争い
これはとある世界の出来事、その世界をめぐって争う者達のお話。
ある者はその身に宿し力を奮い敵を穿ち、またある者はその身に携えた得物を構えその者達を狩る。
長年に渡る戦争が繰り広げられていた、知らぬ者はおらず知る事が強いられていた時代。
「はあ..はあ..まだ死ねないんだよ..」
町の路地を駆け回る少年がいた。
その者は姿を変えた生物に追われている様で路地の入り組んだ地形を利用し巧みに逃げ回っているようだった。
「くそ..この先にもいやがる..この先にも..」
逃げ回るも怪物達に逃げ道が奪われ囲まれている様だ、その内の1体が背後からジリジリとにじり寄って来ていた。
気配に気付かずに少年は必死に思考を巡らせていた。
そして怪物は、少年に腕を振り下ろさんとした瞬間に気付くが既に遅く鋭い爪が目の前に迫っていた。
反射的に目を閉じ死を覚悟した時、突如何かがぶつかるような音が路地に響いた。
恐る恐る少年は目を開けると1人の自分より背丈の低い少年が怪物を見据え立っていた。
「..え?今何が」
そう言うと少年は気を失って倒れてしまった。
もう1人の怪物を見据えたままの少年を残して...。
「んー、この人助けた方がいいかな?..うん、うん、はーい」
少年は通信機器を使い何処かと連絡を取って確認をしている様だった。
それが終わると少年は得物を抜き怪物を見据える。
「我は命ずる。我剣に宿りし物よ、力を奮い給え。」
すると、得物が淡く光り始めた。
怪物達はそれを見て少しずつだが後ずさりをし始めるが少年の目の前の怪物は気が動転したのか再び少年目掛けて腕を何度も振り下ろした。
しかし、怪物の攻撃は何かに阻まれて少年まで届いていないようだ。
「はい、おしまい。」
それだけ言うと得物を目の前の怪物に刺さるように投げつけた。
それを至近距離で受けた怪物は後ろに倒れた。
仲間がやられたことで気が立ったのか周りにいた怪物達が囲むように少年に飛びかかる。
少年は避ける様に上に飛び上がりその場に怪物が積み重なるように倒れ込んでいた。
そこに目掛けていつの間にか手にしていた得物を投げつけ怪物全てを貫いた。
「おーい、起きなよー、流石に君は運べないよー」
少年は倒れている少年を揺さぶり自分が運べないという事を何度も呟いていた。
「んん..え、あっ..危ない!」
「へっ?」
目を覚ました少年は背後に音も無く近寄る怪物を見て助けてくれた少年を庇い怪物に身体を切り裂かれた。
すぐに対応し怪物を倒して少年は応援を呼んだ。
「ごめん、逆に守られて怪我人増えたから応援よこして」
『ははは!え?なに!?鉄壁が守られたあ!?あっははははは!』
「..五月蝿い、早く」
『は、はいはい..ぶふっ、』
「ったく..僕は大丈夫だったのに」
しばらくすると少年の元に数人の応援が現れた。
「ぶふっ..鉄壁が..」
笑いが隠せない眼鏡の女性と、
「はいはーい、治療しまーす」
おっとりとした話し方で治療を始める少女と、
「凄い勇気だな、庇うなんて」
口元を隠し、腕組みをしながら感心したような口調で眺める青年、そして
「もう全部倒したの?」
眼鏡を無視して話しかける少年の4人がその町で生きている人間だった。
つまり、今治療されている少年以外の人間は全て怪物に殺されてしまったのである。
今起きている戦争の影響で。