第7話:夏美、スーパーシャイニーの生命
怪獣ラフレとの戦いの後に高熱を発した夏美は、誠によって地球防衛軍基地内の病院に運び込まれ、緊急治療を受けた。
しかし、毒花粉によるものと、原因不明の高熱があり、治療は困難を極めた。
とりあえず応急処置だけ施され、その後は容態を見る事となった。
その日の夜、夏美の下に何者かが現れた。
「シャイニーよ…!シャイニーよ…!」
「…お父様?」
夏美の夢枕に現れたのは、夏美、否、スーパーシャイニーの父であった。
「お父様、どうして来られたのですか?」
「シャイニーよ、お前に伝えたいことがある。聞きなさい。お前はよく地球を守るために懸命になって戦った。そのために、お前は疲弊し、戦えば命を削るまでになった。お前が戦える回数はあと2回だ!」
「え、…、そうなのですか?」
「お前も知っての通り、私も遥か昔に超人として戦って来たが、最期にはこのように精神だけの存在となった。お前は未だ若い、もう少し自分の命を大切にしなさい。」
「しかしお父様、それでは地球はどうやって守れというのですか?」
「それはお前や地球人が考えなさい。」
そう言い残して、シャイニーの父は姿を消した。
「私が…、私がいないと地球は…?」
夏美はこれからも侵略しに来るであろう宇宙人の事を考えると、地球を守るためにどうすればいいのか分からなくなってしまった。
「私が変身できるのもあと2回が限度…、どうしたらいいの…、誠先輩、わたしどうしたらいいの」
ベッドの上ですすり泣く夏美だった。
翌日、夏美の事が気がかりな誠が夏美の病室にやって来た。
「夏美ーっ、いるかーっ!着替え中だったらごめんなーっ!」
病室のドアを開けた瞬間、寝汗でベタベタになったパジャマ下着を着替えるために、丁度下着を替えたばっかりの夏美が目の前に現れた!
「わ、わ、わ…、な、夏美…!」
「へ…、え…、ひ、ひっ…、きゃあーっ!」
予想だにしなかった事態に、誠も夏美も気が動転してしまった。
「な、な゛、夏美…、まさかホントに着替えて…?」
「いやーっ!見ないでーっ!」
「いや、あの、その…?」
「見ないでーっ!早く出てってーっ!」
「別に見たくて入った訳じゃなくて…。」
「いいから出てけーっ!」
夏美の悲鳴とも怒鳴り声ともつかない大声に、誠は部屋のドアを急いで閉めた。
数分後、恐る恐るノックした誠が病室に入った。
夏美はドア側を背にして、ベッドの上に腰掛けていた。
「見た?」
背中越しに低い声で話す夏美の迫力に負け、誠は恐る恐る話した。
「み、見てないよ!」
「嘘おっしゃい!見たでしょ!」
「いや、見てない!ホントに見てません!」
「…、わかった、信じるわ…。」
「…ありがと。」
(もし、見えたなんて言った日には…。)
誠は何とかごまかせたと思い、ホッとしたが…、
「…先輩。」
「えっ?」
夏美が今度は優しい口調で誠に問い掛けた。
「私のブラとパンツ、何色でした?」
「うん、ピンク色!それもシルクのいいやつ…ハッ!」
「やっぱり見てたじゃない!」
誠に振り向いた夏美は目をつり上げ、顔を真っ赤にして怒鳴り声をあげた。
「いや、あの、その、見た…、否、見たんじゃなくて見えた、そう、見えたんです!」
「どっちだって一緒でしょ!変態!」
「だからわざとじゃないって!」
「女の子の着替えを覗くような人を信用出来ませんっ!」
「お前こんな時に女の子って…。」
「あ゛ぁん!」
「…ごめん。」
「許さないっ!」
「許して!」
「痴漢は許しません!」
「そこを何とか…。」
問答の末に、夏美はある事を思いついた。
「…じゃあ、私の言うことを聞いてくれますぅ?」
夏美が退院してから誠も非番になった日に、2人は基地近傍にある海水浴場にやって来た。
