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1 行き先は雷の都市へ

 柄池達は脇に草木が生い茂り塗装された道を歩いて、水の都市へと向かっていた。

 ただ、道中は水の都市だけを通る道ではない。

 迷わないようにと柄池は地図とコンパスを手に移動をしていた。


「水の都市はここから北へと向かうわけだから」


「うんうん」


「それで途中の雷の都市を経由していくわけだ」


「まずは、雷の都市に行くわけだね」


 柄池は雷の都市へと向かうことを話して、愛川も確認として同じ言葉を話す。


「たしか、カイゼルさんは雷の都市なら救済者だと信用してくれるはずだって言ってくれてるから、大丈夫じゃないかな」


「食料とかもそこで貰えればいいけど」


「まあ、そうだといいね。以前の街ではかなり好意的にしてくれたけど、次はどうなるかは分からないし、お金や食料、その他の道具とかも何らかの方法で調達しておきたいな」


「いざとなったら踊って稼ぐしかない?」


「いや、曲芸人として生活していくつもりはないから。というか、なんでか踊る気満々のように見えるけど、気のせい?」


 稼ぐ手段を提案する愛川にそれはないと柄池は否定した。

 踊る気があるのかと聞いた理由は彼女が変なポーズをとってもいたためだ。

 割と本当に踊るつもりが垣間見えてもいる。


 ポーションビンから声が響く。

 ライオロスの声だ。


「私は食べなくても問題ありませんので、食料のことは心配いらずです。柄池殿」


「にゅるじは水だけあれば問題ないにゅすって」


 ライオロスがポーションビンの中から話しかけ、にゅるじは愛川の手に触れて、愛川の言葉で意思を伝える。


「食事は俺と愛川さんだけで十分か今のところ。これなら、一週間は持つか」


「雷の都市って、どれくらいの時間でつきそうなの?」


「あ、それはゆっくり歩いても今日の夜までに着くって話だね。休憩しながら行っても大丈夫だと思うよ」


 愛川の疑問に柄池が答える。


「焦ることや急いでいく必要はなさそうですね」


「そうだね。それにこの旅は焦るよりも自分のできることをできるペースでいくことが重要だと思うんだ。無理すると出来ることもできなくなっていくからね」


「無理は禁物との言葉もありますからね」


 柄池からの無理は良くないとの言葉を受けて、ライオロスも同調する意味で無理は禁物との言葉を出す。


「ということで、愛川さんも休みながら歩いても問題はないから」


「はーい」


 柄池は休んでも問題ないと伝えると、愛川も了承する。


 愛川の体力は不安があった。

 元の世界では足を使った長距離での移動は体力がなくなることが愛川に多いのだ。

 最近はランニングを頑張っていて、最初会った時よりはかなり体力が付いたことは見て取れるも、体力面はまだ柄池よりも不安がある。


「柄池殿、休憩の見張りは私に任せてください。夜でも問題はありませんので」


「それはありがたい……けど、前々から気になっていたのだけど、いいかい?」


「はい、なにか?」


 気にしていることがあると柄池は話して、ライオロスはその質問を受け入れる。


「俺のこと柄池殿って呼ばれると、ぎこちないんだよね。柄池さんならまだ落ち着くんだけど」


「え? それは今更ではないですか? 私としては柄池殿が落ち着くのですが」


「まあ、最初に言われたときに言えばよかったけど、後回しになっちゃったから今言っておきたい」


 柄池はその疑問を出した理由を話す。


「私としてもこれは地味に困ることで、このま」


 ライオロスは不自然なほどに言葉を途中でやめる。

 何かあったのかと疑問を投げる前に、柄池は気付く。


 脇の方から何かしらの動物が騒ぐ音がかすかに聞こえていた。


「何かあるようだね? いってみようか?」


「そのようで、モンスターかもしれないので、気を付けてください」


「だね。先に俺の体に憑依しておいてくれ」


「承知!」


 柄池の憑依許可を受けて、ライオロスは承知と話す。

 すぐにライオロスは柄池を自らの光で覆うように憑依した。


「モンスターね!? 仲間にできるといいね!」


「愛川さん。今から名前つけるの楽しみにしていない? これ危ないことかもしれないってことは頭に入れてね?」


 愛川の期待に柄池は危ないことだと突っ込みを入れる。

 そして、柄池は音のする方へと草木を分けて進み、愛川もそれに続いた。


 そのまま走っていき、音が徐々に大きくなっていることから現場に近づいていることを確認する。

 大きく広がった場所に近づくと、柄池達は草木の影に隠れて覗くように見る。

 その眼には二体のモンスターが対峙しているところが写った。


 一体は亀のような装甲を背負った四足歩行のモンスターで元の世界のサイより小さいくらいか。

 もう一体は虎のような姿をしていたが、口から生えた牙は長く、サーベルタイガーと呼ばれる種族が元の世界にもいたのでその外見とそっくりであった。

 大きさを比較すれば、亀装甲のモンスターが大きい。


(あの大きく緑色の方がランドステイと呼ばれるモンスターです。草食な上に温厚で、群れで生活するモンスターですが、はぐれたところを狙われたのか)


「亀みたいなのがランドステイね」


(はい、それとランドステイを狙っているのがブレイドチェイスと呼ばれるオレンジ色の体のモンスターです)


「あのブレイドチェイスって人間を襲うことはあるの?」


(襲うことはあります。ですが知恵はありますので、自分より強いと判断した相手は基本襲いません)


「そういうことね」


 ライオロスは二体のモンスターを説明して、柄池は理解をした。

 人の通る道の付近であのブレイドチェイスがいることは、他の人にも迷惑がかかるだろう。

 ならば、何とかして追っ払ったほうがいい。


 すると、ランドステイはこちらの方へとふと顔を向ける。

 こちらを視界に入れてランドステイは声を挙げた、まるで助けを呼ぶように。

 それに応じてブレイドチェイスもこちらへと目をやった。


(どうしますか?)


「ほっておけないよな? モンスターも助けを求めているようだし」


(では、行きましょう)


 ライオロスは心の中から呼びかけて、柄池は草木の陰から出てくる。

 ブレイドチェイスもこちらに気づいたようで、不意打ちは望めないだろう。


「よし、めぬえもんとトラベドン! 私は歓迎するからね!」


「まだ仲間になるとは決まってないからね?」


 もうすでにモンスターに名前を付けた愛川に柄池はまだ仲間ではないと釘を刺しておく。

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