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2 オークの村へ。あと、いけないことは考えちゃだめだぞ

 柄池達はオークの村へと向かうこととなった。

 その中で愛川はマトスと移動しつつの会話をしていた。


「そういえば、オークってさ。お茶をよく飲む種族なの?」


「いや。お茶をよく飲むのは俺だけだね。他のみんなは果実を絞ったジュースとかよく飲むよ」


「マトス君はそんなにお茶が好きなんだね」


「そうだね。でも、ジュースが嫌いってわけでないよ」


 愛川の飲み物の話にマトスは答えていた。


「どんなお茶が好きなの?」


「好きなお茶はね。あれ、硬派の男茶っていうお茶、土の都市で作られたお茶だよ」


「おお、名前は意外な感じ」


「あれは渋みがすごいんだよ。体中に渋みがいきわたる感じで、俺の友達は一口でダメだと言い出したけどね」


「おお……子供にしては意外な選択」


 マトスが好きなお茶を話していると、愛川は以外と驚く。

 柄池の友人も緑茶は好きなので、意外とその友人と話が通じそうな子供かも知れない。

 愛川に至ってはお茶を飲んでいたような様子もないので、話が合いそうにはないと見る。


「そういえばさ、私、あなたに別の呼び名を付けたいんだけどいい?」


「えっと、なに?」


「モリリモって名前を私は呼びたいかなって」


「あ……そ、そうなんだ」


 愛川からの呼び名の提案にマトスは困った顔をする。

 柄池は彼の困惑に助け舟を出そうと考えて、行動する。


「えっとね、愛川さん。マトスって名前があるから、その名前で呼んだ方がいいと思うよ」


「ええ……そんなあ……」


「あと念のため言っておくけど、マトス君を契約しようと考えるのはダメだからね?」


「え? いや、そんなことは考えてないから大丈夫ですよー……」


 柄池は釘をさす言葉を使うと、愛川は視線を外して話す。

 この行動から考えるに、間違いなく契約しようと考えていただろう。


 会話をしている途中に家が密集するところを柄池は視界に入れる。


「あそこだよ、オークの村は。トカリホって村だよ」


「あそこか。顔見せ程度で済ませるからね、愛川さん」


 マトスはそう言うと先頭を走って、柄池は滞在は短いことを話す。


「はーい」


 愛川はそれに肯定の言葉を出した。

 柄池と愛川はマトスの後について行き、村の中を歩いていく。

 ただ、村人からの視線は今までとは違った。


「……ん、なんだろ?」


 柄池は視線について違和感を感じる。

 一言でいえば、いい印象は持たれていない。

 迎えられてないとも言えるか。


 その視線に愛川は不安の顔つきでいた。


「なんかやだな……」


「気を付けてね、愛川さん。何かあったらめぬえもんと一緒に村の外へ逃げて」


「うん」


 柄池の忠告に愛川も頷く。

 何かあれば、自身が厄介払いを引き受け、彼女は逃がす心積もりだ。

 無邪気に先頭を走っていたマトスはある家で止まっていた。


「ここだよ、俺の家は」


「ここか、割とでかいけど、お父さんは偉い人なのかな? それとも裕福なのか……」


「ああ、俺の父ちゃんは村長なんだ。あれ、言ってなかったっけ?」


「あ、それは聞いてなかった」


 父が村長であるとマトスは話すと、そこは聞いてないと柄池は呟く。


「じゃあ、入っていいよ」


「お言葉に甘えて」


 ドアを開けてから家に入るマトスに、柄池も同様に入っていく。

 愛川はめぬえもんから降りて、村長の家に入る。


 何かあるといけないので、彼女は柄池の後ろに配置するように移動させた。

 狙われるのは彼女の可能性も高い、ならば、逃げやすい様に気を使った方がいい。

 マトスが何か企んでいるとは考えたくはないが、何かあってからでの対応だと、そのままよくない方に押し切られるのは困る。


 そうしていると、家の中で大きなオークに出会う。


「あ、父ちゃん、ちょうどいいところに……救済者様が来たんだよ、この村に」


「何? 救済者様がまたか?」


「救済者の持つ腕輪もちゃんとあるんだよ。間違いないって」


 父が疑問を浮かべると、マトスは間違いなく救済者だと話した。

 言葉に引っ掛かりがあった、またという言葉に。

 父はこちらを警戒のまなざしで見ている。


「そっか、マトスはそういえば救済者様を見てなかったよな」


「え? どういうこと?」


「マトス、お前は下がっておくんだ。大丈夫だとは思うが、念のためな」


 疑問を浮かべるマトスを父は後ろに下げてた。

 マトスを離れたところに移動させてから、マトスの父は柄池に向けて言葉を贈る。


「どうも、マトスの父、オルトスと申します」


「いえ、私は柄池という者です。初めまして」


「で、早速ですが、村には何か用があって?」


「要は特にありません。ただ、マトス君がぜひ立ち寄ってということで、顔見せ程度なら寄ろうかと」


 マトスの父、オルトスから用件を聞かれ、素直に柄池は話した。


「そうだよ、父ちゃん。俺が来てって話したら、救済者様が寄ってくれるって」


「そうか。分かった」


 証人としてマトスもそうだと話し、オルトスは理解を示す。

 続いてオルトスは柄池に向けて言葉を出そうとする。


「で、あんたたち二人は、この村で変な目で見られなかったかい?」


「……えっと、まあそうですね。ただ、この腕輪が珍しいものだからかと思いましたが」


「結構丸い言葉でいうもんだな、あんたは」


 柄池が出来るだけとげがない言葉で話すと、オルトスは察したように柄池の言葉について話す。

 彼は険しい顔から悩む表情を見せてから、言葉を続ける。


「まあいい。あんた、こんなことやっている割には、悪い男には見えないな。だが、敢えて言わせてもらおう」


「えっと、何をでしょう……?」


 前もっての言葉をオルトスは出すと、柄池は言葉も出しつつ身構える。

 良くない言葉が待っている。

 その言葉の内容はある程度予想がつくものを、だ。


「あんたたち、偽物の救済者だろ」

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