旅人と老馬
長めの短編です。
描写を細かく書いてみようと思って書き上げましたが、そのせいで読みにくくなってはいないかと若干不安です。
血潮沸き立つような物語ではありませんが、作者としては静かで落ち着いた趣を出せるように気をつけたつもりです。普段このような作品は書かないので余計に不安に思ってしまいますが……。
ちなみに?がなかったり、「〜。」で台詞が書かれていたりするのはそういう仕様です。わざとです。
まるで獣道のような道とも言えない雑木のトンネルをくぐり抜け、時折蜘蛛の巣を剣の鞘で払いながらやっとの思いで森の外れに村の門を見つけた。
門とは言っても木柱を二本立てただけのもので、その上に板を渡してあるだけのものだった。おおよそ魔物がいるような場所ではこのような簡素な作りの門は使われないものだが、オルティーリエ山のセイフィール女神の恩恵のためか、この辺りには魔物が少なくこうして安寧と静寂の暮らしを享受できているのかもしれない。
「旅人かい。」
門のすぐ後ろに申し訳程度に建てられたバラックから一人の年老いた兵士が出てきて言った。
この村を訪れる人間というのも限られているのだろう、その視線には物珍しそうに眺める興味と若干の警戒心とを奥に秘めていたが、それをおくびにも出さず、老兵士は木々を避けて歩んできた旅人の身なりをざっと見通して、ふんっと鼻を鳴らした。
「根無し草でね。」
旅人は手綱を引いている老馬の鬣を優しく撫でて、柔らかい微笑みをもって答えた。
老兵士が名を尋ねれば「テルミドール。」と短く答えたが、後に思い出したように「こいつはガブローシュ。」と老馬を指差した。
「ずいぶんと老いた馬を連れているのだな。」
根無し草では若い馬を買うだけの金子が足りなかったのだろうと半ば同情的な目で言った老兵士にテルミドールと名乗った男は「私の長年の相棒なのだ。」と慈愛を込めた。
そう言われてみると、なるほど老馬と旅人との間には目に見えぬ絆が繋がっているように見える。老馬がテルミドールに寄せる体の向きや、しきりに耳をこちらに向けて、視界にできるだけ多く老兵士を捉えようとしているところを見れば、老馬の旅人を思う気持ちの一端が見てとれたような気がした。
「馬を大切にする男に悪いやつはいない。」
老兵士は自らの実体験をもとについ懐かしむように呟いた。かつて辺鄙な場所にあるこの村から抜け出して意気揚々と騎士団に出向いたが、そこで十余年も小間使いをさせられた。騎士達の中には到底山の民を丁寧に扱うものなど数少ないものであったが、馬を相棒として大事に扱っているものには相応の優しさと思いやりがあったのを、老兵士は晩年になった今でも忘れていない。
「子供のころからずっと一緒にいるのだ。旅に出るからと売り払うのは気が引けた。」
そう言って老馬の背を撫でたテルミドールの表情に老兵士はこのような若者も最近は少なくなったものだと思っていたがそうそう捨てたものではないと、自身の世捨て人めいた諦観の一種を反省した。
そうして改めて見てみれば、自身に巣食う老いという抗いようのない病にそこはかとなく虚しさを覚えた。老馬がそれを見抜いたかのようにぶるると震えて慈しむような目を向けてきたように思えて、老兵士は心なしか老馬から同情されたような気さえした。
「何用で来たのだ。」
老兵士が問えば、テルミドールは「通り道だ。」と言いながらもややあって「グランゼノンに向かっている道中だ。」と言い直した。
「グランゼノン。久方ぶりに聞いた。」
そのような大きな街の名前など、辺境も驚くようなこの山間の村では口に出すことすらない。最後に聞いたのはいつだったかと思い出しても思い出せるようなものではなかった。
グランゼノン。主神ゼノンフィルデウスを奉る神聖教会の大本山。古くは聖者の巡礼地として栄えたが、今となっては帝国の首都として栄華を極め、数多くの信徒達が敬虔深い生活をする地であるとともに、帝国の政の中枢を担う都市でもあった。
老兵士は聖堂騎士団の文言を思い出しても皮肉げに感じたが、ずいぶんと世話になったものだと思い直して旅人の風貌を見つめた。
「ならば、巡礼か。」と老兵士が問えば、テルミドールは「旅のついでだ。」と答える。
老兵士はあくまでこの男は旅を目的にしているのだなと心の奥底に自らの過去にあった思いを重ねそうになったところで笑ってしまった。
「オルティーリエ山の方から来たものだから、巡礼者かと思ったのだ。」
テルミドールは老兵士の思い違いにそれもそうだと手を打った。古くからオルティーリエ山のセイフィール女神といえば山頂にある祠を目指して巡礼者たちが自らの足でもって登山するのが当然のことであった。