「何だって『海に行きたいから連れてって!』がアイツの願いなんだよ?」
海の家で着替えを先に済ませた誠がブツブツ言いながら夏美を待っていた。
しばらくして、水着に着替えた夏美も現れた。
「せんぱーい、お待たせーっ!」
誠の目には紺地に胸にひまわり柄の入ったビキニ姿の夏美が映った。
「どう、似合いますぅ?」
ニコニコした夏美が何度も体を揺らしながら誠に尋ねた。
「ああ、カワイイよ。」
「カワイイ!カワイイ!」
可愛いと言われた夏美が満面の笑みを浮かべて話した。
「水着だけに決まってるだろーが!」
「え゛?」
誠の言葉に夏美は再び機嫌を悪くした。
「先輩、この前私に嫌らしいことしましたよねえ?」
「もう、時効だろ?」
「良いんですか?言っちゃいますよ、大声で!」
「わ、ばか、止めろ!」
何とか夏美の機嫌を元に戻した誠は、夏美と海の家の外にある男女兼用のシャワーを浴びに行った。
(夏美の奴、まだ怒ってるのか?女って怖いな…。)
と思って、これからシャワーを浴びようとした誠の右半身に誰かが水をかけた。
「え?あ、お前!」
誠が右側を見ると、そこには、水の出たシャワーを手に持ち、イタズラした子供の笑顔になった夏美がいた。
「やったな!お返しだ!」
誠がお返しとばかりにシャワーを夏美に向けて浴びせた。
夏美は小声で、
「きゃっ!」
と可愛い悲鳴をあげて身を少し屈めた。
「クスクスクス。」
そんな2人を見た他の海水浴客達の何人かがくすくすと笑い、それに気づいた2人は恥ずかしがりながらシャワーの掛け合いを止めた。
「も~う、先輩って子供なんだから!」
「お前の方が先にしてきたんだろ、ガキ!」
「本っっ当に先輩って頑固ですね!そんなんじゃ宇宙中の女の子にモテませんよ!」
「えらく話を広げるな!第一、お前は俺の彼女でも何でもないんだからな!」
「私のセリフですよ!」
「それに何でお前は海に来たがったんだ?」
「それは…?」
誠の問い掛けに、夏美は言葉を濁した。
「…ったから…。」
「何?聞こえなかった?」
夏美は小声で答えてきた。
「だって…、今まで海なんて行ったこと無かったから…。」
「海に行った事無いって?今時居んのかよ?」
半ば呆れた誠の言葉に、夏美はカチンと来た。
「しょうがないでしょ!私の故郷に海なんて無いんだから!…ハッ!」
夏美は慌てた。スーパーシャイニーである自分の生まれた星には海が無い。
しかし、このことはばれてはいけない。
「海が無い…?お前…?」
「え、え~っとぉ。」
(やだ!どうしよう?先輩に私の正体がバレちゃう!)
夏美の焦りが頂点に達した時!
「お前、海なし県の出身だったのか?」
「へ?海なし県?そうそう、海なし県の出身なの!」
(良かった~!バレなかった!)
心の中でホッとする夏美だった。
(そう言えば、俺、コイツのことよく知らないよな?出身地から、どんな事をしてたかとか…?)
再び、誠の中で夏美に関する謎が幾つか出て来た。
浜辺にビーチパラソルを差し、シートを引いた誠が、左横に寝そべる夏美を見ながらふと思った。
その時!
「あ゛~っ!」
夏美がすっとんきょ な声を上げて叫んだ!
「ジュースこぼした!」
「はァ?」
夏美が手に持っていた缶ジュースをこぼしていまい、シートをぬらしてしまった。
夏美は慌ててシートを拭くが、無防備にも正座をしたような姿勢から背筋を倒した格好となり、右横に座る誠の目の前にビキニパンツのお尻を突き出すような姿勢を取った。
(コイツ…、結構良いケツしてんな!)
夏美のビキニパンツを眺め、その中心となる水着のクロッチの部分を見ながら、誠は固唾を飲んだ。
「え?」
誠が唾を飲む音を聞いた夏美が我に返ると、再び誠を睨み付けた!
