序章
序章
チャーリィと勇が、スクリーンを見つめていた。さっきから身動きもせずに見入っている。
赤い巨大な恒星と、青い小さな恒星が、互いの周りを複雑な軌道を描いて回っている。お互いの重力が干渉し合った結果、それらは夢のような現象を生じさせていた。
コロナが両者の間に長く伸び、フレアがデリケートな細長い塔のようにゆらゆらしている。
ライルには馴染のガルド星系の二重星だった。彼にとっても久しぶりの眺めだ。亜空間から出てこれを目にすると、やはり懐かしいものを感じる。
「ここの惑星の軌道は、しっちゃかめっちゃかだぜ。磁気嵐もすごいだろうな。やれって言うならやるけど、あまり自信は持てないぞ」
嬉しそうに勇が言う。彼にしてはずいぶん控えめな発言である。
「僕が操縦するよ。それに、ちゃんと管制塔がビーコンで誘導してくれる」
ライルが当然のように告げた。
彼等はガルド星系の外縁から数万キロメートルの所にいた。このガルドの二重連星の姿は、探査解析装置の処理映像である。
地球を発って、二週間後のことだった。
ライルの指が優雅に動き、船はガルド系の宙域の中に進んでいく。アステロイド帯でじっと蹲るように待機していた彼の船であった。
彼自ら地球に着陸させ、かつてのジャンプ時の損傷を直した。地球には、短期間で一万二千光年を踏破できる宇宙船は無かったのである。




