10 約束の勝負、決着を迎える
「やったね。柄池君!」
「すげえだあ! あんなことできただか!」
愛川、石垣の順に賞賛、驚きの言葉が出てくる。
「この技、久しぶりに出せたもので、うまくいって何よりです」
(か、かなり大技だね。斬撃が……あんな風に飛んで行くんだな……)
上手くいったとのライオロスの言葉に、柄池は心の中で感想を出す。
柄池もあんな立派な技を持ってもいなかったため、驚きがあった。
技の出し方を知っていても、おそらく出すことは不可能と感じるくらいに、驚きとしてはそれくらいだ。
「では……いつまでも体を借りるわけにはいきませんので、私は離れましょう」
そう柄池の口から言って、ライオロスは柄池の体から発光して、光として柄池から出てくる。
すると、柄池は床に倒れてしまった。
愛川が駆け寄る。
「いてて……」
「柄池君? 大丈夫!?」
「まあ、あの得意技出して、体にかなり痛みが来たから」
「倒れてぶつかったからじゃないんだ。えっと? 立てるの?」
「まあ、少し休めば……」
立てるのかという愛川の質問に柄池は答えた。
飛ぶほどの衝撃を柄池の体から出したのだ。
当然、以前の世界でもこんなことはしていないので、その負担を自身は受けきれなかった。
倒れる理由として考えられるには十分だ。
ライオロスは光の球体として柄池の近くに浮いている。
「ぐっ……す、すいません。自由にしていいとはいえ、こんなことをしてしまって」
「いいんだよ。それよりも、これで目的は達成できたんじゃないのか?」
「はい、私のためにこれだけのことをしてくれて……本当に感謝です!」
柄池の質問にライオロスは目標達成したと話して、礼を述べる。
そして、ライオロスは頭を下げるように沈んで浮いてを一回する。
「ま、私もこの場に来てよかったと思っていますよ。本当は、私もあっちで見張っておきたいところでしたがね」
柄池の視界外で男の声が聞こえる。
声の方へと顔を向けると、カイゼルがいた。
しかも、何事もなかったように綺麗な笑顔で。
「カイゼルさん! ダメージなさそうに見えますけど、大丈夫なんですか!?」
「ははは! こう見えて、やせ我慢なんですよ! 見えないところでぶっ倒れるかもしれませんがね」
柄池の不安言葉にカイゼルは笑いつつ語る。
その笑顔は見ていてどんな理由でできるか不思議になるくらいだ。
「ええ……なんというか付き合わせた上に、申し訳ない気も……」
「御心配なく! やせ我慢は得意分野でして! それでは見張りは終わってない上、この場には長居できないので、この場を去らせてもらいます」
柄池の心配の言葉をよそに、カイゼルは心配なくと話して、この場から去っていく。
彼の声はやたらと上機嫌であった。
去った後、柄池は口を動かす。
「なんというか、不安な気もするけど、カイゼルさん……」
「いえ、心配には及びませんよ。なにせ、やせ我慢どころか、それほど痛みはないでしょうから」
柄池の心配にライオロスはやせ我慢もしてないと答えた。
「え? それって?」
「カイゼルはあれを何度も受けてもいます、それこそ、私の肉体で放った竜殺槍も。もっと詳しく言えば、先ほどの竜殺槍以上の威力を、です」
「ってことは……あの竜殺槍はまだまだ未完成とも言えると?」
「そうですね。なので、カイゼルの心配は無用です。きっと元気に見張りを続けていましょう」
先ほどの竜殺槍について柄池が聞くと、ライオロスは肯定した。
不安の表情になった石垣はここで疑問の声を出す。
「ええ? それじゃあ、目的は達成したと言えんのか?」
「それは心配ございません。今回のことで、新たな目標もできました」
石垣の疑問に新たな目標が出来たとライオロスは答える。
彼はこうも言葉を続けた。
「救済者である、柄池殿とともに強くなっていく目標が出来ました。肉体があったとき、いやそれ以上に強くなりたいとも思えるようになったのです」
「そういうことか」
ライオロスの目標を聞き、柄池は納得の声を出す。
戦力として心もとない柄池自身としても、この申し出はありがたい。
「なので、柄池殿。私もこれからお供をしてもよろしいでしょうか?」
「ああ。俺もこの旅は長くなると思うから、これからもよろしくな」
「はい。私の力、存分に使ってください!」
柄池は話すとライオロスも頼りにしてほしいと言葉を返した。
そして、周囲を騒がせたデュラハンはいなくなり、柄池たちに新たな仲間が出来たのであった。




