2 戦えないなら、仲間になってもらえばいいじゃない
柄池は愛川とスライムと共に早速、踏み鳴らされて土だけ露出する道を歩む。
水場へと向かうためだ。
スライムは近くにあったポーションビンに入れて運ぶに至る。
川が近くにあったため、それほど移動に時間もかからなかった。
ちなみにゴブリンはあの場で立ち止まっていたため、無視をした。
立ち止まる理由は分からなかったが、下手につついて余計なことになるよりはいい。
状況としては岩に乗ったスライムの近くに愛川、柄池が少し離れたところに向かうように座る。
いる場所は川の近くだ。
「スライムさんはこれでどうかな?」
柄池がスライムの様子を聞く。
すでに愛川がポーションビンでスライムに水を掛けていたのだ。
「うん、ばっちり。お礼も言っているよ」
スライムに触れて、愛川は大丈夫と答えた。
体を元気よく振っていて、スライム自身も無問題を表現する。
「ならいいか……しかし、スライムの心情まで探れるのは驚きだ」
「うん、私も。試しにやってみたらって思ったら、意外にうまくいったの」
「ホント助かったよ。もしかしたら戦っていたかもしれないから」
愛川もまた驚いたことを伝え、柄池は助かったと話した。
両者が戦わずに解決する理想的な手段が成立したのも彼女のおかげだ。
「ん? 何々? あ、柄池君。この子も一緒に同行したいって、これならさっきみたいに水切れも避けられそうだし、頑張ってお守りするっても言ってるよ」
「おお、そう来たか、ありがたい。仲間も嬉しいけど、こっちは道に迷っていてね。この辺のことも聞きたいとも思っていた」
愛川を経由したスライムの意思表示、それは柄池には有り難い。
この世界に来て分からないことだらけで、モンスターであろうと現地の協力はありがたい。
「よし、じゃあこの子はにゅるじって名前にする。よろしくね、にゅるじ」
「え? その名前はどうかと……」
「えー? にゅるじもその名前がいいって言ってるよ。今まで名前もなくて、名前がついて嬉しいって」
柄池は名付けにどうかと話すと、愛川はにゅるじという名前を推す。
本スライムがそう言うのであれば、こちらとしても異論を出しづらかった。
「……そういうなら、うん、まあ。って、なんか茂みが動いて」
柄池は茂みの動きを感じた。
茂みが動くと、ゴブリンが体を出す。
スライムと行動していたあのゴブリンだ。
「あ! あの子、無視していたゴブリンだ!」
「ん!? まさか戦闘するつもりか!? 戦闘は避けたいんだけど……!」
愛川が指をさして声を出すと、柄池は荷物を持って戦闘態勢をとる。
あの時ゴブリンも特に追いかけている様子はなかったが、もしかすると別固体か。
そのゴブリンは茂みから出て、こちらにゆっくりと向かってくる。
「ん? 柄池君。ちょっと待ってほしいって」
愛川はにゅるじに手を触れて、待ったを伝える。
柄池は戦闘態勢を解除する、にゅるじが何かするかもしれないと。
ゴブリンはこちらを見ていた。
しかし、すぐに頭を下げたのだ。
「今回はスライムがお世話になったみてえで、ありがとうごぜえますだ」
ゴブリンはお礼を言った。
お礼を言うこと。
その予想のつかなかった反応に柄池と愛川は互いに見合わせる。
「「喋った!」」
柄池、愛川の驚き声が重なった。
ゴブリンは再び頭を上げる。
「あと、おらが脅かしちまった見てえだし、それも御免なさいするだ」
再度ゴブリンは頭を下げて、柄池は言葉を出そうと口を開く。
まさか、あのゴブリンが訛りで喋るとは思わなかった。
こうして礼を言われた以上、戦う必要はなさそうだ。
ここでゴブリンが喋れると分かったことも戦う必要のない要素として大きい。
「いや、こっちこそ。戦闘だと構えてごめん。でも、なんでまたこんなことを?」
「それなんだけども、二人に襲われっかと思って、だったらこっちから先にと思っただよ。見ねえかっこしてっから二人とも」
「あ、それもそっか……」
ゴブリンは攻めた理由を話すと、柄池は納得をする。
元の世界にいたときの服と変わりないことから、怪しい人物と思われる可能性があるのは困る。
それはモンスターだけでなく、この世界の人間に対してもだ。
「まあ、おらが悪かったわけだし、戦闘するつもりもねえから。あと、おらはスライムとなげえ付き合いだけんども、大まかな意思しか分かんねから。スライムのことも面倒見てくれてあんがとな」
「ああ、いいよ。なんか困ってたようだったし」
「しかしなあ、スライムも救ってもらって、流石、救済者様だあ」
「ん? 救済者? 何のこと?」
ゴブリンから救済者の言葉を出され、分からない意思を柄池は伝える。
「救済者のことを知らねのか? だったらおらが話すだ、きっと驚くだ」
救済者についてゴブリンから説明をしてくれるようだ。
こうして、ゴブリンから救済者のことを聞く。