「先輩、またやらしい事考えましたね…。」
「い、いや、何も考えてないよ!」
「嘘だーっ!先輩、私のお尻見て喜んだ!」
また機嫌を損ねた夏美をなだめるため、誠は海の家にジュースを買いに行かされた。
「ちぇっ、何が『せんぱ~い、私、のどが渇いたぁ。先輩だから後輩に奢るのはあたりまえですよねぇ~。』だ!何で先輩の俺が後輩にパシられてんだ?」
おいしい思いをしたとは言え、何か腑に落ちない誠だった。
そんな誠と夏美を、何者かが海の家の影から覗いていた。
そんな事はつゆとも知らず、それからしばらくの間は海に入って思いっきりはしゃいだ2人だった。
海から上がった夏美が、1人で海の家に向かった。
「どこ行くんだ?」
「ちょっと…。」
「あぁ、べん…。」
便所と言おうとした誠を夏美がキッと鋭く睨み付けた。
流石に誠も何も言わなくなった。
(誠先輩って本当にデリカシーが無いんだから!あんなんじゃ彼女になって上げないわ!こんなにカワイイ私だから、誰かにナンパされても知らないわよ!先輩って私の事が好きな癖に、正直じゃないから!)
少しプリプリした夏美が海の家に入った瞬間!
「ねぇねぇ、カワイイお姉さん!」
誰かが夏美に声をかけた。
(ほ~ら来た。私の魅力って、スゴいでしょ!)
心の中で浮かれる夏美が声のする方に振り返ると、そこには、寝癖が酷くてニキビ面、かなりの肥満体の青年が立っていた。
この青年の汗の匂いだろうか?ツンと鼻を突く嫌な臭いが夏美の鼻に入り込み、夏美を不快にさせた。
(この人ムリ~。)
「は、はい?」
笑顔が引きつる夏美に向かってこの青年が再び話した。
「俺、良いとこ知ってるから、一緒に遊ばない?」
男は夏美にナンパして来たが、夏美は相手にする気が無かった。
「結構ですっ!彼氏が居ますし。」
「あの人?あんなかっこわるい人が?」
(何なのよコイツ、気持ち悪く私にナンパして来て、誠先輩の悪口を言うなんて…。)
夏美は無視を決め込み、女子便所に駆け込んだ。
しかし、この男が事もあろうか、夏美が入った女子便所に自分も入って来た!
「何するんですか?」
「お姉さんの事が好き!」
「痴漢!変態!大声だして人呼びますよ!」
夏美が怒って人を呼ぼうとした時!
男が夏美の口を塞いだ。
「うぐぐーっ!むむーっ!」
「大人しくしたら危害は加えないよ!」
男はなかなかの怪力の持ち主だろうか?夏美の口を塞ぎ、抵抗する夏美の両手を掴むとそのまま夏美を持ち上げた。
「ぐぐーっ!ふむむむーっ!」
(いやあ!犯さないでーっ!)
恐怖から涙があふれそうな夏美は必死になって抵抗するが、男の手から逃れることが出来なかった。
「じゃあ、楽しいとこに行こうか?」
「ううーっ!むむーっ!」
(誠先輩っ!助けてーっ!)
男は夏美の両手を掴んで持ち上げたまま、女子便所の個室に入って行った。
その瞬間!
夏美が連れ込まれた便所が赤黒く光り、再びドアが開いた時には夏美と男の姿が消えていた。
「遅っせーな!アイツ!」
なかなか海の家から帰って来ない夏美を心配した誠が海の家に入った。
「どうせ何か買い食いしてんだろ!」
そう思って当たりを見回したが、夏美の姿はおろか、さっきまで海水浴客で賑わっていたはずの海の家に、客どころか店員さえも居なくなっていた。
「おかしいな?」
誠が海の家の中で夏美を探していた時、誠の目の前に何者かが立ちはだかった。
「お兄さん、どうしたの?」
それは、先程夏美を連れ去った男だった。
「連れの女を探してるんだ…。」
(コイツ、何か気味悪いな…?)
