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異世界転生 ~記憶が戻るとスラム街~  作者: 山本 大和
第二章 ラインハルト学園 1年生編
15/28

1:ルームメイト

第二章 ラインハルト学園一年生編に突入です。

これからも、よろしくお願いいたします。

 ようやくつぼみが色づき始めた桜並木の下を通って、ここ王立ラインハルト学園にやって来た。事務所の方に行けば何とかなると思った俺は、そこで来校証をもらって中から出てきたお姉さんに案内されるがままについてきた。戻ってくるまでレックスの面倒をここで見てくれるみたいだ。それにしても妙だ、なぜ俺しかいないのだ。あの紙は合格者全員に同封されたんじゃないのか。


「カイト君だっけ?今、職員の間では君の噂で持ちきりよ。」

「何ですか?その噂。」

「私が教えちゃったら面白くないよ。それにあと少しで理解できるはずよ。」


そうしてある部屋の前で止まり、案内してくれたお姉さんはその部屋をノックした。


「失礼します。カイト君を連れて来ました。」

「入りなさい。」


お姉さんに促されるままその部屋に入った。そしてようやくここがなんの部屋か理解した。


「ここでは初めましてだね。私が学園長のアレックス・カーターだ。」

「こちらこそ初めまして。カイト・ブラックです。」


一番最初に連れてこられたのが学園長室で、流れのままに握手まで交わしてしまったけど、その人からは退役した軍人さんって感じの雰囲気が出ていた。


「挨拶はこれくらいにして、君が呼ばれた理由を教えてあげないとな。まずは首席合格おめでとう。そして君には二日後、4月1日の入学式で新入生の代表として挨拶をしてもらう。」


卒業時には首席でいたいなと思ってはいたけど、まさか首席合格してるとは思わなかった。それにしても二日後は急だろ。


「いきなりですまんが、そういう決まりだ。何かあったら彼女に聞いてくれ。彼女は君の担任のレイン先生だ。」

「よろしくね!」

「はぁ、それにしてもなぜ僕が首席合格なんですか。他の学科に僕よりよかった人はいなかったんですか?」


「それは君が騎士学科の実技試験と数学と歴史の筆記試験、全学科共通の戦争に対する自由論述、そのすべてがすばらしかったからだ。中でも数学は満点。自由論述は全学科のトップだった。そして今年はたまたま騎士学科の番だっただけだ。」


それもそのはずだ。こっちよりも進んでいる地球(あっち)の知識を無意識に使ってしまったからな。範囲は簡単な加減乗除の計算問題。場合の数と確率、データの分析と非常に難易度の易しい問題だった。さすがに関数の分野はまだ未発達らしかった。しかし、自由論述まで良かったとは意外だ。これが職員の間で持ちきりの噂って訳だ。


「あとのことはレイン先生に聞いてくれ、私からは以上だ。」


レイン先生と共に事務所戻った俺は、そこで紙で包まれて何かを受け取った。


「これがこの学園の制服ね。騎士学科の君には体操服も入ってるから。ベルトは自分で購入してね。それと犬に限りの持ち込みは禁止はしてないけど、食べ物とかは自分で用意してちょうだい。」

「わかりました。これからよろしくお願いします。」

「こちらこそ、よろしくね。」


軍用犬とかに育成するのなら専門期間に預けて調教することもできるが、そしたら俺のレックスは相棒ではなくなってしまう。さすがに夜は犬小屋に預けないといけないけど、暇なときは部屋に連れて入ることも出来るらしい。それにレックスの食費ぐらいは何とかなる。いざとなれば、週末に害獣駆除と題して鼠なんかを捕まえて、お礼をいただけば、ささみぐらいは買うことができる。とは言ったものの、その寮も犬小屋も入学式を終えてからでないと使えない。今日と明日はハンター向けの安宿生活だ。そこでしっかりと挨拶文を書き上げなければならないが、それにしても異世界に来てまで新入生代表挨拶をできるとはとても嬉しいことだ。


  統一歴496年4月1日


 大勢のご来賓をお迎えし、天候にも恵まれた中で俺達の入学式が執り行われた。それにしても国王陛下が自ら出席なさるとは思わなかった。まぁ考えてみればこの学園の出資者なのだからおかしくはないが、如何せんこの世界の常識に疎い俺には衝撃的だった。今は生徒会長による挨拶が終わったころだ。そろそろ俺の出番だろうか。