よくよくテルミドールを見れば巡礼者の格好をしているわけでも信徒の杖を持ち歩いているわけでもない。腰にぶら下げた一本の剣と相棒と呼ぶガブローシュなる老馬に担がせた旅道具から疑いようもなく、老兵士はただの旅人だと納得した。。
「残念だが、ウッドストックの村には宿屋はないのだ。」
老兵士は残念だと頭を掻いた。バラックの裏に村では唯一の厩があるので、ガブローシュを預かることはできるが、旅人が一晩過ごすような建物はないと説明した。
しかし、テルミドールはどこか慣れたもので、「そんなことはよくあることだ。」と一向に構いはしなかった。
「街を回っているわけでなし。巡礼地の道を辿って歩いているのだから、その程度のことは心得ている。」
テルミドールは自分は根無し草の旅人だと改めて言う。そう言われれば、老兵士としても申し訳なく感じた心が幾分か晴れたような気がした。
「いつものことだ。村を巡り、民に宿を頼み、一宿一飯の恩義を果たす。今までもそうしてきた。」
テルミドールは老馬に同意を求めるような言い草で言っていたが、老兵士はいささか感心したように喉を鳴らした。
「見上げたものだ。先月に訪れた巡礼者は村に宿がないと憤っていたが、あれはどうすることもできん。巡礼者ならば相応の振る舞いというものがある。」
確かあれは枢機卿の縁者だと言っていたか。老兵士はひとりでに納得するように頷いて、「ならばこのバラックで一晩明かすがいいだろう。」と受け入れる旨を伝えた。
テルミドールは一瞬だけ困ったように眦を寄せたが、それでも厚意を蹴るのは教義に反するだろうと右手を額に当てて頭を軽く下げた。
それを見た老兵士は巡礼者の礼もできるのだなと改めて感心した。あの枢機卿の縁者はついぞ礼を言うことも頭を下げることもなかったのにと僅かばかりの愚痴めいた思いが胸中を通り過ぎたが、なるほどあのようなものがいるおかげで、目の前にいる旅人のように見上げた若者が引き立つということも儘あることではないかと感じた。
老兵士が「まずはガブローシュを預かろう。」と厩に案内すると、テルミドールはガブローシュに「よかったな。雨ざらし野ざらしでなくて。」と大層感じ入っているように呟いたが、ガブローシュはそれをたいして気にしている様子はなく、むしろどこでもいいと言っているようにさえ思えた。老兵士は馬を好きというわけではなかったが、この老馬はどことなく人間くさく感じられて心に燭台の火種が灯ったように感じられた。
「あとはバラックならば好きに使ってくれて構わない。儂も夜には家に帰るのでな。」と老兵士が言えば、テルミドールは心なしか驚いているように見えた。
「反対の門には若い兵士がいるが、そちらも儂もこの村の生まれなのだ。家はある。」
給金は安いが生来の地に住まうことができているので文句は言えないのだと老兵士が付け加えると、テルミドールは納得したと言わんばかりに微笑んだ。老兵士にはその微笑みになぜだか少し恥ずかしい気持ちを抱いたが、それでも悪い気はしなかったので小さく頷くにとどめた。
山の谷間にあるウッドストックという村は決して美しい村というわけではなかった。しかしながら、荒れ果てているというわけでもなし。ところどころに人の手が入っていることが散見され、耕すべき畑も近くにあるわけではなさそうだが、村民の食い扶持ぐらいはなんとか保っているように見えた。とどのつまりそれらの印象が長閑な田舎の風景を映しているようにも感じられたが、さりとてテルミドールの胸中には住居だかバラックだか判別のつかぬ見窄らしい佇まいの家々から女子供の声が聞こえて来ないことに言い知れぬ侘しさが募った。
老兵士と別れてテルミドールが村の中を歩いていると、荷車を引いた後の轍がところどころに残っており、数日前の雨の水溜りが未だ乾きもせずに、橙色に染まり始めた夕空を切り取っていた。泥濘の深さを見れば、力強さをもった逞しい男の引いた跡ではなく、弱々しい老人が汗を垂らしながら懸命に引いた跡だろう。
村の中心部には渓流が流れており、オルティーリエ山からの豊富な雪解け水が岩を穿ち、半ば滝のように流れていたが、村の下流部からは小舟を浮かべられるほどに川幅が広くなっていて、どうやらこの小川を利用して伐採した木々を近くの街に運んでいるようだった。
渓流の上に架かった橋は二頭だての馬車が一台通れば道を塞ぎそうなほどに幅が狭く、手摺があるというわけでもなかったが、渓流の流れに惑わされることもなく力強く水に打ち立てられた柱を見ていると、存外造りはしっかりしているように見える。
ふと橋の上から上流の方に目を向ければ、川面に口を寄せる二頭の鹿が目に入った。大きな方は雌鹿だろう。小さな方はまだ若い、未だ乳離れできていない仔鹿のようであった。
