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第6話:恐怖の人体実験

『クカエエワアオ!』


突如として現れた植物怪獣『ラフレ』が毒性の強い花粉を撒き散らし、触手などで街を破壊しながら、地球防衛軍と戦っていた。


「花粉を吸うなーっ!」


完全防備のヘルメットで何とか花粉を吸わないようにはしたものの、植物とはいえそこは怪獣!地球防衛軍の装備する兵器では太刀打ち出来なかった。


「く…、このままでは…。」


地球防衛軍の女性隊員である伊藤夏美は、唇を噛み締めながらラフレに一撃を加えられないもどかしさに苛立った。

そこで夏美は、ラフレに向かって一斉に射撃する他の隊員から遠ざかり、ラフレによって破壊されたビルの瓦礫の中に隠れ、胸ポケットからシャイニーアイを取り出してから目にかけた。

すると、夏美は地球を守るスーパーシャイニーに変身し、ラフレを蹴飛ばし、ラフレの動きを封じた。


『クカエエワアオ!』

「スーパーシャイニー、頑張れーっ!」

「総員、援護射撃!目標、怪獣ラフレ!」


地球防衛軍の援護射撃を受け、スーパーシャイニーは自身の必殺技であるシャイニーをラフレ目掛けて撃ち込んだ。


『クカエエワアオ!』


断末魔の叫び声のようにラフレが喚きながら爆発した!


その時!


ラフレが爆砕されたと同時に体内に含蓄されていた大量の毒性の強い花粉が撒き散らされ、スーパーシャイニーがそれを拡散されないように自身によって来るように吸い込んだ。


「ゲホッ、ゲホッ!」


咳込み苦しむスーパーシャイニーは何とかして伊藤夏美の姿に戻ったが、人間体では出来る事に限りがある。

夏美はラフレの花粉の毒に犯され、他の地球人同様に身体がワナワナと震えだし、とうとう、その場に倒れ込んだ。


「夏美ーッ!夏美ーッ!」


程なく、ラフレとの戦闘中に姿を消した夏美の身を案じた鎌田誠隊員が地面に横たわり意識を失っている夏美を見つけて駆け寄った。


「夏美ーッ!しっかりしろ!夏美ーッ!」


辺りにはまだラフレの毒花粉があるためヘルメットにフルフェイスゴーグルをつけた誠とは対象的に、変身の際にゴーグルを外し、なおかつ、変身を解いた後に何故かヘルメットを外した夏美の姿では、更に花粉を浴び続けている。

誠は直ちに他の隊員に救助要請をして、夏美を地球防衛軍の基地内の病院に運んだ。


病院で応急処置を施された夏美だったが、怪獣ラフレの撒き散らした毒性の強い花粉とあって、完治する方法が見つからなかったが、医師団が治療に最適な機関を懸命に探した結果、S県に花粉や花粉症対策を研究している医療機関があることを突き止め、夏美をその研究施設に搬送することを決めた。


「…、私、どうなるんだろ…。」

「大丈夫だよ。ちゃんと治してもらえるんだから。」

「…うん。」


基地内の病院の病室にいた夏美には不安があった。

未知の毒花粉を吸収して苦しむ恐怖と、遠く離れた所に1人で行く寂しさとが、夏美を苛んだ。


「あ、もしかして、お前、1人で行くのが怖いのか?子供みたいだな!」

「ち、違いますぅ!先輩みたいなお子ちゃまじゃないですからっ!」


誠のからかいに夏美はムッとして布団で全身を被った。


「お前の方がお子ちゃまだろ?俺も非番の時はお前の見舞いに行ってやるから、先ずはしっかりと治してこい!」

「…はぁ~い。」


誠も励ましてくれたとは言え、夏美の不安が完全に払拭されたわけではなかった。


(何だろ?この不安感…。)


何故か胸騒ぎが収まらない夏美だった。


数日後、夏美はS県の花粉症対策の医療機関に来た。

そこはどちらかと言えば研究施設であり、本来は患者に対する治療を行っていないが、今回のように毒花粉を大量に浴びた夏美のケースが非常に稀だった事もあり、特別に受け入れたようだった。


「どうぞ、お掛けなさい。」


夏美の治療にあたるのが、この施設の長である山崎と、その娘の2人で、共に花粉症研究をしているとの事だった。


「伊藤さんは、非常に特殊なケースですから、不安があると思いますが、私達が治療に取り組むので、安心して下さい。」


2人はニコニコしながら夏美に話した。


「ありがとうございます。よろしくお願いします。」

(良かった!感じの良い人達で。)