「続きまして新入生代表挨拶、新入生代表騎士学科カイト・ブラック」

「はい!」


やっぱりな。その場の空気が二分された。陛下率いる来賓の方々と先生方、なにも知らない市民出身の生徒とその親からは拍手がおこった。一方で大半の貴族はざわめきだした。ここにいる貴族で俺の家名と父の事を知らない人はまずいないし、俺もその事を隠す気はない。たがら陛下率いる来賓が拍手しているのを見て、自分達がしないのはおかしいと思って、保身に走ったのだろう。


「春の暖かな風を受け満開を迎えた桜並木が、私達の入学を歓迎してくれているように感じました。天候にも恵まれた今日のよき日に私達新入生240名は入学式を迎えることができ、嬉しく思います。本日はこのような式を行っていただき、ありがとうございました。

 私は先程陛下がおっしゃった『君たちは自分の力でこの学園に合格した。』この言葉に感銘を受けました。ここには、貴族の子、商人の子、庶民の子と沢山の家柄出身の新入生がいます。私の父もあのギルバート元将軍です。しかし、陛下がおっしゃったように、私達新入生は自らの知識と実力で自分の夢を実現するためにこの学園の合格を勝ち取りました。これからの三年間は家柄や出身にこだわらず、互いの実力を認めあい、切磋琢磨していこうと思います。そしてこの学園は全寮制です。今までは両親に助けられていましたが、ここに両親はいません。しかし、ここには厳しく見守ってくださる先生方がいます。頼もしい先輩方がいます。そして隣に共に苦楽を乗り越えていく240名の同級生がいます。

 最後になりましたが、学園長をはじめ、先生方、そして先輩方に暖かい指導くださいますようお願いして、代表の挨拶といたします。

 統一歴496年4月1日 新入生代表

      騎士学科カイト・ブラック」


 今度は割れんばかりの拍手喝采が起きたようだ。それからは無事に式も終わり、俺たち新入生はそれぞれの教室へ移動していた。今から担任の紹介らしいが俺はもう知っている。


「はーい注目!私が君達の担任のレインです。座学の授業と女子の実技指導は私がします。三年間よろしくね!」


騎士学科は40人の新入生がいるが、男女比率は3:1、圧倒的に男子が多く皆がレイン先生に見とれてる。


「もう少ししたら男子の実技指導の先生が来るから、ちょっと待っててね。」


教室の扉が開いたかと思うと、そこからいかつい巨漢が入ってきた。


「あの人が男子の実技指導担当のゴドフリー先生ね。」

「レイン先生が言った通り、私がゴドフリーだ。私の指導は厳しいらしいが、それを耐え抜いたものは立派な騎士として前線で活躍している。お前たちも自分の騎士団を率いたいのなら、俺の指導を耐え抜く事だ。」


さっきまでレイン先生に見とれていた男子の顔が一気に青ざめた。この教官は自分の指導が厳しいことを公言している。甘やかされて育ってきた貴族のぼんぼんには厳しい現実だろう。中には教官の説明を聞いても目の色を変えなかったやつもいるが、ほんのごく少数だ。


「今日のところはこれで解散。本格的な授業は明後日月曜日から。式の前に犬を預けた人は犬小屋へ案内するので私が戻ってくるまでここで待機。それ以外の人は先に寮へ行くなり、自由時間です。」


そう言って、レイン先生とゴドフリー教官は教室から出ていったことで、プレッシャーから解放され、友達との無駄話に興じていた。


「すごいじゃないカイト、新入生代表だなんて。」

「やめてくれ。ああいうのは苦手だ。」

「何いってるの、兵士に檄を飛ばす時はもっと人が多いのよ。」

「俺の事より、お前は親父さんと仲直りしたのかよ?」

「まだよ!」


そう言って、ステラは他の女子の和のなかに入っていった。あの父あってこの娘か。本当に二人とも頑固なんだから。ステラ以外は話しかけて来ないだろうなと思っていた俺の予想は裏切られ、男女問わず沢山の人に声をかけられた。それからレイン先生がすぐに戻ってきて、俺は犬小屋へ案内された後、寮の方にやってきた。この学園には寮棟と呼ばれる場所があり、校舎とは渡り廊下で繋がっている。学科と学年ごとに建物が別れており、ひと部屋に二人、三年間同じ部屋で同じ人と過ごすらしい。俺のルームメイトはどんなやつだろうか。


「やっぱりあんたか。」


こいつは教室で俺に声をかけてきた一人だ。名前は聞いていなかったはずだ。


「やっぱりってなんの事だよ?自己紹介はまだだよね。俺はカイト・ブラック、三年間よろしく。」

「俺はライアン、家名はない。こちらこそよろしく。」


この出身が全く違う二人がこの先固い絆で結ばれた永遠の友になるということは、誰にも想像できないだろう。

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