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3 救済者とこの世界について

 柄池はゴブリンから救済者の話を聞いていた。

 そこで別の話にそれて、あちらが驚き声を出すところが今の状況だ。


「うへあ! 驚いちまっただ、まさか、似た世界から来るなんてなあ」


「ははは、俺も元の世界と似ているところがあるなんて思わなかったよ」


 ゴブリンの驚きに、柄池は笑いつつ驚きもあったと話す。


「この世界もモンスターが人間の姿に化けられんだ。んで、人間に化けたモンスターは大抵の場合恐れられてな、その人間がモンスターだとばれっと、迫害されることもあんだ」


「そう、それも俺の元の世界でも同じだったんだ」


 ゴブリンの説明に柄池は元の世界もそうだと話す。


 ただ、人間の姿の他にも化ける形態もあるかもしれないとも聞く。

 そこは元の世界と違った部分だ。

 柄池の世界は人間に化けるモンスターや妖怪はあれど、剣や服などの無機物に変えられるモンスターは聞いたことがない。


「ただ、大抵の場合は受け入れられねえけど、実は受け入れられている国とか村もあるし、実は国の人間全員がモンスターに化けていたってこともあるって話だべ」


「反応も国や村によって様々と」


 聞いたゴブリンの話を、柄池はまとめた。

 人間に化けるモンスターが厄介というのは人間視点からでも理解はできる。

 いるという噂話だけでも、疑心暗鬼を招くことは厄介だろう。


 そこで愛川が言葉を出す。


「で、この腕輪を持った私たちは救済者と呼ばれる人間だって話ね」


 愛川は手に付いた腕輪を見て呟く。

 ゴブリンが救済者と判断した理由がこの腕輪だ。

 世界の話だけでなく、救済者の話も聞いて、頭に入れているのだ。


 ゴブリンはその話の後、頷いて語る。


「で、救済者ってのは世界を救うために現れた異世界の人間ってわけだあ」


「話によると救済者って魔王を倒す以外もやったわけなんだね」


「んだ。おらは救済者だって信じるだべ、おらの友人のスライムを助けてくれたしなあ」


「助かるよ、その言葉」


 ゴブリンの信頼の言葉に柄池は助かると話す。


「あと、その救済者の腕輪を見ても他の人間は信じてくれるか分かんねえと思うだ、おらは」


「え? どうして?」


「そりゃ今まで、その腕輪を付けた偽救済者がいたからだよ。そいつらがいなければ、きっと多くの人が信じてくれっと思うのだけどな」


「凄そうな地位だし、確かに偽物を名乗る人もこれで出てくるか。これ見て信じてくれるといいんだけどな」


 ゴブリンからの偽物の話に柄池は納得を述べる。


 地位の高い人と偽って振舞う話はよく聞く。

 現実世界でもあるし、柄池の世界ではキツネや狸に化けていたという話も聞いたことがある。


 この腕輪は万能アイテムとまではいかないようだ。

 残念ではあるが、地位の高い人と見てくれる人々がいるだけでも、感謝したいアイテムではある。


「あと、救済者様におねげえがあんだけど……いいか?」


「何か?」


 ゴブリンからのお願いに何かと柄池は聞く。


「実はここから東の二つ先の街に行きてえんだ。おらの持っているポーションをその街に持っていきてえんだ」


「ああ、それくらいなら」


「でもな、一つ先の街から先はゴブリンが通れねえんで、おらは届けられねえ。しかも、一つ先の町は道からしてどうしても通る必要があるんだべ」


「じゃあ、それを俺たちが届ければいいんだね?」


「それも多分ダメなんだ。とどけてえのがゴブリンだし、救済者様が持って行っても受け取ってくれねえと思う。そのゴブリンは用心ぶけえし、おらがポーションをもっていかねえと届けらんねえんだ……」


「そこが悩みと……どうするか?」


 願いと悩みをゴブリンから語り、柄池はどうするかと呟く。

 お願いを聞いた以上は何とかしてあげたいが、困難が様々で何かと難しい。

 ゴブリンは町を通れない、渡すには柄池からじゃダメ。

 その二つをクリアしないといけない。


 ここで愛川が声を出す。


「柄池君」


「えっと……何かな? 愛川さん?」


「これ、どう?」


 柄池が愛川の方へ向くと、彼女はある物をもって解決策を示す。

 持っていたのはポーションのビンであった。


「……これでどうやって?」


「ゴブリンを入れて運ぶ、このポーションビンで」


 柄池の疑問に愛川は自信を込めて話す。

 ポーションビンは明らかにゴブリンの何倍も小さいのに。


「で、どこから持ってきたの? それ?」


「川の近くで落ちてた。にゅるじ用とは別に確保したし、これもちゃんと洗ったよ」


 柄池の再びの質問に愛川は解答する。

 この顔は本気で運ぼうと考えているようだ。


「えっと、まあ、急に異世界転移なんてことも起きたから、何が起こるか分からないけど……」


 柄池は一応の可能性を話しながらも、笑顔に苦みを感じていた。

 まさか、本当にゴブリンを入れて運ぶつもりだろうか。

 さすがにそれはいくら何でもと自身は無茶を感じていた。

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