に剣で斜め下に槍を弾く。
さらに真上に飛んで、勢いを殺せず突っ込んだオークに蹴り下しを当てる。
当たった槍のオークは受け身をとることには成功した。
弓を持ったオークを見ると、すでに三人は弓と矢を構えていてミスカを狙っていた。
柄池からの注意が無意識の言葉として出ようとする。
「ミスカ! 矢が来る!」
「ご心配なくです!」
矢が向かってくるとの注意を柄池がすると、ミスカは風を纏いながら問題ないと話す。
直後、構えた矢が飛んで行く。
「行くですよ! 風魔法、ダブルウィング!」
弓のオークに向けて両掌を突き出して、魔法を唱えた。
手の平から二つで一組の翼のような風の刃が飛んで行く。
向かってきた矢は一組の風の刃に触れることなく裂かれてしまい、三人のオークへ向かう。
「「「うあがぁっ!」」」
一組の風の刃は三人のオークへ命中して、後ろへ勢い良く飛ばされる。
更には弓も弦ごと裂かれて、武器としても使用できなくなったのだ。
これにて弓のオーク三人は無力化されたことになる。
柄池はひとまずの安心をして、言葉を出そうとする。
「あと、こっちも遅かったと言っておこうかな」
柄池は光るスマホを手に呟く。
その下で、槍のオークは再度柄池目がけて槍で突こうとしていた。
その時
柄池のスマホが広範囲の光を放つ。
強い光に槍のオークは手で顔を覆った。
そして強い光はスマホから弧を描くように地面に降りる。
その光の中で二つの剣が横に払われて、光が四散していった。
「これが召喚ですわね。結構強い光で、目が眩んでしまいそうですわ」
出てきた光が消えて、中から出てきたロカリアは言葉を出した。
彼女は二つの剣を両手に持つ。
続いてロカリアは告げた。
「では、柄池さん。愛川さんと一緒にフェストスさんを追って構いませんわよ。お急ぎでしょう?」
「いいのかい? ロカリアさんに任せてしまっても」
「構いませんわよ、それくらい。ミスカさんも残ってもらう予定ですので」
柄池が聞くと、ロカリアはこの場を引き受けると話した。
会話の中で槍のオークは彼女目がけて、槍で突こうとする。
「分かった。任せるよ」
「承知いたしましたわ」
柄池はこの場をロカリアに任せる。
同時に、彼女は槍のオークの攻撃を避けて、片方の剣でオークを切った。