水のせせらぎに耳を傾け、木々のさざめきに身を託し、夕闇に暮れていく空の色合いに鹿の親子を重ね見ていると、テルミドールはいつしか故郷の風景を瞼の裏に蘇らせてしまっていた。
胸中を締め付けるが如く懐かしい故郷もここほど山間にあるわけではなかったが、小川が流れ、幼い時分にはよく川遊びをして家に帰ったころには母からこっぴどく怒られたものだ。
哀愁に身を委ねながらも、テルミドールが二頭の親子を眺め続けていれば、やがて二頭の鹿のうち母親の方がテルミドールに気づいて頭を上げた。
その姿はこちらを警戒しているような臆病さを露わにしたものだったが、テルミドールは母鹿と目があったことに微かな喜びを感じていた。
それがややあって、仔鹿が顔を上げるや母の警戒心を感じ取ったのかこちらに鼻先を向けたが、テルミドールを視界に入れた途端に走り去っていった。
あれはやはり乳離れもしていない鹿に違いないと、仔鹿の後を追って走り去る母の後ろ姿を眺めつつ、テルミドールは微かに笑った。
すっかり日が暮れて夜の帳が下りると、テルミドールはバラックへと戻り、厩に預けたガブローシュの背中の荷物から干し肉を取り出した。それから蒸した後に乾燥させた押し麦も取り出したが、ガブローシュが物欲しそうに眺めるので「少しだけだぞ。」と麻袋からぎゅっと一掴みしてガブローシュに分け与えた。
干し肉を齧りながらバラックに戻れば、老兵士が鍋の取っ手に火かき棒を通してぶらさげて両手で持っているところを見つけた。厚地の布を挟むということを考えなかったのかとテルミドールは若干訝しんだが、「飯はまだだろう。ご馳走してやろう。」と言われれば、そのような瑣末なことは頭の隅から吹き飛んで行った。
老兵士が扉を開けろと言うのでテルミドールは従順に扉を開けた。
机と椅子がひとつずつ置いてあるだけで、家具というものはそれ以外になかったが、錆び付いた剣がひとつと、木こりの使うような厚い斧が壁に掛けられていた。それからもうひとつ、藁で編み込んだ敷物があり、老兵士はそれを指差して「そいつを床に敷いてくれ。」と言った。
テルミドールはそれを広げようとして机が邪魔だと気付き壁際に寄せたが、今度は椅子が邪魔になって同じく壁際に寄せた。そうして初めて藁の敷物を広げることができたが、老兵士は若干呆れているようだった。
「先に燭台を灯しておいてよかった。今日は新月だ。」と、老兵士は鍋を置き床に座り込んだ。天井から吊るされた一本の燭台は明かりを灯されており、暖かな光が綺麗に磨かれた燭台の天板に反射していた。テルミドールはそれが田舎には珍しい品だということがわかったがあえて口には出さなかった。
「珍しいか。元は硝子がついていて、油を注していたものだが、松脂が高くてな。早々に蝋燭を立てられるようにいじくりまわしたが、案外使い勝手がよくなった。」
「なるほど。元はランタンか。」
「なんだ。若造のくせに知っていたのか。」
テルミドールの視線に気づいて教えてやろうと思っていた老兵士は機先を制されたようで、ふっと笑った。
「またぎに猪肉をわけてもらった。」
「猪鍋か。それはいい。肉は硬いが味はある。」
テルミドールが故郷にもあったと言えば、老兵士は愉快だと笑った。
「猪鍋も鹿鍋も街じゃ口に入るまい。ずいぶんと昔には街に憧れたものだが、どうということはなかった。銅銭一枚でもなければ食う飯もない。ところがここにいれば食うものはそこら中に溢れている。」
老兵士のしみじみとした言葉にテルミドールはそれは皮肉だと思いながらも笑いを堪えきれなかった。
「少し待っていろ。今、皿と匙を持って来させている。」
老兵士はそう言うが、テルミドールが怪訝な顔をするので「言ってなかったな。」と頭を掻いてみせた。
「反対側の門にいると言った兵士だ。若い、それだけの男だが。」
そうこう言っているうちにバラックの扉が開かれる。
「爺さん、持ってきたぞ。」
若者は風呂敷包みを解いて皿と匙を見せたが、手前にいるテルミドールを見つけて「誰だ、この人は。」と老兵士に尋ねた。老兵士はそんな若者の言葉に小さくため息をついて「だから三つ揃えて持ってこいと言ったのだ。二人で食べるのになぜ皿と匙が三つもいるのだ。それに先ほど確かに旅人が訪ねてきたと言ったはずだ。」と捲し立てた。
「だが、旅人も一緒に食べるなんて言わなかったじゃないか。」
口を窄めて言い訳がましく若者が言うと、老兵士はため息をつこうとして寸前でやめたが、やはり呆れの方が勝ったのか大き目のため息を漏らした。
「ご老人。まあいいではないか。冷めないうちに頂きたい。」
