16 ロカリア王女、死す
柄池からの提案の後、柄池は召喚するための準備を試していた。
その方法は説明も聞けなかった上での準備で、柄池はとりあえずとロカリア王女の頭にスマホを接触させたのだ。
大丈夫かと愛川は見ていて不安にはなったが、召喚のための準備方法が分からない以上は何も言えなかった。
そして、愛川はその結果を目にする。
「やばい」
柄池からの一言。
それもそのはず。
「まさか、ロカリア王女がこれだけで倒れるなんて……死んじゃったわけ?」
柄池が再度呟き、愛川へ視線を送る。
「やばい」
「やばい、どうしよ?」
愛川もやばいと呟き、柄池も同じくやばいと呟く。
予想してなかった、ロカリア王女がスマホに触れただけで倒れるとは。
「もしかして、ロカリア王女、あの状態で生きているのもやっとだとか?」
「ちょっと待って! そんな状態だったの? というか、ロカリア王女があの時までHPが1として、このスマホってHPを1奪うの!? それも驚きですけど!?」
「ど、どうしよう? どうしよう!?」
柄池の混乱しながらの言葉を聞きつつ、愛川も困惑の言葉を出す。
そこで、彼のスマホから連絡が入る。
柄池はすぐさまその呼び出しに出た。
「えっと、もしもし?」
「あ、柄池君ですか? すごいことをやりましたね?」
「え゛!? その……すごいことと言われても、ぴんと来ないのですが」
電話からの抽象的な言葉に柄池は気まずそうに疑問を投げる。
愛川もスマホからの声の内容が分かった。
凄いことと言われると、ロカリア王女の件しか自身は思い浮かばない。
「このスマホにロカリア王女を入れたのがすごいってことですよ。第一号接続者がロカリア王女です」
「ええ!? スマホに入ったんですか? ロカリア王女が!?」
「そうですよ」
「そうなんですか……って、あなた誰なんですか!?」
「電話出る前に確認してくださいよ。私、アイゼです。スマホを改良したでしょ? 柄池君のを」
柄池の誰かとの質問に、スマホの声が名乗る。
スマホからの声はアイゼという男女か分からない人の声であった。
その人が柄池と愛川のスマホを改良したとは聞いている。
「じゃあ、ロカリア王女は今倒れているけど、元通りにはなるんですか?」
「ええ、言いましたよね? ユニバスティングチェックからのリンカーネーションエリアをダクティングして、カラドリチャージされるって」
「そういう説明しても分からないっても、俺言いましたよね? 本当にアイゼさんの説明が分からないから、こんな目に……」
「え? じゃあユニバスティングチェックをもう一度説明します。まず、パンデミックリリースシステムの説明からしますが……」
説明が分からないと柄池の話に、アイゼはさらに訳の分からない説明で畳みかける。
確かにこんな説明ばかりでは柄池もさっぱりであろう。
事実、愛川はアイゼの言葉が全く頭に残らない。
「アイゼさん、説明はいいですから。ロカリア王女と話は出来ますか?」
「あ、できますよ。お待ちを」
ロカリア王女との話を提案すると、アイゼはそれを受け入れてくれた。
少しして、ロカリア王女の声が聞こえ始める。
「あ、柄池さんですか?」
「ああ、ロカリア王女! 元気そうでよかったです!」
「一瞬驚きましたが、ここは快適ですわよ。スマホというアイテムの中かしら?」
「それは分かりませんし、正直、説明を求めたくはないです。本当に無事かどうかが気がかりでした」
ロカリア王女はスマホの中なのかと話し、柄池は分からないと答える。
彼の正直な心境告白にアイゼからの苦労が見え隠れする。
「あら、分からないということでしたら、私が聞いておきますわよ。聞く手段はこの中でもありそうですから」
「それはお勧めしません。あと、アイゼさんに話があるので、変わってもよろしいでしょうか?」
「はい、分かりましたわ。では、どうぞ。後そろそろ体の方へと戻りますので」
柄池が変わってほしいと話すと、ロカリア王女はそれを了承するとともに体の方へと戻るとも話す。
突然の出来事だったが、彼女も無事だと愛川は確信を得て、一息を付く。
「まあ、あいつが死んでないようで何よりね。そこは安心」
愛川はロカリア王女の無事に安心を呟く。
流石に死んだとなってはこちらも後味が悪い。
例え、気に入らない人物であろうと。
そのあとで、アイゼからの声が響く。
「はいはい、変わりましたよ。なにか?」
「えっと、色々分からないことは後でメールで聞きますので、それを伝えます。まさか、アイゼさんとの連絡経路が出来ているとも聞いてもいませんでしたから」
「あ、それは言ってませんでした。すいません」
「そ、そうですか……あと、一つだけ聞きますが、これで、ロカリア王女を自由に召喚できると考えていいですか?」
「そう考えて大丈夫です。ハイディーンポインティングを利用しているので自由に召喚してもいいです。時間が経ったら、マリアッチポインティングも採用しておりますから大丈夫ですし、カバネラルシュートインチが入っていますから帰り道なしでのノンデストロイシフトも可能です」
柄池からの質問にアイゼは肯定するとともによく分からない説明まで余計に付け加えた。
「また、よく分からない説明ですね……ん、帰り道ですか? ということは例えば、ロカリア王女を帰り道なしの転送目的で召喚も可能で、時間が経ったらそのまま元居た位置に帰ってもらうという召喚も可能なのですか?」
「おお、分かってくれましたか? その通りですよ、例えた話のことは二つともできますよ」
「憶測交じりで質問しただけです。それにしてもアイゼさんは凄いけど、本当に分からない人ですね」
質問にその通りとアイゼは答え、柄池はアイゼに対して一応の評価をした。
愛川は彼のすごいという話だけ聞いて、すごいという顔だけをしている。
「ありがとうございます。私もこんなスマホを見つけて、いじれたのは嬉しかったので本当に良かったです」
「そうですか、では、夜遅くに話してくれてすいません。そろそろ失礼します」
「また電話してもいいですよー。夜も基本的に研究してますからー」
柄池は電話を切ることを伝えてアイゼはそれでいいと話した。
その後に柄池は連絡を切る。
そして、ロカリア王女はゆっくりと立ち上がり始める。
「ああ、ロカリア王女。御無事でしたか」
「ええ、あちらの方はなかなか快適でしたわ。部屋まで用意されていましたから」
「まあ、とにかく……ロカリア王女も無事のようだし、召喚も出来るって話だからよかった……うん」
ロカリア王女は無事だと伝えて、柄池は安心を言葉にする。
突然のトラブルもあったが、今回の騒動はこれにて落ち着いたのであった。




