3 新たな仲間と問題と
「はい、ここに置いておくよ」
手に持った食用の肉を愛川はブレイドチェイスの近くに置く。
柄池達の食料から食用の肉を三つ、それを分ける形となったのである。
こちらの食用肉はまだ数もあったので、今回の出費はそれほど痛くはない。
「愛川さんも離れてね。離れるところを見てから俺もブレイドチェイスから離れるよ」
愛川の移動を見守りつつ柄池は話す、剣はブレイドチェイスへと向けて。
彼女の安全と言える距離まで確保したところで、柄池はブレイドチェイスから離れていった。
それを見たブレイドチェイスは肉へと近づいて、その匂いを嗅ぐ。
食べれると判断したのか、三つの肉をくわえてこちらから距離を置いた。
距離を置く中で、こちらへの警戒の色も相手の視線から感じる。
その後に一度こちらへと振り返り、ブレイドチェイスはこの場から去っていく。
戦闘の危機は去ったとこれで言える。
「今度は仲間として会えるといいのだけど」
「仲間としての期待は無理そうだと思うよ、子供もいる感じだし、こっちの言葉も分かってなさそうだったから」
「うーん……別に喜んでいるんじゃないからねって言ってたから、仲間になりそうな感じだったけど」
「それはさすがに言ってないと思うよ」
愛川から仲間になる期待を話されて、柄池はないと予測づけて答える。
「それは間違いなく言ってたよ。心を読んだらそう言っていたから」
「そ、そうなんだ。オスっぽいからそれはないと思ったんだけど」
「うん、トラベドンはオスで間違いないし、それでもあんなツンデレワードを言ったんだよ」
「そ、そっか……」
愛川からの意外な事実に柄池は驚いていた。
まさかの雄のモンスターからツンデレの言葉を聞くとは思わなかったためだ。
戦闘も終わったことでライオロスは柄池の体から出ていく。
「それはともかく、お疲れさまでした。こういう風に場を収めるとは流石です」
「まあ、こうできたのはたまたまさ。それに大したことをしてはいないしな」
「それはないはずです。こうやって対立しているお互いを収めたことは評価に値します」
「結局、俺は目の前で困っている人やモンスターを助けているだけだからね。目の前で見える範囲だけしか助けられないのさ」
先ほどのことをライオロスは評価できることと言うも、柄池はその誉め言葉を否定した。
自身にとって、褒められるためでもないし、評価されることをやったわけでない。
それを伝えるため、更に柄池は言葉を続ける。
「結局、偽善と言われれば、それは否定できない。困っている人達は全員助けられない、現にあの肉だって俺が助けられなかった結果できたものだし」
「それはそうですが……」
「俺のやっていることは褒められることではないってことさ。ま、それでも俺は助けていくけどね。やっぱり困っている人達を目の前で見捨てたら、俺は後悔するから」
「そう言ってくれるなら、何よりです」
柄池がそれでも助けると意思を示し、ライオロスは安心するように話す。
自分のやっていることは偽善と言われる覚悟はある。
だが、その一つの偽善で救える命、それを見捨てたくもないのだ。
そこで愛川からの言葉が出た。
「んー……でも、柄池君ならみんなが笑顔になれるように助けられる気もするよ。大丈夫だと思う!」
「そうかい? そう言ってくれると嬉しいよ」
愛川は大丈夫と話すと、柄池は嬉しい気持ちを正直に語る。
何の根拠があっての言葉かは分からなかったが、それでも嬉しい感情はある。
「でさ、あの子、めぬえもんはどうする? おとなしくしているし、さっそく心を読んでくるよ?」
「あ、そうだね。早速お願いするか」
「はーい」
柄池からのお願いに愛川はランドステイの方へと向かう。
今更だが、もうランドステイにめぬえもんと名前を付けているようだ。
「えっと、助けてくれてありがたいめ、だって」
「いやいや、助けてほしそうだったからね。こちらの言葉は分かるかな?」
「人間の言葉は理解できるって、人間の言葉は出せないけど」
「お、それは助かる」
ランドステイは愛川の言葉を通じて言葉が分かると伝えて、柄池はいいことだと話す。
通じない場合は厄介なことが起きる場合も多いからだ。
「それでさ、めぬえもんは旅をしているって話でね、こうやって危ないところを助けてもらうとありがたいって」
「これもしかして、これって同行できるってこと? 俺たちとの旅に一緒に」
「うん、そうしたいって言ってる。なんでも草のレビューをしたいから旅をしているんだってね」
柄池の確認に愛川は同行したいと伝えた。
その後に、ランドステイは挨拶代わりに声を挙げる。
草のレビューとは変なことをやっているとも感じてもいた。
だが草食動物のレビュアーとはもしかするとランドステイの中では一般的なのか。
そんな思考も渦巻いている。
「そっか、荷物持ちとか移動手段としても頼めそうだし、それはいいかもしれないね」
「おとなしいですし、町によっては馬の代わりとして労働力にも使っているところもありますよ、ランドステイは」
「なるほど、そりゃこっちも助かる」
「ただ、モンスターには変わりないですから。町や都市によっては受け入れられないこともあります」
「ああ、そういうところもあるのか。やっぱりというか」
ライオロスからの問題提示に柄池は問題を気付くことになる。
ただ、予想は出来ていた問題ではあったので驚きはない。
悩みの種が新たに芽吹く横で、愛川は愛川はある物を手に握っていた。
「ほいっと」
そう言いつつ愛川はランドステイの頭の上にある物、ポーションビンを被せた。
何も起こらない。
「えっと、何をやっているの?」
「石垣さんもさ、これでビンに入ったでしょ? めぬえもんも入るかなって」
「そっか、流石にあんなことは二度もないと思うよ」
先ほどの行動の理由を愛川が説明し、柄池も理解する。
「うーん、でもこの姿だと都市とか入れないんだよね? なんとかなる方法を探した方があればなー」
「せめてこの姿以外だったらな……」
難しい顔をして愛川は呟くと、柄池は別の姿になれればと話す。
方法が何とも言いようがなかったが、愛川がこうやって問題解決を手伝ってくれるのはありがたい。
しかし、柄池は悩んでいた、雷の都市ではランドステイの姿は大丈夫かと。




