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~初めての仲間~

「私はあの時、ある確信に至った。横須賀士官学校へ入学して正解だったと。それは、素晴らしい同期の桜になる仲間達と出会い、その後の活躍出来たのだから。」*旭日日誌より抜粋

「あら、その方があなたの恋人なの?」

 不意に声をかけられ、二人は振り返った。

「えっと…主席の…」

「私は、主席とは思ってはいませんよ?主席なら、その女子なのでは?」

 扇子の先を静巴に向ける。

「そうかな?私は、あんな簡単な問題は五分足らずで解いて、書き出す方が時間がかかったが…」

「いや、もうそれ十分過ぎるでしょ?」

 源三郎は、静巴の感覚のズレにツッコミを入れる。

「あなたも面白い人ですね?名は?」

「私は、山塚 源三郎。乙種候補生です。」

「ふふっ。そんなに堅くならずとも…」

 広げた扇子で笑っている口を隠す。

「いえ、主席の上に皇族と在らせましては。それに…」

「それに?」

「今上陛下の令嬢と存じれば尚更のこと…違いますか?」

「…あなたは抜け目が無いですね。これでは、言葉のお遊びが出来ませんわ。」

「あはははは…」

 両目を軽く瞑って可愛い仕草で拗ねている相手に、源三郎は苦笑いした。

「冗談はこのくらいにして、紹介が遅れたわ。私は、旭日宮(きょくじつのみや) 依子(よりこ)。静巴とは少々話し合って、式が開始するまで会話を楽しんでいたの。」

「彼女は素晴らしいぞ?何せ、ほぼ変人扱いの私の話を聞いてくれたのだよ…」

 静巴は、少々感傷に浸っているようだ。

 確かに、今まで親身に聞いてくれる相手としたら、現時点では源三郎と依子ぐらいだった。

「あ、変人って自覚はしてたんですね?」

「酷い!」

「あっはっはっはっ!」

 痛快とばかりに笑い飛ばされる。


 その後、寮前に集められた荷物を持って寮部屋の割り当てられた部屋へ行く。

「ここか、乙201号室は」

 ノックをする少女。

「どうぞ~」

 既に入室している生徒が居たようだ。

「入るぞ」

「は~い」

 そこには、ベットの上で壁に背を預けて読書をしている源三郎が居た。

「お、同室の者か?」

「はい」

 源三郎は、ベットから降りる。

「私は、山塚源三郎です。今後、よろしくお願いします」

「私は、松本(まつもと) 百合子(ゆりこ)。こちらこそよろしく」

 御互いの紹介も済んで、源三郎がお茶を淹れる。

「え~っと…松本さん?」

「あ、私は百合子って呼んでくれ。名字で呼ばれるのは、好きじゃない」

「分かりました。では、百合子さん?その長物は…何ですか?」

「これか?これは家宝の一つ、無名の日本刀だ。名前付けてないから正直呼び辛い」

「日本刀なんですか。お茶です」

 源三郎が百合子にお茶を差し出す。

「すまんな。…まあ、あとは鍛錬用の木刀くらいかな?」

「剣道ですか。私も少し武道の空手をかじってましたが、そんなに強くは有りませんよ」

「男が弱いと吐いてはいけないだろう」

 百合子は、屈託のない笑顔をする。

「ですよね。連続で三〇人を相手して息切れなんて、まだまだですよね」

「ちょっと待った。それはおかしいぞ?君勝ってるじゃないか」

 現実とはかけ離れた言葉に耳を疑う。


「甲201号室と…ここかな?」

 一方、一人の少女が、割り当てられた部屋の前に立つ。

「自分の名前だけ確認してきてしまった…」

 人混みが激しかったので、自分の名前と部屋の番号だけを確認して来てしまったらしい。

「学生帽が既に二つ掛けてある。しかたない…」

 少女は意を決して扉を開ける。

「失礼…」

「あ、千里。お久し振り」

「依子!?一緒なの!?」

「まあね?とりあえず入って」

 少女は、知り合いである依子が居たことに安堵した。同時に、安堵できない要素も感じ取ってはいたが…

「とりあえず、私は朝倉(あさくら) 千里(ちさと)、華族出身。依子とは、里親が同じだったので知り合いだ」

「私は、山口静巴!よろしくね!」

「気分が高いわね?良いことでもあったの?まあ、士官学校へ入学なら分か…」

「いや!美女が二人もいる部屋に入れて嬉しいのだ!」

「え?」

「え?」

 静巴の発言に、依子と千里は恐怖を感じた。

「静巴?あなた、女の子…よね?」

「そうだが?なら、胸触ってみるか!」

 静巴は、恥ずかし気無く依子の手を自分の乳房に当てる。

「ちょっ!?静巴!」

「ほら?ちゃんと弾力があるではないか!」

「あ、本当…大き」

「依子ォオ!戻って!何時もの依子に戻って!!」

 依子が何かに堕ちかけると悟った千里は、慌てて依子を静巴から引き離す。

「…ハッ!?わ、私は一体…」

「いや~千里は勘が良いな~♪」

「全く…あんた、只者じゃないわね…」

 静巴は、ニンマリと笑う。

「そうだ。私は…」

 その時、扉をノックする音がした。

〝静巴さん?源三郎です〟

「うむむ…入って来てくれ!」

「はい。失礼します」

 源三郎と百合子が入って来る。

「なんだ、乙か」

 千里がボソっと呟く。

「何だ」

「止めてください。歪みあっても埒があきませんよ」

 百合子は、千里の愚痴に腹を立てかけたが源三郎に抑えられた。


「源三郎君!君は、良くも悪くもタイミングがいいな!」

「何言っ…あっ」

 源三郎は、依子を見るなり溜息を吐く。

「静巴さん…確かに可愛い女の子見て発情するのは止めませんが、少しは行動を抑えてください…」

「発情は良いの!?」

 千里は、思わず声を荒げる。

「この人に発情するなと言うのが無茶な要求です。むしろ、同じ部屋になったことと可愛いや綺麗と評された自分を呪ってください」

「そ、そんな乱暴な…」

「勿論、私も最大限の助力はしますが、男子禁制の領域まで踏み込むことはしません。あとは、自分で自分の身を守ってください」

 源三郎は、千里に(本人にとって)非道な宣言を突きつけた。

「とりあえず、お茶にでもしましょう。お菓子持って来ましたよ」

「おお、ありがたい!早速茶会としよう!」

 静巴と源三郎が空気の流れを変えてお茶の準備をし始める。

「…(変な奴らだな。でも、嫌いではないな。こういう奴らが同い年にいるとは…)」

 百合子はそう思った。

「とりあえず、私達だけでも自己紹介をしょう。私は、旭日宮依子。よろしく」

「私は松本百合子」

「朝倉千里。この部屋に割り当てられて若干の後悔を持ってるわ…」

 千里は、やや暗くなる。

「私と一緒の部屋になったのが後悔とは…私は哀しいよ。ねえ、源三郎君?」

「そーですねー(棒)」

「あ!棒読みだな?本気ではないな!」

「静巴さんは、もう少し自重を学ぶべきです」

 源三郎は、お茶を淹れて三人に配る。

「それは言えてるわ。本当なら、もうちょっとではなくかなりと言いたいけど…まあ、源三郎のいう通りにしないと静巴が狂ってしまいそうだわ」

「「(既に狂ってるけど…)」」

 依子の妥協とは言えない妥協に、百合子と千里の偶然なる意見の一致が見られた。 その後、静巴と源三郎の自己紹介が終わって楽しい茶会を過ごした。

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