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異世界転生 ~記憶が戻るとスラム街~  作者: 山本 大和
第一章 スラム街の平定
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9:帰還と日常

 安心したのか、俺が持ってきた食事を平らげたサクラは、俺の背中で眠ってしまった。そのまま俺達3人はセントラルシティへ向かった。


「なぁ、君は一体誰なんだ?」

「えっ!」


至極当然の質問のはずなのに、彼女はなんの事かわかっていないみたいだ。


「貴方はその子を助けるために知らない人と共闘してたって言うの?」

「君が強かったのは事実だし。」


俺の答えに驚いて見せた彼女だが、平静を装って聞き返してきた。


「じゃあ逆に聞くけど、赤の他人が貴方に力を貸すとでも?」

「それはないだろう。」

「だったら、貴方の知り合いから、6大精霊魔法の制御に優れていて、なおかつ時空間収納魔法ストレージを使える人を探せば良いでしょう?」

「えっ?でも、まさか!そんなわけ・・」

「そう。そのまさかよ。」


そう言いながら彼女はようやく被っていたフードを取り外した。そこには、幼い頃の面舵を残したまま、綺麗さにより一層磨きがかかったステラ・カーマイン本人の姿があった。


「ステラちゃん?」

「そうよ。気付いてなかった?。」

「だったらなんで槍術なんか身につけてるの。それよりも公爵家の娘がこんな時間に一人で外出してるとは誰も思わないよ。」

「お父様と喧嘩して飛び出して来ちゃた。だから皮肉なのよね、あの人に叩き込まれた槍術を使わないと、あの男を倒せなかった事が。」

「公爵家の娘が家出ねぇ。これからどうする気だよ?はやく仲直りした方がいいたろ。」

「心配ないは、どうせ来年にはラインハルト学園騎士学科に入学する気だから。予定が3ヶ月ほど早まっただけよ。」


ステラいわく、ただ単に父親に叩き込まれた槍術が嫌いなだけで、自ら他人の槍術を盗み取る分には問題ないらしい。せっかくラインハルト学園に入学するのなら、魔導師学科の方が良いのではないかと俺は言ったが、彼女いわく、学園で他人に教わるより、セントラルシティの国立図書館で父親に邪魔されることなく自分で魔導書を読み漁った方が良いそうだ。


「よその家の親子喧嘩に口出しはしないけど、ちゃんと仲直りしろよ。」

「余計なお世話よ!謝ってくるまで許さないんだから。」


そう言いながら俺達はセントラルシティにつき、ステラと別れて互いの帰路についた。


 俺達が東の街にたどり着いたとき、目の前には朝陽が昇り、俺達の帰還を祝福してくれた。サクラを背負ったままの俺は、そのまま宿屋へと向かった。まだ朝陽が顔を出したばかりだと言うのに、ルナと女将さん、まだ眠たそうなユージ達、そううえ母さんとじいちゃんまでもが出迎えてくれた。その中からユージ達が歓声をあげて駆け寄ってきた。


「カイト兄、お帰り。」

「ただいま。」

「姉ちゃんを助けてくれてありがとう!」


目に涙を浮かべたユージの頭をなでながら、いったん孤児達の元から離れた。


「女将さん、ルナ、サクラを布団に。」

「わかったは。カイト君、お疲れさま。」

「うん。ルナに任せて。」


 はやく体をきれいにしてあったかくしないとサクラが風邪を引くが男の俺がやれることではない。


「お帰りなさい。かいと。」

「ただいま。母さん。」


ユージが母さんを読んでくれなかったら、今回はもっと時間がかかっていたはずだ。


「一皮剥けたようじゃな。」

「じいちゃんには分かるんだね。」

「目付きの変化でだいたいは分かる。歴戦の猛者と闘ったみたいだな。また男前になりおって。」


最後に俺は、今日一番頑張ってくれたレックスを労った。


 それから俺は一日中寝ていたみたいだ。窓からは雪に反射した朝陽がさしていた。昨日は宿の風呂に入らせて貰い、そのまま宿で寝てしまったらしい。いくらなんでも深夜の強行軍と死闘は体力的にも限界だったみたいだ。隣で丸くなっていたレックスを起こさないようにそっと部屋からでた。俺が食堂に入るともう起きていたサクラが朝食をつくっていた。


「おはよう!昨日はありがとう。」

「家族を助けるのは当たり前だろ?」

「家族ね・・、ほらはやく食べなさい。今日はみんなのところに行くんでしょ。」


やっぱり白米と味噌汁の朝食は最高だな。あれから丸一日寝ていた俺の体全身に味噌汁の熱さがしみわたり、出来立てほやほやの玉子焼き一切れをそのままで食べる。


 朝食を食べた終わった俺とサクラは、スラム街にやって来た。


「兄ちゃん、姉ちゃん、おはよー!」

「おはようみんな。この前は心配かけてごめんね。私も手伝うから一緒に直そう。」


これは後から分かったことだが、ベアーズの下っ端がやったことらしい。ベアー本人は投獄、残りはみんな鉱山や睹殺場に飛ばされたらしい。今日はここの小屋を立て直すだけで終わってしまうだろう。そろそろ体術を教えてもいい頃だとは思うが、それは明日以降になりそうだ。ようやく小屋の修復が終わった頃には、夕陽があかく輝いていた。


「みんなお疲れさん。今までは基礎体力ばっかり鍛えてきたけど、明日からは本格的に体術をやるから覚悟しとけよ。」


 今日、俺は一人でスラムの方にきていた。そこには青空教室もとい、青空道場と呼べる光景が広がっていた。俺がここに来た理由は他でもない、体術の基礎をおしえるためだ。


「よーし、みんないったん休憩だ。」

「「「「はい!」」」」


なぜ最初に剣術出はなく体術を教えているかと言うと、武器の力に頼りすぎて己の力を過信し、武器なしでは生きていけなくなることを防ぐためだ。それに足運びなどは剣術に通ずるところもあり、体術の基礎を身に付けることは無駄ではない。


「どう。つかめた?」


今ユージ達には体術の基礎中の基礎正拳付きをやってもらっている。ただの正拳付きとは言え、身体強化魔法で強化できれば、その辺の鈍器よりも扱いやすい武器になる。それに一番初期動作が少なく感覚もつかみやすい。そしていまはただ前に付き出す感覚をつかんでもらっていた。


「なんかしっくりこないかな?」

「振りかぶらないってのがなれないね。」


みんな自分の感想を述べあっている。この調子だと明日は来なくても大丈夫のようだ。


「明日は来れない。だから休息をとりたい人は休んでもいいし、自分でやりたい人はやっててもいい。だけど組手はなし、怪我だけはしないってやくそくして。」

「「「「はーい!」」」」


それにあれだ、ハンターの依頼の中には商隊の護衛なんてある。もしそんなときに盗賊などに襲われたら、殺傷力の皆無の技で敵を無力化しないといけない。そういうときは体術のみが頼りなのだ。そうして俺はスラムを後にした。午前中の大半はあの子達に付き合ってはいるが、ラインハルト学園を受験する身である俺は、午後はしっかり座学の方にあてていたが、今日だけは特別に用事をいれていた。


「タケル!例のものできてるか?」


俺は今日、タケルの親父さんに頼んでいたものを取りに来た。


「これだけあれば、足りるか?」

「あぁ上等だ。親父さんによろしく伝えといてくれ。」


流石は大工いい作りだ。これがあればようやくあいつらに剣術を仕込める。タケルから目当ての物を受け取った俺は、その大きな袋を抱えて家に帰った。

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