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~横須賀の波浪~

「私と彼がどうしてここに来たのかは、心当たり程度なら分かる。だが、それは墓場まで持って行くよ。何せ、超が何個も着く程に最重要機密だからね。」*「最良とは?」特別枠書付文抜粋

 1938年8月15日横須賀

 ここは、横須賀鎮守府。日本有数の〝要塞〟の異名を持つ軍港だ。

「ふぁ~…今日も一日頑張るぞ~。」

 今日も平和…のはずだった。

「…あれ?」

 海軍士官である彼が知らぬ船…。

「こんな(フネ)横須賀(ウチ)に在ったっけ?」

 思わず足を止めた。

「白い船体…?なんだこの構造物は…?」

 見慣れぬ船体が視界を覆っていた。


 横須賀鎮守府艦隊司令部

「失礼します!緊急事態です!」

 士官が鎮守府司令長官の執務室に飛び込んだ。

「何ごとだ?」

 長谷川 清は、目線を上げた。

「はい!第三埠頭に、謎の大型船舶が現れました!同船舶の所属等は一切不明です!」

「…。」

 長谷川は、後ろにある窓で埠頭を覗き込む。

「民間船舶が迷いこんだか?」

 士官の報告通り、そこには謎の大型船舶が居た。

「いかが致しますか!?」

 少し考える長谷川。

「…海防艦でも良いから、湾外に展開させ離脱ルートを遮断しろ!」

「はっ!」

 バタン!と大きな音をたて、士官は部屋を飛び出していった。

「やれやれ…また、厄介なことが起きそうだな。」

 長谷川は、謎の船舶を覗きながら受話器を取った。


 一方、大型船舶の内部では…

「う~ん…あれ?ココドコ!?」

 少年が目を覚めして、今いる状況に驚いている。

「うーん…」

 その時、少年の直ぐ横で寝返りを打つ少女が居た。

「あ、静巴(しずは)さん。起きてください。」

 少年は、急いで少女、静巴を起こす。

「あと五ふ…24時間…。」

「そんなに待てるか!」

 どう見ても一日待てる状況ではありません。

「おかしいんですよ!場所全然違うんですよ!」

 少年が少女を揺さ振る。少女は、観念してムクリと起き上がる。

「おお!汗滴る一日が始まったんだな!?」

 少女は飛び上がった。少年とは対照的にウキウキしている。

「んなわけないでしょう…。じゃなくて!」

 状況把握をするために、部屋を出る。

「…船の中?」

「そのようだな。」

 急に真顔になる静巴。

「…〝大国の主〟だな?源三郎(げんざぶろう)君。」

「入った記憶はありませんがね?」

「外に出てみよう。何かわかるかも。」

「分かりました。」

 少年こと、源三郎は、ドアのハンドルを回して開ける。

「…居ませんね?」

「そうだ…ん!?」

「…っ!」

 目の前には顔。見慣れない服装だが…

〝ゴッ!〟

「うっ!」

 不意に衝撃を喰らい、あっさりと倒れこむ静巴。

「静巴さん!一体どうした…」

 源三郎が静巴を受け止めた瞬間、目の前には軍服姿の男達がいた、何人も。

「動くなっ!」

 その男達からライフル銃を向けられた。

「一体…どういう…」

 二人は、考える間もなく、動けなくなった。


 横須賀鎮守府

「おい!陸戦隊が突入してるぞ!一体どういうことだっ!」

「わかりません!戦隊長単位で指示を出したものかと!」

 それを聞いて額に手を当てて溜め息をする長谷川。

「これ以上荒らすなと言え。」

「はっ!」

 部屋を飛び出していく士官。

「バカ者共め…」

 長谷川はやれやれといわんばかりの表情で受話器を取った。

「…鬼河さんですかな。残念ながら、私の部下が中を荒らしてしまったようです。」


 横須賀鎮守府営倉

「とりあえず、ここで大人しくしてもらおうか。」

「もうちょっと待遇いいところに…」

「おーい撤収だ。長谷川長官に報告を入れるぞ。」

 静巴の図々しい要求は、キレイにスルー。

「痛てて…奴らは誰なんですかね。」

「軍人達だな!それで、私達は大ピンチという訳だ!」

「この危機的状況で、よくも笑っていられますね。」

 俺には無理だ、と源三郎。

「それに、大国の主は私と君だけしか動かせないようにしてあるぞ!」

 そう言って、マスターキーを見せ付ける静巴。

「はいはい。音量を抑えましょうね。」

 本当に、テンションが高い…

「そうじゃ、ここは声が響くんじゃぞ?」

「そうですよ、さっきから耳に響く…」

 え?今誰が喋った?源三郎が、声の方に振り向く。

「なんだ、童の声が聞こえるのか?」

 声の先、海軍の第二種軍装を身に纏った少女が一人。しかも左胸一杯に勲章が着いている。

「静巴さん、腕上げましたか?攫っちゃって…」

「何を言う!攫うのは、これからだぞ!」

 全く、頭が痛いことをしでかしてくれる。

「さ、攫うって童をか!?」

「大丈夫大丈夫♪私の好み通…グヘッ!」

 今にも飛び掛りそうな静巴を、羽交い絞めする源三郎。

「静巴さん、抑えてください。」

「源三郎君のいけず~!」

 源三郎は、静巴の興奮が収まるまで羽交い絞めを続けた。

「そういえば紹介が遅れました、私は山塚 源三郎です。」

 ゆっくりと自己紹介をした。

「三笠だ。見たところ、日本人か?」

「はい。私達は日本人ですが…」

「ということは、時間でも遡ってきたと見える。」

 セリフからして、ここは日本なのか?

「おぬしらの時代は何年じゃ?」

「2020年ですね。」

「ほう。」

 興味深そうな三笠の相槌。やはり、タイムスリップをしてしまったのであろうか。


 ここは、横須賀航空基地。

〝…ドン!〟

「おおっと。」

 入間にある「空軍航空学校」から来た航空機が、危なげなく着陸した。

「ご苦労さまです。」

「やっぱりコイツは使いづらいな。」

 しまっといてくれ、と短く言うと待っていた軍用車へと乗り込んだ。

「横須賀で何があったんだ?」

「不思議な船が現れた模様です。…それ以上はわかりかねます。」

「(情報を極力隠したいらしいな、長官らしい。)…分かった。」

 それから、十分ほどで鎮守府の門へと着いた。

「おっと!」

「おっ、これは鬼河さん。」

 鎮守府の扉を開けた瞬間、長谷川と出会いがしらだった。

「どんな状況ですか?」

「説明するより、見ていただいた方が早いでしょうな。」

 埠頭のほうを指差した。

「あれが突然、現れましてね。」

「…。」

 じっと船を見る鬼河。

「乗員はおりましたか?」

「二人いたようですね。若かったと。」

「その者との面会をお願いしたいのですが。」

「いいでしょう。」

 そういうと、再び鎮守府へと足を向けた。

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