誠が話を終えて夏美を探そうとしたが、
「さっきのお姉さん、あんたの事を『彼氏』って言ってたけど、違うんだね!」
「え?夏美の事、知ってるのか?」
誠は、男が夏美の事を知っていたことに驚いた。
「あのお姉さん、夏美って言うんだ!」
「今、彼女がどこにいるか教えてくれないかな?」
誠が男に夏美の居場所を教えて貰うように頼んだ。
「…こっちだよ。」
男は海の家の居間に上がり、奥の壁にある物置の戸を開け、誠と中に入った。
戸が閉まった瞬間、男が夏美をさらった瞬間に発した赤黒い光が物置から出た。
物置の中は何故だか広い和室のようになっていて、全体的に薄暗く、橙色の照明が2カ所あるだけだった。
「うむむむーっ!」
くぐもった声がする方を振り向くと、柱に縛り付けられた夏美が手ぬぐいで猿ぐつわされて立っていた。
「夏美…?」
「ぐぐーっ!ふぐぐーっ」
(せんぱーい!助けてーっ!)
足首、膝、太ももに2カ所、腰、胸の上下に細い荒縄で縛られ、手は後ろ手に、手のひらで反対側の肘を掴むような格好で縛られた上、首から胸の前、へその辺りを通り、股間に来たところで後ろに回り、尻の間を通って夏美の両手を縛る縄が、夏美を更に苦しめた。
「何でコイツに酷いことをするんだ?」
誠が男に向かって怒鳴りつけた。
しかし、男は、
「だって、悪い事したのは夏美ちゃんだよ!」
「はァ?」
「夏美ちゃん、何人も殺してる悪い人だよ!」
「馬鹿言え?夏美が人殺しするわけ無いだろ?」
意味が分からない事を言う男に、誠は激しく罵った。
「ゴーマ様が言ったんだ!間違いない!」
「ゴーマ様?」
(え、ゴーマって?確か…ッ!)
男が言ったゴーマの名を夏美は思い出した。
そう、夏美を人体実験しようとした山崎親子が変身した怪獣ラフレが絶命する前に言ったあの言葉だ!
「夏美ちゃん思い出したかい?」
「変態野郎!」
頭に血が上った誠が男に向かって殴りかかろうとしたが、
「うぜぇよ、あんた!」
「ぐはぁっ!」
「うむむむーっ!」
(せんぱーいっ!)
怪力自慢の男の右パンチが誠の腹部を強打し、誠は気を失って床に倒れた。
「邪魔者が居なくなったとこで、さっきの続きだけど、夏美ちゃんは沢山の宇宙人を殺してきたんだよね?」
男がニタニタしながら、夏美の猿ぐつわを取って、いやらしく話した。
「ぷはあぁっ、はぁ、はぁ…、そんなこと無いわよ!みんな悪い宇宙人よ!」
「その中で、以前夏美ちゃんをナンパした「剛」って人、覚えてる?」
「…え?」
夏美は思い出した。
以前、誠との仲がギクシャクしていた時に自分を騙して地球防衛軍の基地を爆破しようとしたチャラけたフブラ星人の事を!
「な、何でその事を…?」
「だって、剛はおれの兄貴だよ!」
「え?」
(に、似てない?)
夏美が驚くのも無理はない。
確かにフブラ星人の剛と目の前の男とでは容姿からして全く違っていた。
「今、俺が兄貴と似てないって思っただろ?え?」
「そ…、そんな…。きゃあああ!」
男は夏美に詰め寄ると、夏美の胸や尻、それに太ももを鷲掴みにしてから揉みしごいた。
「容姿が全く違う兄弟だったから周りや兄貴から随分と馬鹿にされたよ!だからあんな馬鹿兄貴が死んでも悔しくない。しかし、いまの俺はゴーマ様のしもべとなり、ゴーマ様のご指導の下、宇宙を統一するんだ!」
「ゴーマ様って、誰なの?それからいい加減、私をおもちゃみたいにいじくるのは止めて!」
夏美が男に向かって尋ねた。
男が手を止めると、
「ゴーマ様は宇宙の皇帝!全宇宙の支配者だ!」
男が目を大きく見開きながら喋った。
(コイツ、イッてるわ!)
