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5 王女の誘いは心霊写真を招く。それとフィッシュテールスカートは前がミニ、後ろが長いスカートのことを言うんだって。実際にあるよ

 兵士に連れられて都市内の城に入り、柄池達は場内の部屋へと連れてこられた。

 その部屋は大きく開けた部屋で鎧を纏って武器を持つ兵士たちもいた。


「ロカリア王女はあちらにおります」


 頭を下げて兵士が部屋の奥へと手を伸ばすと、王女と思わせる気品のある女性が玉座に座っていた。

 銀色に近い髪を持ち、純白のフィッシュテールスカートをまとって。

 王女は二人の武器を持った護衛の兵士を位置させてもいて、無礼があってもこちらから手を出せると言わんばかりだ。


 礼儀だと思って、柄池から先に声をかける。


「ロカリア王女様。お招きいただき、ありがとうございます」


 柄池は膝を折って姿勢を下げつつ、頭も下げて挨拶をする。

 実際に自分よりも身分が数段も上の人と話すのは初めてだが、粗相のないようにと心がけていた。

 この対応で失礼がないか、正直分からない。

 減ったに機嫌を損ねたらどうなるかは考える余裕がなかった。


 ただ、愛川は気難しい顔をして立っていただけで、柄池は口を開く。


「愛川さんも俺と同じようにしてね?」


 愛川の方へ見て指示を出す。

 すると、黙って愛川も柄池と同じように姿勢を低くする。


 それを見てロカリア王女は声をかけてくれた。


「こちらこそ、こうして来ていただいて、嬉しい限りですわ」


「こうして私も目をかけて頂き、光栄です。まだまだ、旅は始まったばかりというのに」


「そろそろ立ってくださってもいいですわよ その姿勢も話しづらいでしょう?」


「では、お言葉に甘えます」


 ロカリア王女からの厚意から柄池は立つ姿勢へと戻す。

 次いで愛川も姿勢を戻した。


「救済者様も大変ではないでしょうか? 急にこの世界に連れてこられて、訳も分からずではなかったのでは?」


「ははは、そうでした。しかし、よく経緯をご存じで」


「ええ、話には聞いていましたから。救済者様のことは」


 柄池は経緯について話題に出すと、ロカリアは事前に話に聞いていたと笑いつつ話す。

 こちらに来て日にちもそれほど立っていないのに、こちらのことを知っているのはすごいとも思っていた。

 どうやって知ったのかという疑問も出るが、ここでは抑えることにする。


 その会話の傍らで愛川は柄池の真後ろへと移動していたことに気づく。

 そして、愛川は柄池の脇腹へ両手を伸ばして密着してきた。


「えっと……愛川さん、これはどういう意図が?」


「心霊写真になってるの」


「ごめん、よく分からない」


 愛川のよく分からない説明に柄池は声を小さくして戸惑う。

 愛川の視線は見えないながらも、ロカリア王女へと力のある視線であることは感じ取れる。

 さらには愛川の意図があってか分からないが、大きな胸も柄池の背中に押しつけているようだ。


「ところで、雷の都市にはどのような御用がおありかしら?」


「用件は大したものはないです。寝床の確保と食料が調達できればと考えてはいますが、この都市には大方通過さえできれば構わないと考えています」


「おや、どこか別に目的の場所があるのでしょうか?」


「水の都市へと向かうつもりです、情報集めに」


 ロカリア王女の質問に柄池はそれぞれ答える。

 ただし、答えは最低限に抑えて。

 彼女には気がかりなことがあって、こちらは警戒心もあった。


 愛川は未だ柄池の背中から彼女へ視線を送っている。

 流石にまずいと柄池はもう一度小さく声を出そうとする。


「愛川さん、その視線はまずいよ。かなりの身分の人だし」


「私は今幽霊です。関係ありません」


「あ、そうそう。今の心霊写真のトレンドって笑顔で映ることだって、その方が怖いって怨霊さんが言ってたよ」


「え? そうなの? じゃあ笑顔の方がプレッシャー凄いのかも」


 柄池の説得に愛川は応じ、愛川の視線が柔らかくなる。

 説得はその場100%生産の出まかせではあったが、この場ではやむを得ないと判断しての行動だ。

 出まかせにしては上出来な結果とも思っていたのは、秘密ではある。


「おや、何の情報を集めるか分かりませんが、雷の都市も情報はありますので遠慮なさらずに探しても構いませんわ」


「御厚意は嬉しいですが、もしかすると、情報集めも長引くかもしれませんので、長居は悪いです。水の都市ならばじっくり探せますので、そちらへ行こうと思います」


「そうですか。なら無理には引き留めません。ですが、今日は遅い時間ですし、食事と寝床の確保ぐらいは容易いですので、よろしければいかがでしょうか?」


 御厚意は嬉しいがとの前提で柄池は否定すると、ロカリア王女から食事と寝床の提供を提案された。

 この提案も引っかかるが、流石にこれくらいの好意も蹴ってしまうのは心苦しい気持ちもあった。

 まだ、彼女が悪いことをするとも決まったわけでもないうえ、野宿というのも危険ではある。


「そうですね。夜まで無理して移動するのも危ないですから、御厚意に甘えさせていただきます」


「あら、嬉しい。では会食で今までの話を聞きたいですね。元の世界の話でも私は聞きたいですわね」


「分かりました。それでよければお話はします」


「あと、食事が終わりましたら、私と二人きりでお話しませんか?」


 ロカリア王女はさらに提案をしてくる、今度は二人きりの話と。

 その彼女の顔はやけに期待があるように見えて、笑顔であった。


「え? 二人きりでですか?」


「ええ、二人でしか話せない面白いことをです」


「後ろの愛川さんも含めてならさらに面白くなると思いますが、それはダメですか?」


「断固ダメですわ」


 柄池の提案を断固とロカリア王女は否定する。

 愛川もまた視線の色が変わる、敵でも見るかのような色に。

 王女との二人の会話、やはり引っかかるものはある。


「えっと、申し訳ありませんが……私だけで面白い話を聞くのは悪いと思いますので、お断りしようと」


「……そこまでいうのであれば、私からは強制はしません」


 柄池からの拒否にロカリア王女は顔を下げて否定を受け入れる。

 そこまでのお誘いを断ることも悪いことだが、この誘いに近い経験が元の世界にはあった。


(人魚の時だったな。あの時、誘いに乗ったら命が危なかったしな……)


 柄池は元の世界で経験したことを思い出す。


 かつて人魚に二人きりになるよう誘われたが、誘惑もされたのだ。

 後から仲間に聞いたがその誘惑に乗ったら、死ぬ危険もあると聞かされる。

 その前例が今回も当てはまるかは分からないも、こういうことは柄池としても避けたい事柄であるのだ。


「ですが、会食は大丈夫ですわよね? その時よろしければ面白い話をして頂きたいですわね」


「ええ、それは容易いです。元の世界でもいろいろ経験しておりますので、面白い話も用意できます」


「それは楽しみですわね」


 柄池の話に再び笑顔でロカリア王女は話す。

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