テルミドールが間を取り持ったことで老兵士と若い兵士の下らない争いは避けられたが、若い兵士は不遜な態度でテルミドールに突っかかった。
「だから、お前は誰なんだ。」
つっけんどんな物言いではあったものの、ここは自分が余所者なのだとテルミドールは嫌な顔ひとつせずに「申し遅れたが、私はテルミドールだ。根無し草の旅人だ。」とゆっくりと喋った。
「そうかい。珍しいもんだ。」
「そうか。厩には相棒のガブローシュも預けている。ご老人のご厚意に甘えてばかりで申し訳ないが、一晩だけだと思ってご容赦願いたい。」
「そういうことなら、誰も気にしない。爺さんが変な人間を村に入れてないかと不安になっただけだ。」
テルミドールがあくまで丁寧な姿勢を通したおかげか、若者の毒気は抜かれてしまったようで、そそくさと持ってきた皿と匙を配りつつ空いたところに座った。
「さあ、食おう。」
老兵士が鍋の蓋を取ると、燭台の暖かな光が湧き出てくる湯気を微かに照らし、肉の脂と野菜の甘みが煮汁に溶け込んでいるせいか、喉を唸らせるような匂いが鼻腔を刺激した。
「美味そうだ。」
テルミドールが生唾を飲んでいうと、老兵士は「どれ。まずは客人から取り分けよう。」と彼から皿をもらって掬い入れた。それから自分の分と若い兵士の分も取り分けた老兵士は、「野趣溢れる飯でも、やはりお祈りは欠かせぬ。」と皿を下に置いて、祈りを捧げ始めた。
若い兵士は「またそれか。」と眉根を寄せたが、テルミドールも老兵士に同じく姿勢を正したので、いささか自分だけ教養がないように感じられて恥ずかしくなり、結局同じように皿を下に置いた。
「大地にまします神々よ。今日も一日の終わりに糧を得たことに感謝いたします。」
老兵士の言葉をテルミドールと若者は復唱する。これは決まりのようなものだ。その場で一番の年長者が祈りの文句を唱え、年少者はみなそれを復唱する。大事なのは年季であって、立場ではない。そのような決まりのおかげで年若きものは年長者を敬うことを教えられるのだ。
「では、頂こう。」
老兵士は瞑っていた目をぱちりと開き、今にも涎を垂らしそうな口元に皿を寄せた。
それに習ってテルミドールと若者も皿に口をつけたが、優しい味わいに胃袋が歓喜しているのがありありとわかった。
「美味いなあ。」
若者が一度それを言えば、テルミドールもしきりに頷いた。
「こいつを食うときだけは皇帝陛下よりも良いものを食っていると思える瞬間だな。」
老兵士はしみじみと呟いた。それがなんだか面白おかしく感じられてテルミドールは笑いそうになったが、すぐに皿に目を向けて大きな猪肉の筋を頬張った。
実に美味い。あまり語彙力に自信があるわけではないが、それでも言葉の限りをつくせばもっと気の利いた感想が言えたかもしれない。そう思いつつも、やはり美味いものは美味いのだとテルミドールは煮込まれてすっかり蕩けるほどに柔らかくなった筋の肉を噛み締めた。
「娘が作ったのだ。」
老兵士は芋を匙で掬いとって口に入れるやそう言った。どうやら老兵士には娘がいたらしい。
「家で一緒にいなくていいのか。」とテルミドールが尋ねれば、「もう嫁いで十年以上経ってる。」と老兵士は笑った。
「嫁いだ先がまたぎの倅だったのだ。だから鍋に猪鍋を分けてもらった。」
「鍋じゃなくて肉そのものも貰ったんだろう。」
若者が口を挟むと老兵士は大きく頷いて「干し肉を作らねばならぬ。」と言った。
それを聞いて、テルミドールはどうやらこの老兵士にも言葉足らずの非があるように思えたが、若者も若者で後先考えない無鉄砲な嫌いがあるように思えて黙っていた。
「ところで、テルミドールといったか。街に行ったことはあるか。」
「街か。どこの街だ。」
若者が尋ねるので猪肉を嚥下して尋ね返せば、若者は「どこだっていいさ。」と返してきた。
「どこだっていいとは奇妙なことを聞く。お前さんの知っているような街には未だ行ったことがないとは思うが、郷里から辿ってきた時々の街ならばよく覚えている。」
何かを考え込むように目を伏せた若者にテルミドールは「なぜ、街を気にしているのだ。」と問うたが、若者は判然としない物言いで「いや、なに、聞いてみたかったのさ。」と有耶無耶にしようと手を振った。
テルミドールは「そうか。」と再度匙を持ち直して皿の中身を口に運ぼうとしたが、老兵士が口を挟んだところで匙から赤い根菜が零れ落ちた。
「こいつは馬鹿だから街に憧憬を抱いておるのだ。」
「馬鹿は余計だ。」
またも言い争いかとテルミドールは若干眉を顰めたが、若い兵士の方は特段ムキになっている風には見えず、老兵士の方が些か教え諭す風を装いながらも彼を引きとめようとしているように感じられた。