更に男は喋った。
「ゴーマ様のお言葉は絶対!だから、ゴーマ様の命令により、夏美!否、スーパーシャイニー!お前を処刑する!」
(や、やっぱり私の正体を…。)
「だ、誰があんたなんかに殺られるモンですか!馬鹿にしないでよ!」
夏美が強がっても、頑丈に縛られた身ではどうする事も出来ない。
増してや、シャイニーアイは浜辺のシートの上に置いたままの鞄の中にあるから取ることも出来ない!
(どうしよう?このままじゃあ、この変態になぶり殺される…。)
「ほぅ~っ、もしかしてコイツが欲しいのか?」
男が自分の海水パンツのポケットの中からシャイニーアイを取り出した。
「あっ、私の、返して!」
「嫌だね!」
男が夏美のシャイニーアイを片手に持ち、子供じみたように夏美の顔の前でちらつかせた。
(く、くっそおお!こんなに馬鹿にされて…!)
夏美の怒りがだんだんと湧き出て来た。
その時!
「ふざけるな!」
気絶していた誠が起き上がり、男からシャイニーアイを取り戻した。
「邪魔するな!」
「ウッ!」
男が再び誠の腹を殴り、誠はまた床に倒れた。
しかし、殴られた際に誠が奪い取ったシャイニーアイが弾みで夏美の顔にかぶさり、夏美がスーパーシャイニーに変身する事が出来た!
(な、夏美、あれ?)
薄れゆく意識の中で、誠は夏美が光に包まれる様子を見たが、夏美がスーパーシャイニーに変身し終えるまでに再び意識を失った。
「し、しまった!」
男はスーパーシャイニーの出現に焦ったが、即座に自分もフブラ星人の姿に変身した。
しかし、以前スーパーシャイニーに倒されたフブラ星人の兄と違い、全体的に黒紫色の甲冑を着た格好だった。
「はああああ!」
スーパーシャイニーは自分を縛る縄を強引に裂くと、目の前のフブラ星人に殴りかかった。
「負けるかーっ!」
フブラ星人はスーパーシャイニーのパンチを交わしつつ、スーパーシャイニーの胴を力一杯殴った。
「ウッ!つ、強い!」
「そうさ!俺は小さい頃から兄貴や他の人から馬鹿にされ、見返したい一心で身体を鍛えたからな!」
確かに、以前戦ったフブラ星人とは違い、破壊力のあるパンチだった。
「ほら、どうした?」
今度はフブラ星人が有利になって、スーパーシャイニーが劣勢になる。
(今ここでシャイニーアローを使うと誠先輩にも被害が…。)
防戦に回るシャイニーに焦りの色が出始めた。
「ほらほら、早く必殺技のシャイニーアローを出せよ!」
その時!
「ウ、ウワッ!」
突然、フブラ星人が前のめりになってその場に倒れた!
フブラ星人の足下には、気絶していたはずの誠がフブラ星人の両膝をタックルの要領で掴んでいた。
「シャイニー、早くシャイニーアローをっ!」
「誠先輩!危ないから離れて!」
「えっ?」
シャイニーの言葉にフブラ星人から誠が離れた。
「お、お前ら~っ!」
怒りに満ちたフブラ星人が立ち上がる瞬間!
「シャイニーアロー!」
「ギャアアアア!」
スーパーシャイニーの必殺技であるシャイニーアローが炸裂し、フブラ星人の破片が部屋中に飛散する前に、
「シャイニーブレス!」
スーパーシャイニーの技であるシャイニーブレスを使って、誠の居る先に飛び散るフブラ星人の肉片を別の方向に吹き飛ばした!
「シャイニー、ありがとう。」
「誠先輩、怪我は?」
誠の身を案じるスーパーシャイニーだったが、
「何で俺の事を『誠先輩』って呼ぶの?」
誠には、何故スーパーシャイニーが自分の事を誠先輩と言うのか分からなかった。
否、以前から抱いていた疑問が更に膨らんだ。
「…え?」
スーパーシャイニーは誠に自分の正体がバレるのを恐れたが、その瞬間…、夏美が縛り付けられていた部屋が消え、海の家の物置に戻っていた。
「先輩っ!」
それまでスーパーシャイニーがいたはずのところに、水着姿の夏美が誠に向かって叫んだ。
「な、夏美?お前…。」
「またスーパーシャイニーに助けてもらいましたよ!」
「…って、夏美?お前、まさか…?」
「…へ?いや、いや…?」
誠が夏美の事をスーパーシャイニーだと言おうとした瞬間!
