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12 モンスターの姿ってのは土壇場用です

 ロカリア王女は立った姿勢で愛川を見る。

 拘束していたにゅるじは衝撃を受けて、破片が四散していた。

 その破片は電流を纏っていて、空気に鋭い炸裂音を響かせる。


 状況として不味かったが、それと同等ににゅるじの状態も愛川は気になった。


「勘違いは困りますわ、人間の姿こそが本当の姿。こちらは力を開放した姿ですが、こちらは不都合も多いですの」


 ロカリア王女は先ほどの愛川の言葉に訂正を加える。

 続けて彼女は話を続ける。


「この姿を恐れる人々も多いですからね。その不利益分に相応しい力、ここで見せてあげますわ」


 そう言うとともにロカリア王女は手の爪をさらに伸ばした。


(愛川殿、来ます。油断せぬよう)


「ええ」


 ライオロスが警戒するようにと忠告をして、愛川もそれに頷くとともに声を出し


(は?)


 た、その瞬間、彼の声が愛川の心に響く。


「遅いですわよ」


 ロカリア王女はすでに距離を詰めて、爪で横薙ぎにする寸前であったのだ。


「嘘っ!?」


 愛川は驚きながらも寸前で、爪をナイフで受け止める。


(は、早い! もう少しで裂かれるところでした!)


 最もライオロスの言う通りで、反応が少しでも遅ければ爪で裂かれていたことは分かる。

 彼が憑依して動きを任せていなければ、まともに喰らっていただろう。


「逃げたらどうですの? この状況?」


 煽るようなロカリア王女の言葉。

 まずいことに爪とナイフのせめぎあい、それは愛川が押されていた。


「きゃあ! ……痛っ」


 せめぎあいの最中に爪の横薙ぎで愛川は飛ばされて、受け身もとれずに床へとぶつかる。


「どうですわ? 今回は私が簡単に接近できましたが、まだやるつもりでしょうか?」


「まだ、私が負けたと決まった訳じゃないでしょ!?」


「そのようですか。でしたら……」


 愛川がすぐに反論の言葉を入れると、ロカリア王女はそれを受け止め、すぐさま距離を詰めてくる。

 再びの爪での横薙ぎ、それにナイフで受け止めるも、再び押される状態。

 結果として愛川は爪で弾き飛ばされてしまう。


「うぁ!」


 声を出して飛ばされた愛川は受け身を取り、再び戦闘姿勢を立て直す。

 ここで、電気を纏ったにゅるじの破片が手に届く範囲にあると気づく。

 悩むことなく愛川は破片へと手を伸ばした。


 電気が愛川に流れるが、それでもとにゅるじに声をかける。


「んうっ! ……大丈夫!?」


『愛川さん? 無理してまでにゅすか……』


「不安だったから。こんなことになってたし」


『ごめんにゅす。でも、にゅるじはしばらく動けないにゅすけど、時間が経てば動けて元に戻るにゅす』


 愛川の心配の声に、にゅるじは時間が経てば元に戻ると話す。


「そっか、よかった」


 愛川はにゅるじの声に安心が生まれた。

 短い間ではあるが大事な仲間として安否が気になったことから、不安がなくなる。

 もしも戻る様子がなければ、自身の心に穴が開くくらいであった。


 ここでロカリア王女は疑問を投げかける。

 彼女は特に攻撃する様子も見せていない。

 余裕なのか、慈悲なのか、分からない。


「あら? 私を気にかけずにスライムの心配を。お優しいことですわ」


「悪い? あなたはどう見てるか分からないけど、大切な仲間なのよ」


「まあ、茶番は構いませんわよ。どうせ、勝負の結果は見えてますから」


 にゅるじは大切な仲間だと愛川が話すと、ロカリアは茶番と見ていることを話す。

 気に入らない言葉ではあった。


 だが、この間に一つ策が思い浮かんだことも事実だ。

 愛川はライオロスへと心の中であることを語りかける。


(分かりました。手はず通りに進めます)


 ライオロスは愛川の語りに理解を語る。

 再びこちらはロカリア王女へと言葉を向け始める。


「しかし、あなたも切り傷は付けられないのね? 仕返しに私の肩を切ることもできないなんて」


「……それはどういうことですの?」


「あなたは余裕ぶっているけど、大げさな物かもねってこと」


「あら……」


 愛川の挑発に目を細めて、ロカリア王女は言葉を返す。

 次に怒りの言葉を彼女は出す。


「なら、お望みどおりに肩を痛めつけてあげますわ……この爪で!」


 怒りの言葉をロカリア王女は出した。

 それは愛川の挑発に乗ったということ。


「まあ、私の肩を貫通なんて真似事、あなたには無理でしょうけどね」


 愛川は笑いつつ、ロカリア王女を挑発する。

 彼女の顔は険しくもなってきた。


 すると、彼女は脚に電気を纏い始める。

 空気を破砕させるように、さく裂した音を周りに散らす。


(愛川殿、来ます!)


 ライオロスの注意。

 きっと自信のある技で来るのだろう。


 愛川はそれをその場で留まって、構える。

 そして、攻撃は行われた、数える間もなく。


「がっ……はっ……」


 先ほどの攻撃以上の速さで距離を詰められ、愛川の両肩は爪で貫かれた。

 あまりの速さに自身の悲鳴さえも追いつかない。


「どうです? 私の爪で貫かれる感想は?」


「ええ……驚いたわよ。防御も間に合わないなんて」


 ロカリア王女の質問に愛川は正直に述べる。

 事実、ライオロスはできれば防御もするとは語ってもいたが、出来なかった。


 だが、両肩を貫かれることは愛川の計算通りであった。


「まさか……こんな安い挑発に、乗るなんてもね」


 痛みをこらえつつ、愛川は笑って告げる。

 早く動くロカリア王女の腕をこれで掴むことが出来たからだ。

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