「街に行きたいのか。何故に。」とテルミドールが問えば、若者は匙を置いてしばらく考え込むと老兵士を一瞥してテルミドールの方をまっすぐに見つめた。
「一度兵士になるためにレスキノの駐屯地に出向いたことがある。あの時は時間を持て余しているわけでもなかったから駐屯地だけしか入れなかったが、どうにも街の様子が目に焼き付いて離れない。」
街に出るのは薄情者だと村では囁かれていたが一度街の活気を見れば村の陰気な様子に嫌気が差すのも当然だと言って、若者は猪鍋をかき込んだ。
「だが、何度も言っているように街に行けば金子が必要だ。駐屯兵の給金など日に銅銭八枚程度。部屋を借りて飯を食い、酒を一杯飲めばすぐに消える。せいぜい銅銭一枚残る程度なのだぞ。蓄えなどできぬし、蓄えるものなどあって何になる。それならばこの村で冬の蓄えを作っていたほうがよっぽどよい。」
老兵士はそう言うがテルミドールには若者の気持ちもわからないではなかった。よほど街にいい思い出がないのだろうと老兵士を見れば、彼は心なしか不愉快そうに鍋の底を見つめていた。その瞳の奥に秘められた思いが懐かしさなのか、それとも怒りや後悔、あるいは別の何かなのか、テルミドールには判別のつくものではなかった。
「ご老人はそう言うが、私はそれを悪いことだとは思わぬ。街には街の良いところがあるし、村には村の良いところがある。ひとえに私が言えるとすれば、街に出て、旅に彷徨い、明日もしれぬ今日を生きたところで、思い出すのはいつも故郷のことだ。仕事を探しに故郷を出たつもりだったが、街の喧騒に浮かれて故郷の母の死に目にも、旧き友の門出にも立ち会うことができなかった。山の民が生きるために山から恵みを得るように、街にいるものたちは今日の糧を求めて齷齪働く。はじめは飯を食うだけの小銭を得ることが目的だったのに、気づけば金子を得るために働くようになる。」
テルミドールはそこで一度話を区切って「ご老人は不愉快に思うかもしれないが。」と前置きをして続けた。
「詰まる所、街にも村にも住み良い場所などありはしないのだ。大事なのは日々をどう生きるかであって、場所を変えれば万事上手くいくというわけではない。」
然るに、この村から出て行くのが薄情であるというのは些かお門違いな話だが、年長者は相応に年少ないものを気遣っておるからそう言うのだと、テルミドールは若者に言った。
老兵士はふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向いたが、若者は小さく頷いていた。よくみれば薄明かりのもとでもどこか憑き物がとれたような顔をしているように感じられて、テルミドールは幾分か若者の迷いを断ち切ることができただろうかと胸をなでおろすのだった。
「学問の神はかく言うべし。」
老兵士が思い出したように口ずさむ。それはテルミドールも知る経典の一節だった。
「汝、己のうちに槍を持て。其は決して折れぬ鋼の槍。本に学び、人に問い、自ら真理を知るが良し。本に学ばず、人に問わず、いたずらに時を遊ぶは、是己のうちに槍を持たぬ者の所業なり。行いに恥るなかりしか、気勢に劣るなかりしか、不精に亘るなかりしか……」
老兵士はそこで言葉をやめてしまい、若者は耳をそばだてたが、ついぞ老兵士は何も言わなかったので、テルミドールはかすかに微笑んで言った。
「以って己こそが大いなる敵と知れ。」
老兵士が目を剥いてテルミドールを見つめた。若者はその様子に奇妙な気分にさせられたものの、「そんな言葉よく知っているな。」とため息をついた。
「誰も街に出る若人たちを責めているわけではあるまい。なし崩しに街へと仕事を求める若人の姿勢を責めているのだ。村にいてもできぬことと諦めるは時期尚早。まずは自分が何をしたいのか、はたまた何を成し遂げようとしているのか、よくよく考え、実践してみることだ。懸命にやってみて、それでもダメならば周りを巻き込み、必要とあらば街に行けばよい。学問の神アプロディウスが仰ったとは言うが、何事も詰まる所は自分が最大の敵であろう。場に流され、人に流され、世の流れに乗ろうとしてしまうのは人のさがであろうが、よく学び、よく考え、よい行いに努めれば、自ずと周りの環境もよくなっていくものだ。」
老兵士は知った風な口を聞くなと怒鳴りそうになったが、テルミドールの優しい顔つきを見ていると怒鳴る気力が失せた気がした。若者だと思っていたが、自分がどれほどに褒められることをしただろうかと思い返せば、根無し草の旅人の方が世間をよく理解しているように感じられた。きっとこの旅人にも自分と同じような間違いを犯した日々があったのだと知り、老兵士はムキになっていた自分の感情がひどく不愉快に思えた。