「誰だ?勝手に物置に隠れやがって…?」
「え?」
「げ?」
海の家の店主が物置の戸を開け、中に居た誠達を見つけた。
しかも運悪く、フブラ星人によって頑なに夏美を縛り付けていた荒縄と、夏美の体中に残る縛られた痕がくっきりと残っていたために…。
「お前ら、人の店の中で…!」
「い、いえ、違うんです!違いますから!」
すぐに警察を呼ばれ、誠が夏美を監禁して縛った訳ではないことが証明されたものの、怪しい行動をするなと警察官や海の家の店主からこっぴどく叱られた2人は、しょんぼりしながら仕方なく海水浴場を後にした。
帰りの車中、助手席に座っていた夏美は遊び疲れや戦いの後の疲労感から、すぐにスヤスヤと眠りについた。
(コイツ、寝顔がカワイイな。)
運転中の誠はたまに夏美の寝顔をチラチラ見ながらそう思っていた。
(今日はさんざんだったな。でもまぁ、夏美の初めての海体験だから、夏美が楽しめたからいいか…。)
夏美も夢の中で、誠との楽しい一時を思い出していた。
(初めての海って気持ちよかったあ!海ってこんなに楽しいところだったんだ!誠先輩ともいつかまた来たいなぁ…。)
夏美が寝顔のままニッコリした。
(でも、まさか…、夏美がスーパーシャイニーだなんて…。人間が宇宙の戦士だなんて…、あるわけ無いよな。)
誠も今まで夏美と出会ってからの事を思い出していた。
初めて夏美を見たグリー星人との戦い、それはスーパーシャイニーが初めて地球に現れた時だった。
そしてカマリラ星人に捕まり捕食されそうになった時もスーパーシャイニーだけじゃなく夏美も自分の事を助けてくれた事、花粉の研究施設で夏美が人体実験の被験者として実験台に拘束されていた所からスーパーシャイニーが現れた事。
そしてついさっき、スーパーシャイニーが自分の事を誠先輩と言った事…。
これらを考えると、まるで夏美がスーパーシャイニーであるかのようだった。
否、夏美がスーパーシャイニーだとしたら合点が行く。
誠からしたらおっちょこちょいでがさつなとこが目に付くけど、カワイイ後輩の夏美がもしかしたらスーパーシャイニーなのか?と、まだ信じられない気持ちの方が強かった。
「夏美…、お前…。」
誠が助手席でスヤスヤと寝息を立てている夏美を見た。
(まさか…な。)
と、誠が思った時!
「…っぃ。」
夏美が何かを喋った。
寝言かと思った誠だったが、その声はだんだんと激しく、そして荒くなっていった。
「…熱い!はぁはぁ、熱い!」
「夏美?」
「…熱いよ、熱い!はぁはぁ…熱い!」
すぐに路肩に車を止め、誠は夏美の額に手を当ててみた。
「熱っつい!何だこの熱は?」
「…せんぱ…い、熱いの!」
「おいおい、嘘だろ?メチャクチャ熱すぎるだろ!」
誠は再び車を走らせ、地球防衛軍基地内の病院へと急いだ!
「どうなってんだ?」
夏美の急変に驚く誠だった。
しかし、夏美を助けるために誠は急いだ!
(も、もぅ…体力がもたない…。あと一回、あと一回スーパーシャイニーに変身したら、私は死ぬのね!…、嫌だ!嫌だ!死にたくない!大好きな誠先輩とこれから楽しい思い出をたくさん作りたいときに死にたくない!…、でも、ゴーマとか言う宇宙人が来れば…、私はスーパーシャイニーとして戦わなきゃいけない!どうしたらいいの?お父様!先輩!)
尋常じゃない高熱にうなされる夏美は心の中で葛藤を続けていた。