4 オークの村で筋肉好きエルフに救済を
柄池は話に乗り、助けてもらいたいというエルフの女性の元へと向かう。
エルフの女性はミスカと呼ばれていて、そのミスカの滞在する建物へと立ち寄る。
建物は木造で小さいが、居間を切り出して取り付けたような室内で、清掃もよくされていた。
テーブルを囲う少数の椅子もあって、お客様専用の室内とも言える。
「あなたが救済者様ですか? 私がミスカ・シギレデリです」
ミスカは座って自己紹介をし、柄池が応対した。
「一応、ですね。この村では偽物扱いで、あれですが」
「偽物だろうとかまいませんです。助けてくれるのであれば文句はありませんです」
柄池は一応と話して、問題ないとミスカは変な敬語で対応した。
変な言葉だが、見た目は男女をひきつけそうなかなりの美人である。
アイドルとして売り出せば確実に大勢のファンは付くだろう、それくらいに。
「話は大まかには聞きましたが、好きな人がいてさらわれたと。詳しく聞かせていただけないでしょうか?」
「はいです。その好きな人がオークなのですが、少し前にこの辺を縄張りとするオークの集団にさらわれまして、それで助けてほしいのですが」
「オークが好きと……」
「私、細いエルフの男性よりも、筋肉の鎧を纏ったような筋骨隆々の人がタイプなのです」
柄池は意外な表情で話すと、ミスカがオークのような人がいいと話す。
ロカリアはその話に反応した。
「あら、私と話が合いそうですわね? 力のある方は素晴らしいですし」
ロカリアが趣味が合うとスマホを通じて話す傍らで、柄池は自分のことを考える。
(あれ? じゃあ、筋肉のない俺ってどういう扱い? お世辞にも俺、筋肉に自信ないけど)
柄池はこう心の中で呟いた。
ボディビルダーとはかけ離れた肉体の自分にロカリアから好かれる理由がいまいちつかめないでいた。
今はその考えを置くとして、気持ちを改めて柄池は言葉を続ける。
「ともかく、オークの集団からその人を取り返せばいいのですね?」
「はいです。好きな人ですが、フェストスという名で、首に緑の宝石のネックレスをかけていますです」
「なるほど。場所もオルトスさんから聞いているし、早速行った方がよさそうだ」
「あ、私も行きたいですが、よろしいでしょうか? これでも冒険者ですし、戦闘も少しはいけるですよ」
「え? 心強いですけど、相手は人さらいをするオークですよ。大丈夫ですか?」
「大丈夫です。ここで待っているだけでは助けられないとも分かっていますです」
柄池が話を進めると、ミスカが同行をすると話す。
ここでロカリアは補足のためにと言葉を出した。
「少なくとも、女性を優先的に狙うことはあり得ませんわよ。オークの法律では他種族の女性にいかがわしいことをすれば、人をさらうよりも何倍も重い刑罰がされますから」
「そっか。少なくとも俺と同じように危険度があるとみていいわけか」
「ですわね。愛川さんにも言えますし、狙われないとも言えませんが」
柄池は理解を話し、ロカリアは愛川も同じと話した。
「相手がどれくらいの規模かは分からないけど、正直戦力は心許ないからな。分かりました。危機を承知で手伝ってもらいます」
「はいです。私も同行しますです」
柄池は同行を許可して、ミスカも再度同行すると話した。
依頼者を危険に巻き込むのは心苦しかったが、戦力としては現状不安であったので、やむを得ず同行を許可する。
こうして、一時的にミスカも仲間として加わる。
柄池達はミスカを加えて、オーク集団のアジトへと向かう。
その途中の草木の茂る道を歩んでいる最中だ。
「みんな気を付けてね。あちらさんも攻め込んでくることは想定して動いているから」
「はーい」
柄池は警戒を促して愛川は返事をする。
さらってきたからにはあちらも警戒の一つはあるだろうからだ。
その中でロカリアは言葉を出す。
「そういえば、ミスカさんはそのオークのどこに惹かれたのですか? 気になりますわね」
「はいです。私は力強い肉体にも惹かれましたですが、何より魂もマッスルだったので惹かれましたです」
「へえ、その魂もとは。すごいですわね」
「フェストスさんはすごいですよ。もっともっと力強くなる人なのです」
愛川が持ったスマホからロカリアは評価の言葉を出して、ミスカは頷きつつ話す。
会話を見ていて申し訳ない様子もあるが、ここは言うべきと柄池は口を開く。
「会話するのもダメと言わないけど、あちらさんもこっちの様子に気付くかもしれない……ん? なんだ?」
柄池が注意すると、人の声でない何かを耳にする。
近くで誰かが草木を分ける音。
その直後にある人物が横の茂みから出てくる。
「助けてくれ!」
「フェストスさん! ここまで逃げたのですか?」
出てきた人物、今回救うべきフェストスが慌てて助けを求めて、ミスカも声を出して反応する。
フェストスは続けて説明をする。
「ああ、なんとかここまでこれたんだ……って、うわあ!」
が、そのフェストスの説明の途中で急に元来た道へと戻されてしまう。
誰かに引っ張られたように。
ミスカは手を伸ばす。
「フェストスさん!」
「追わないと!」
ミスカが声を出し、愛川は追う必要性を声に出す。
二人は直後にフェストスが連れていかれた道へと向かっていく。
柄池もここで追わなければいけないと判断して、ミスカたちに続く。
細い道を走っていくと、先にはフェストスが同じ体格の人物に連れ去られている光景が映る。
その人物は顔も体も隠す布を纏っていて、布がどういう人物か判断するか難しくさせる。
(偶然なのか……? あそこでフェストスさんが出てきたのは……)
柄池は心の中で引っかかりを感じていた。
あのタイミングでフェストスが出てきたのが偶然だと考えればそうなのだが、一連の出来事が急な上に彼と会うのにこちらとしても都合が良すぎる。
そこが引っ掛かりを生んでいた。
そのような考えの中で走っていくと、草木がない開けた空間が見えてきて、フェストスと柄池達を含めてその空間へと入っていく。
すると、その中で連れ去った人物がその空間で立ち止まる。
「やいです! フェストスさんを返しやがれーです!」
ミスカの訴えを聞いても、連れ去った人物は耳を貸す様子もなかった。
それどころか、フェストスを抱えたまままだ立ち止まっていたままだ。
「なぜさらうような真似をした? 答える気もないか?」
無駄だとは思うが、柄池は期待の薄い質問する。
答えてくれればとの考えをもってだ。
すると、フェストスは何もしゃべる様子もないが、なにやら視線をそらして不安げな様子を見せていた。
その瞬間
柄池達の横から矢が飛んできたのだ。
*補足
ちなみに今回出たオークの法律はオークの風評被害の挽回のために施行したもの
それくらいの覚悟でないと悪いオークの印象を取っ払えないと判断したため
刑罰はいかがわしいことをしたオーク自身とその親近者が奴隷階級へと落ちる
Q:オークが男にいかがわしいことをするとどうなるのっと?
A:女性にやるよりかは刑罰は軽めになります。それでも罰は罰ですが。
……怪しいことは考えていませんよね?