思えばその日暮らしにも劣るような根無し草に身を落とす旅人である。行商人ならばいざ知らず、小銭もないまま自らの脚と老馬だけで旅をすることがどれほど恐ろしいことか、老兵士はつくづく自分の人を見る目が間違っていたと知った。
「大工になりたい。」
若者は鍋の底を眺めていたかと思うと短くそう言った。突然の発言に老兵士は目を見張ったが、テルミドールは落ち着いて「何故に。」と問うた。
「ウッドストックでは年に五百の丸太を税に収めなければならない。毎日一本から二本を村の男衆が切っても、それを使うのは街の人間たちだ。お前さんも村を見たならわかるだろうが、村の連中は掘っ建て小屋のような住まいで寒さを凌いでいるようなものだ。このバラックよりかは幾分ましなんだろうが、自分たちで切った木も使わず、街に流す現状は不満だ。」
だから俺が街で大工仕事を覚えて村の連中の家をもっといいものにしてやりたいのだと、若者は肚を決めたように言った。
「そんなことを考えていたのか。」と老兵士は先ほどから続く驚きの連続に目を瞬かせた。
「俺はなにも街に憧れているわけじゃない。街の建物を見て、あれなら村の連中も寒さに凍えることもないだろうにと思っただけだ。」
どこか言い訳のように感じられた言葉だったが、テルミドールはそれを言い逃れだとは思わなかった。むしろ無鉄砲が転じて殊勝な心構えだとさえ思った。ある意味でこのような若人ならば無鉄砲なぐらいでいいのではないかと思ったのだ。
老兵士は何かを言おうと考えあぐねている様子だったが、結局上手い言葉が見つからなかったのか何も言わずに空になった鍋の蓋を閉じていた。
「まあ、いずれは、という話だ。今すぐに街に出たいわけじゃない。それにどうしたって今のウッドストックには俺と爺さんしか兵士はいないのだから、大工になりたいと抜け出すわけにもいかん。」
若い兵士が老兵士の寂しそうな顔を見て言った。それはどこか諦観を込めたもののようにも思えたが、テルミドールには殊更に若い兵士が老兵士に対して恩義を感じているように思えた。
狭い村の中で仲間や友人と呼べるような同じほどの年頃の若人もおらず、どうしたって老人たちとの会話が主だってしまえば、中々に若い兵士の情には老人たちを残していくことの罪悪感が滲んでいるように見えた。しかしながら、テルミドールからしてみればそれは一向に悪いものではないように思えたし、若い兵士が己の内の槍に従わずとも、それはそれでいいような気がした。むしろ、この青年の街へ行きたいという動機が情に由来しているものだと知って、ならばそれもいいだろうと頷くに至った。
「よいのか。それで。」
老兵士はいっそ清々しい表情を浮かべている若い兵士を問い質すように一言だけ言った。若い兵士は「爺さんだけ残して行くのもなあ。それに若いもんは俺とあとは一人二人しかいないのだし。」とそれもまた「時機が悪い。」と笑って見せた。
ことここに至って、テルミドールには無鉄砲な若者とそれを窘める老人という分かり易い対立だったわけではないのだと気付いたが、偉そうなことを言った手前滲み出るような恥ずかしさを胸の奥底に押し込んだ。そのせいか若い兵士に便乗して「時機が来れば大いに学べ。」と調子のいいことを言ってしまったが、吐いた唾は飲み込めず、どうにもしくじってしまったと頭を掻いた。
「あんたの話を聞かせてくれ。」
もうこの話は終わりだとばかりに、若い兵士が気持ちを切り替えて尋ねてきたので、テルミドールもこれ幸いにと「旅の話か。」と聞き返したが、老兵士は些か決まりが悪そうにしているだけで特に何も言うことはなかった。
「どんな旅をしているんだ。」と若い兵士が問うので、テルミドールはざっくばらんに話して聞かせるつもりだったが、様子を見るに外の話に飢えている節が見受けられて、時々詳しく語った。
帝国の南から一路西に向かい国境沿いに進んでいると海が見え、港町で食べた魚が美味かったとか、あるいはそこから戻って街道沿いに進んだ先の地は穀倉地帯で一面麦畑だったとか、それらの懐かしい思い出を旅愁豊かに語れば、若い兵士は「いいなあ。旅とは。いつか俺も愛馬と共に旅に出たい。」などと話を掘り起こすようなことを言ったものの、「お前は馬にも乗れぬではないか。」と老兵士が揶揄い、三人揃って笑った。
「一体いつから旅をしているんだ。」
「さて。覚えていない。気づけば根無し草で、傍には相棒がいたのだ。」
「そんなものか。」
「そんなものだ。」
テルミドールの答えに若い兵士は釈然としない様子だったが、老兵士は物知り顔で二度三度と頷いて「そういうこともあろう。」と言った。
