2 寄り道イベント:モンスター出現
「こっちは武装しているけど、戦う意思がないなら無闇に傷つけることはしない」
柄池の意思でこれらの言葉を送り、ライオロスの意思で剣を片手に持って、真横に別の手を投げるようにスナップを効かせる。
ランドステイはその場をのそのそと離れていき、ブレイドチェイスはこちらにターゲットを変えた。
「逃げたモンスターは襲わないみたいだよ」
「そう。じゃあ、めぬえもんはこっちに来ていいよ!」
柄池がランドステイについて話すと愛川は手招きをする。
愛川の行動を理解したのか、ランドステイは愛川の方へと向きを変えて移動する。
ランドステイは走ってはいるのだが、それほど速度は出ていない。
その傍らブレイドチェイスは柄池に飛び掛かりつつ、爪を伸ばしていた。
柄池の体を借りたライオロスは爪を剣で受け止める。
「後、今は剣での斬突はしないでほしいんだ。攻撃は手足の方でお願い」
(分かりました)
「まだ、傷つけないで済む方法はあるかもだからね」
ライオロスは心の中で指示に従うと話して、柄池は支持の理由を話す。
同時に剣で爪の攻撃を弾き返した。
(柄池殿、ここは一気に決めましょう)
「また殿ってつけるの? それはともかく、何か考えが?」
(はい、あの技でいけばと。お任せを)
柄池が考えについて聞くと、ライオロスはあの技を提案する。
あの技について予想は出来た上、任せても安心できた。
ライオロスは柄池の体を使って剣を真正面に向ける。
ブレイドチェイスはもう一度飛び掛かろうとこちらに向かって走る。
「行くぞ! 竜殺槍!」
ライオロスは放つ、竜殺槍を。
ブレイドチェイスはその向かう衝撃波に足を止めて、目を閉じた。
だが。
衝撃波が当たったのは後ろの木であった。
木は音を立てて倒れていき、轟音を周りに響かせる。
(根性のある相手のようですが、これを見れば撤退するでしょう)
「そうだね、でも痛いね、この技は」
(柄池殿、しばしの辛抱を)
痛がる柄池に心の中から辛抱との言葉をライオロスは送る。
痛い身を耐える柄池をよそに、ブレイドチェイスは倒れた木を見ていた。
これで引くと思われたが、相手は再びこちらを見据える。
(根性がここまでとは、見上げたものです)
「いや、かなり怖がっている、足を見るんだ」
ライオロスが評価をすると、柄池は脚を見るように言う。
ランドチェイスはこちらを見据えながらも四足は無意識に震えていた。
脅威を感じているのは間違いないが、それでも引けない大きな理由はあると見て取れる。
更に相手はこちらに向けて吠えてきたのだ。
このままでは手にもつ剣と口から生やす剣を向けるしか解決しない。
柄池としても、それは望む結果ではない。
(怖がっているのに、なぜ立ち向かうのか……)
「ここまで来たら、後は任せた方がいいね。という訳で出番だよ、愛川さん」
柄池はブレイドチェイスから愛川の方へと視線を向ける。
「あ、はーい」
「俺も愛川さんに攻撃しないよう念は入れておくけど、にゅるじも備えていてね」
「分かった。にゅるじ、出てきて」
柄池は愛川に話し、彼女はにゅるじを呼び出す。
その様子を見てから柄池は剣を向けると、ブレイドチェイスは姿勢を後方へ下げた。
「悪いね。言葉が通じない以上はこうするしかないんだ。おとなしくしていたら攻撃はしないから」
「いまから心を読んでみるね」
ブレイドチェイスに柄池は忠告して、愛川は手を触れて心を読み始める。
意思疎通は難なく済み、愛川は口を開く。
「そっか、そういうことね」
「何かわかったようだね。どんな心づもりかな?」
「このトラベドンは子供がいるんだってね。それでどうしても食肉が欲しいんだって」
柄池が聞くと、欲しい物を読み取った結果を愛川は告げる。
再びブレイドチェイスを見ると、食肉をあきらめていない意思を目で伝えてくる。
「そういうことか。でも、このランドステイをみすみす食料にするわけにはいかないしね」
「このトラベドンもちょっとやそっとで引くわけでもないし」
ランドステイの状況を柄池が、ブレイドチェイスの状況を愛川が、それぞれ語る。
「ならば、こっちはこうするしかないか」
剣をまだ構えたまま、柄池はブレイドチェイスを見る。
戦闘は中止しているが、こっちを食肉にする気もあるとブレイドチェイスは目で語るようであった。
戦闘していた時の目つきはまだ戻っていない。
そこで柄池は言葉を出そうと口を開く。
「愛川さん、まだ食料はあったよね。こっちで食べる分の肉が」
「あ、確かあったよ。お肉も」
柄池の食料の確認に愛川は肉もあったと答える。




