15 スマホぱわあっぷイベント
夜は過ぎ、朝を迎えて、朝食の時間が来る。
柄池達は宿の食事のもてなしを受けてから、準備を済ませた。
その間に柄池は夜に起きた騒ぎを聞いて、再度自身でも謝りに行ったのだった。
それから、柄池は町の道を歩いていた。
商品を売る声や金銭の受け渡す様子が見えていて、人の動きも活発と道は賑わっている。
出向いたのは自身とライオロスだけだが、愛川のスマホも預かっている。
「で、研究施設に行ってきた、それで、やっぱりスマホのことを言っていた」
「はい、そうでしたね」
柄池は研究施設での出来事を話し、ポーションビンの中に入ってライオロスは肯定する。
ちなみに研究施設にはもじゃもじゃ頭の性別が分からない人が一人で対応してくれた。
「なんだか遠く離れても連絡できる技術がこっちにもあるようで、スマホがこっちでも使えるようになったし、パワーアップもした」
「はい、そうでしたね」
柄池は研究施設での出来事を振り返り、ライオロスも肯定する。
使える相手は現状愛川だけだが、二つのスマホが充電の心配なく使えるようになったのはありがたい。
使わない時間に充電されるようでかなり便利だ。
また、スマホのテストをしてみて、通じたことは確認済みである。
研究施設での用件は済んだのだ。
だが、心から喜べない部分が一つある。
「で、問題なのはパワーアップしたところが全然分からないってことだ……」
「……はい、本当にそうでしたね」
「追加した機能の使い方やどこが変わったのかも説明してくれなかったし、説明を要求しても専門用語ばかりで全く分からなかった」
「本当に何だったのでしょう、あの技術者は……」
柄池は技術者への不満を言葉にして、ライオロスも同じくと話した。
あの技術者は気持ちが高ぶりすぎていたのか、ただ単にやりたいことだけを一方的にやっていただけのようにも見て取れたのだ。
最初の技術者の対応でスマホに対してかなり喜んでいたことから、今になって高ぶっていた要因はこれなのだと痛感する。
「まあ、この世界でスマホを通じてくれるようにしてくれただけでも、十分有り難いからね。この世界で愛川さんとも連絡が取れるようになったのは、十分な前進だよ」
「それは確かなことですね」
「まあそうなんだよな、確かにそうなんだけど……」
ライオロスの肯定の後に柄池もまたスマホが使えるようになって良かったと話す。
だが、自身の顔は少し浮かない表情であった。
「どうかしましたか?」
「ちょっとね。それでも、元の世界の人たちとは連絡取れないんだなって。当然と言えば当然だけど」
「ああ、テストの後に繋がらなかった相手はやはり……」
「そういうこと。急にこんな世界に行ってさ、心配している人はいるからダメもとでやってみた」
ライオロスの推測の言葉に柄池はそうだとの言葉を出す。
愛川のスマホと通じるかテストした後、自身は元の世界の友人と連絡を取ってみたのだ。
「あの技術者との会話に疲れたのかと思いました」
「あー、否定はしたいとこなんだけど、正直言ってしまうとそれもある」
「まあ、私も聞いていて疲労感がありました」
「あと、友人がちゃんと栄養あるモノ食べているかも不安でもある。良くないもの食べていたら、俺が弁当を作って持って行きたいくらいに」
「そ、それもですか……」
不安と疲労について柄池が語ると、ライオロスは同意を交えて受け答えする。
「俺の友人はさ、モンスターに近い存在と戦っていたんだよ、俺はサポートで。付き合いも長いから今回の突然の出来事ですごい心配しているはずなんだ」
「確かに……」
「それだけじゃない。一緒にその近い存在と戦ってくれる仲間もいて、その人たちにも迷惑かけているだろうし、その友人のお父さんにも世話になっているからそのお父さんも心配しているはずだね」
「そうですね、親御さんも心配でしょう」
元の世界で関わっていた人について柄池が語ると、ライオロスもそうだと語る。
彼は無力感を感じているのか、どこか言葉に困っていた様子だった。
「ま、こんな心配事を何度語っても、前進するわけでないからね。行動起こして一歩一歩進んでいかなきゃ」
「あ、私も協力しますので! ぜひとも力添えをさせてください!」
「ありがとう。頼りにしているよ。心配事を話しちゃって本当にごめんね」
「いえ! 柄池殿にも不安事の一つや二つありましょう!」
自ら語ったことに柄池は謝って、ライオロスは問題ないと話してくれた。
「それじゃあ、いつまでも留まるわけにはいかないし、町を見ている愛川さんと合流しようか。待ち合わせの場所でそろそろ待っていると思うし」
柄池は合流することを告げて、待ち合わせの場所へと向かった。