「根無し草の旅人となれば、無論頼るよすがもなく、故郷に思い残すこともなく、ただひたすらに歩き通すだけの気概がなければならぬ。」
老兵士は誰かを思い出しているようだったが、テルミドールはそれもまた老兵士の過去の幻影のように感じられて黙っていた。思い返せば頼るよすががなかったわけでも故郷に未練がなかったわけでもない。しかし、老兵士の言葉を聞けば、旅を始めたころの自分はそのように思っていたと振り返ることができた。
「だが、寂しいものだ。それぞれの土地で新しいもの珍しいものを見つけても、その時の気持ちをともに抱いてくれる人もなし、ただ長年の相棒に語りかけるだけでは味気がない。」
テルミドールの言葉に老兵士はハッとしてしばし口を噤んだが、ややあって「すまぬ。無神経であった。」と頭を下げた。若い兵士が老兵士を責めるように一瞬睨んだが、テルミドールはくすりと笑って見せた。
「気にしないでくれ。私は所詮根無し草。今更頼るよすがもなし。故郷への思いは未だに残ってはいるが、帰りたいほどに強くここにあるわけでもない。」
そう言ってテルミドールは軽く胸を叩いた。
「初めのうちは面白いものを見つけて、何かに人生を通して没頭したいと軽い気持ちで考えていたが、ついぞそのようなことは存在しないということに気づいたのは最近のことだ。結局自分の心のうちが我武者羅にならなければ何事にも没頭などできぬし、今となってはこの旅路の行く末が私の終の住処となるだろうとさえ思っている。」
いかにも感慨深げにテルミドールが言うので、若い兵士は固唾を飲み込み、一方で老兵士は小さく頷いて「好きに生きればよい。所詮は人の一生。神々の思し召しに沿うだけのこと。」と呟くように言った。
若い兵士は「さきほどと言っていることが違うぞ、爺さん。」と指をさすが、老兵士が何かを言い返す前にテルミドールが「若人には頼るよすがも故郷への思いもあるではないか。」と言うので、若い兵士はどこか決まりが悪そうに「しかしだな。」と俯いたが、その様子に老兵士とテルミドールは思わず笑ってしまった。二人の笑いに吊られたのか、若い兵士も笑ってしまったが、老兵士が「まずは乗馬の練習をせよ。」と澄ました顔で言うのでどうにも締まりが悪い結果にまた俯いてしまうのだった。
「さて、今日はもう遅い。テルミドール殿も長旅でお疲れだろう。儂はこれにて失礼する。」と老兵士が切り出したらば、若い兵士はもっと旅の話を聞きたいのか若干目を右往左往させた後に「ならば俺も帰る。」と立ち上がった。
「宿のみならず夕飯まで馳走になってしまった。忝い。」
テルミドールも立ち上がって老兵士に巡礼者の礼をした。
「よいよい。気にするな。珍しい話も聞けたことだし、今宵は気分がいい。」
老兵士はすっかり冷えた鍋を持つと立ち上がり巡礼者の礼をもって答えた。若い兵士も見よう見まねで礼を返したが、あまりそのような作法に通じているわけではなかったようで、少しばかりぎこちない礼となったが、テルミドールは頭をさげて礼を返したのだった。
翌る朝。
朝日に照らされたバラックの扉を開けてテルミドールがバラックから顔を出すや、木々の隙間から小鳥の囀りがくぐり抜けて彼の耳を貫いた。彼にとっては早朝の小鳥の囀りなど慣れたものだったが、今朝だけはどこか違った心持ちを抱いた。
それがどういうものの類かわからぬまま、テルミドールは首を捻りつつも仕方のないことだと諦めて厩に向かった。
厩に待つガブローシュを見れば、テルミドールは優しげな視線を大きな双眸に向けて微かに微笑んだ。
ガブローシュの傍に干草の入ったバケツを見つけて「ご老人がしてくれたのか。よかったな。」と相棒の背を優しく叩いた。
相棒が震えると、「なんだ、ご機嫌だな。」とテルミドールはガブローシュに尋ねたが、無論返事はない。それどころか自分で言った言葉になにやら奇妙な心持ちを抱いてしまった。
「ご機嫌なのは私の方だな。」
テルミドールがそう呟くと、ガブローシュはその通りだと言いたいのか短く嘶いた。
苦笑しつつも手綱を引き寄せて厩を出れば、山吹色に輝く稜線が視界に入って目の奥がじいんと痛んだ。目頭を軽く押さえるとガブローシュが首をテルミドールの頭に擦り付けてきたので、彼は「馬鹿にしているのか。」と口を尖らせたが、ガブローシュはそれもどこ吹く風で知らぬとばかりに顔を背けるのだった。
「綺麗な朝日だな。」
老馬ながらも毛並みのいいガブローシュの鬣をそっと撫ぜ、テルミドールはくすりと笑う。
「ガブローシュ。どうやら私にもセイフィール女神の恩恵が与えられていたらしい。」
思い返してみれば、そうとしか考えられなくなった。
「これもまた神の思し召しなのだろうな。」とテルミドールが言えば、老馬は鼻っ面で彼の背中を軽く押す。
