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18 償いとロカリア王女の今後

 夜から時間が過ぎて、朝が来た。

 朝食を摂って身支度を整えてから、ロカリア王女は柄池達からの要求で話を進めた。

 その内容をかいつまむとこうだ。


「本当によろしいのですか? 金銭の工面、食料の譲与、愛川に対する傷の補償。それをこの規模で済ませて」


 話の中でロカリア王女は要求の規模の小ささに驚く。

 これについては、柄池からの内密で構わないとの話があって、その話は目立たず、手短に済ませてくれた。


「金銭の要求は少額な上に、食料も一週間ほどで十分……さらには愛川さんへの補償もある物を渡しただけでもう十分と……」


 話の中でロカリア王女は驚きがあった。

 柄池いわく、いくら王女と言えど、必要以上の要求は悪いということで、ここで済ませた。

 あちらからの要求はこれで以上だ。


「驚きましたわね。倍以上の要求をされると思いましたが」


 その要求の話を済ませて、ロカリア王女は一人部屋で呟く。

 柄池は現在、愛川とともに都市を見ていくついでに、アイゼというスマホを改良した人への質問内容を考えるとのこと。


「さて、そろそろあの人も来る頃ですわね」


 そして今、この部屋でロカリア王女は人を待っていた。

 ドアを開けて、白いひげの男性が声をかける。


「ロカリア王女様。ご機嫌はいかがでしょうか?」


「ええ、悪くないですわね」


 エイローンから声がかかり、ロカリア王女は返事をする。

 彼こそが今回待っていた男性だ。


「救済者様方はどうなさいましたか?」


「ええ、話を聞いて気に入りましたわ」


 質問に対して、ロカリア王女は戦闘したことは黙っておく。

 エイローンという男は色々と気の抜けないことであったからだ。

 下手に余計なことをすれば、何をされるか分からない。


「おや? 私めは食べてしまってもと話しましたが、そこまでは気に入りませんでしたか」


「何を、そこまでするとは誰も言っていませんわよ」


「失礼。冗談が過ぎましたね」


 冗談をあしらう言葉をロカリア王女は出して、エイローンは頭を下げる。

 柄池については別の意味で肯定は出来るが、あえて言葉には出さない。


「全く。あなたという人は」


「ところでですが、これからはどうなさいますでしょうか?」


 ロカリアの言葉の後、ここで、今後の動向をエイローンから聞かれる。


「私も救済者と共に動こうと思いますわ」


「おや、驚きました。そこまでお気になるとは」


「ええ。なかなか面白い方々だったのでね。ところで一ついいかしら?」


「何でしょうか?」


「まさか、この私の決断……気に入らないということはないでしょうね?」


 エイローンが質問を受け入れる言葉を出すと、ロカリア王女は聞いておきたいことを直球で投げる


 この自身の言葉は探りの意味もある、柄池達を今回けしかけたことについて。

 事実、彼が紹介しなければ、自分は柄池達を見向きもしなかった。

 エイローンが何かの企みがあってけしかけたと言える。


「おやおや、滅相もございません。ロカリア王女様の判断を気に入らないという感情、私めは一握りもございません」


「あら、そう。ならいいわ」


 エイローンは質問に対して間を置かずに答えて、ロカリア王女はなら良しとする。

 質問との間に彼の表情は大きく変化なく、むしろこの決断を良しとする印象があった。


「同行ということは構いませんが、都市のことはどうなさるつもりで?」


「もちろん、都市をおろそかにはしないわよ。同行しつつ、私も指揮を執るわ」


「おや、どうやってでしょうか?」


「救済者の元へ即時召喚される契約のようなものを結んだのよ、アイゼさんのご協力もあって」


「ほほう、あのアイゼの協力を。救済者様の伝手ですかね?」


 ロカリア王女からアイゼの名を出すと、エイローンはやや驚くしぐさを見せて言葉を出した。


「あら、あのデュラハン城の町にいるアイゼを知っているのですわね?」


「存在は知っております。あのブラックパンドラと言われたアイゼは」


「なら、話は早いわ。アイゼさんがスマホというアイテムを改良して召喚できるようにしたのよ。しかも、すぐに城へと戻ることも可能よ」


「都市を指揮しつつ、離れた救済者の元へすぐ駆け付けるということも、これで可能と」


 ロカリア王女の説明にエイローンは噛み砕いた解釈を自らの言葉にする。


 彼が驚くのも当然だろうか。

 何せ、周りが恐れ入るほどの技術を持ちながら、話す技術が全くなかったことから誰とも会話が出来ず、アイゼはブラックパンドラと二つ名が付いたのだ。

 その人物との接触はエイローンも大きい出来事と判断しての反応だろう。


「そういう訳ですわ。これからも基本的に都市で話は出来るとだけは言っておきますわよ」


「おや、それは私めも好都合です」


「まあ、アイゼさんの協力がなければ、私は都市を発って完全に代行に任せてということになりましたし、まれには代行に任せることもあるかもしれないわよ」


「そうですか。私めが聞いておきたいことはこれで十分です」


 ロカリア王女は都市に残ったまま同行出来ると話して、エイローンは話を切り上げることを言葉にした。


「そう? ならば、私は準備も済ませておきますわよ。武器も召喚の時に転送されるようですので」


「どうぞ、準備を進めてください。私めはこれで」


 ロカリア王女は準備をしたいと話すと、エイローンは部屋を出ていく。




 城の通路で独り歩き、そのなかで足音をリズムよく奏でるエイローンがいた。

 白い清潔感と気品漂う通路の中で彼は一人呟く。


「これは面白いことになってきた。王女はこのままでいいとして、さて、次にあいつも動かしてみようかねえ……」

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