「なんだ。気に食わないのか。」
テルミドールが問えば、ガブローシュはまたも顔を背けた。思えば生まれた頃はずいぶんと暴れまわる馬だったが、今となってはおとなしく、いや、ずいぶんと人間臭くなったものだなと、テルミドールは相棒の背を軽く叩いた。
それが荷物を載せる合図だとガブローシュも心得ており、ガブローシュは大人しく体の向きを変えて荷物を載せやすいようにした。
テルミドールは晩のうちに取り出した毛布を折りたたんで紐で縛ると、ただの荷台と化した鞍にくくりつけた。
「今日はどこまでいけることやら。もしかすると野宿する羽目になるかしらん。」
確認するように独り言を言うも、ガブローシュからの返事はない。
村の中を進んでいると、昨日見つけた轍の水溜りに薄い氷が張っていた。もう春になったとは言え、朝はまだまだ寒いものだった。吐き出した白い息を見つめてテルミドールは「よし。」と気合を入れる。
氷に反射する山吹色の光を見つめてみると、もう目の奥は痛まなかった。
反対側の門に向かってガブローシュを連れて歩いて行くと、川の畔で洗い物に勤しむ妙齢の女性を見つけた。
橋にさしかかったところで女性がテルミドールに気づき、訝しげな表情を向けてきたが、テルミドールは軽く微笑んで会釈した。
若者はいないように思えたこの村にも若い女性がいたのかと驚いたが、そういえばあの若い兵士はもう一人二人は若者がいると言っていたではないかと思い出す。
だが、どうにも見つけた女性はそこまで若いようには見えなかった。もしかすると一世代かもう一回りは上の女性かもしれぬと思ったが、そこまで若作りの女性がいるものかと思ってテルミドールは苦笑した。
まあよいと、視線を上流に向ければ、そこには昨日の夕闇の最中に見た景色が朝の陽光を浴びて輝いていた。滝のように流れる水の飛沫は光を浴びて煌き、川面からはわずかに湯気が立っているように見えた。
昨日見かけた親子の鹿はいないのかと少々残念に思ったが、川で洗い物をする女性がいるのではそもそも水を飲みに来ることもないかと気づいた。
「行こう。ガブローシュ。」
そう言って手綱を引いたが、相棒はそれに反して立ち止まる。
「どうした。ガブローシュ。急がねば次の村まで行けないのだ。」
そうは言ってみたものの、ガブローシュがなにやら首を振るので視線を向ければ、先ほどの女性が洗い物を終えて立ち去るところであった。女性は木々の隙間を抜けるようにしてごつごつとした岩を渡り歩いて登っていく。その手には昨晩に見た鍋があった。
「なるほど。それで。」
ガブローシュはぶるると震えてみせた。
「確かに恩を返していなかったな。」
テルミドールはガブローシュの忠告ともいえぬ嘶きに苦笑して頷いた。
「これぐらいは許されるだろう。」
テルミドールは先ほどの女性が通っていった木々の方へと指を向けて集中を高めていった。
するとみるみるうちに木々が横に避けていき、石の階段が出来上がった。
「ふう。少し疲れるな。」
そう呟くとガブローシュはこれぐらいして当然だと言いたいのか、首を彼の背中に押し付けた。
「わかっているよ。ガブローシュ。恩は返さねばならぬもの。」
あの女性はきっと老兵士の娘だったのだろうと当たりをつけて、テルミドールは去って見えない彼女へ向けて巡礼者の礼をした。こういうのは気持ちだけでもしておかねばいけないのだとテルミドールは思っている。
「さあ、今度こそ、出発だ。」
テルミドールがそう言えば、ガブローシュは短く嘶いた。
あまり変化は感じられない嘶きに聞こえたが、テルミドールにはなんだか励まされたように感じられて嬉しくなった。
ご拝読いただきありがとうございます。
如何だったでしょうか。
拙作はずいぶんと推敲に時間をかけたものでして、風景の描写や登場人物たちの機微に至るまで気を遣ったつもりなのですが、かえってそれで読みにくくなっていやしないかと不安です。
この拙作のテーマは大それたものではなく、ただ「情・恩・郷愁」といったいかにも人間染みたものをテーマとしております。
ですからあまり躍動感はなかったでしょうが、それでも作者として一定の満足はしています。書き終わってなお「ここはもっと風景の描写を入れたかった」とか「このときの感情をもっと綺麗にまとめたかった」とか色々と思うところはありますが……。
ご意見ご感想首を長くしてお待ちしております。
どのようなものでも構いません。誤字脱字、あるいは否定的な意見もぜひともお寄せください。作者の明日の糧とするつもりです。もちろん、喜んでいただけたような感想であればもっと嬉しいかぎりです。
ではでは、最後までお付き合いいただきありがとうございました。