2人の笑顔に安堵した夏美だったが、この時の夏美には、彼等の心の奥底にある不気味な正体を見抜けなかった。


先ずは問診と花粉のサンプル採取のみで一日が終わり、特別にしつらえた休憩室でゆっくりと休む夏美だった。


「あーっ!たまにはこんなにゆっくりするのも悪くないか!」


日頃の激務と緊張感から解放された夏美には、この施設に来た事がまるで旅行のようにも感じられた。


「あっ、いっけない?定時連絡を忘れてた。」


解放感からか、地球防衛軍への報告を忘れてた夏美は連絡をしようと何故かパジャマから隊員服に着替え、無線機を使おうとした。


「あ、あれ?何で私、着替えたのかしら?」


自分の天然さに呆れつつも、どうせ1人だしとあっけらかんとした夏美だった。


「本部連絡願います。本部連絡願います。…。」

『…。』


何故だか、本部との無線連絡が効かなかった。


「えっ?何で?連絡出来ないって?」


無線機の故障かと思いつつ、夏美は部屋の外に出て、無線連絡の通じる所を探した。

しかし、何故か施設内のどこにも無線連絡が通じる所が無かった。


「やだ…、どうしよう…。確かここは重要な研究施設だから、夕方は完全に施錠して内外への出入り禁止になってるから外に出られないし…。」


途方にくれた夏美だったが、階段にさしかかったとき、地下から某かの声を聞いた。


「何かしら?」


ふと、興味本位で下に降りていく夏美だった。


地上に出ていた綺麗な内装とは打って変わって、コンクリート剥き出しの殺風景な地階は、夏美に不安感を感じさせた。


(やだ…、何もないよね?)


そう思いながら、ゆっくりと地下の通路を歩く夏美に、誰かの会話が聞こえてきた。


「…、サンプルはどうだ?」

「…、休憩室で休んでます。」

「…、今日はそのまま寝ててもらい、明日からじっくりと実験しようか?」


夏美が声のする部屋のドアにさしかかった時、たまたまドアノブに触れて、ガチャリと音を立ててしまった。


「誰だ!?」

「へ?え?えっ?キャーッ!」


いきなりドアが開き、中に居た何者かの手が恐怖で引きつる夏美の右手を握り締め、強く引っ張って部屋の中へと引きずり込んだ。


「きゃっ!」


部屋の床に尻餅をつかされた夏美が見たものは、昼間のにこやかさが消え、まるで感情がなくなったかのような山崎親子が立ちはだかっていた。


「え、や、山崎さん?」


山崎親子の違いぶりに夏美は狼狽した。


「お前は今の話を聞いていたのか?」


無表情の父親が夏美に問いかけた。


「いえ、何も…、キャッ!」


刹那、娘が鞭を振り、夏美の側の床に打ちつけた。

夏美は恐怖でおののき、ガタガタと震えながらその場から動けなくなった。


「や、止めて下さい!」


夏美は必死に懇願したが、無表情で夏美を睨み付ける娘には届かなかったか…、


『ビシィィィン!』

「ギャアアア!」


夏美の右足の太ももに娘の鞭が当たり、夏美の身体に激痛と恐怖が走った。


「痛いっ!痛いっ!止めてーッ!」

「正直に言いなさい!」

「本当に…、本当に聞いてません!知りません!」


『ビチィィィン!』

「きゃあーっ!いやあーっ!」


再びすぐ側に鞭が打ちつけられ、身体を守ろうとして両手で頭を抱えながら体を丸め、夏美はワナワナと震えるしかなかった。


「そうか、なら聞かせてあげようか。」


父親が淡々と話し始めると、娘が夏美の髪の毛を鷲掴みにしてから、涙でクシャクシャになった夏美の顔を無理矢理上げた。


「私達親子は今まで花粉の研究に力を注いできた。花粉にはその花の遺伝子情報が揃っているから、医療や農業に役立つ研究をするためだ…。」


父親は更に話を続けた。


「しかし、明るい未来を目指す私達の研究を誰も相手にしないばかりか馬鹿にする始末、苦汁を舐める日々が続いた…。」


夏美は意味が分からず、きょとんとしながら話を聞いた。


「しかし、そんな私達親子の研究成果を認めてくれた方が現れた。そして、ある花の花粉をくださり、その花粉から人間を超人化させる薬品を開発することに成功した。」

「…超人化?」

「そう、お前達地球防衛軍が戦った怪獣ラフレだよ!」

「…ッ!」


父親の言葉に夏美は声も出せずただただ驚いた。

あの時自分が戦い、そして倒した怪獣の正体が人間だった事に!


「そ、そんなっ…、まさか、まさか、人間を怪獣に改造するなんて?…、ヒドーい!」

「酷くは無い!ラフレは私の妻だったからな。」

「…?」

「妻は喜んで実験台になったよ!人類の未来の為なら、こんなに素晴らしいことはないとね。」


この時、父親がニヤリと笑いながら夏美の顎を左手で触り、恐怖に怯える夏美を苛めて楽しんだ。


「…ま、まさか、私を…?」


夏美は瞳を震わせながら、これから自分に怒るであろう惨劇を想像した。


「フフフ…、君は察しが早いね。そうだよ。次は君がラフレになるのだよ!」

「い…、いや、嫌、嫌です!嫌ですっ!お願いですから止めて下さい!イヤーッ!」


夏美は父親と娘を交互に見ながら助けを乞うたが、気が狂った2人は耳を貸さず、娘が白衣のポケットから取り出したハンカチを夏美の顔に近付けた。


「イヤーッ!止めて下さーいっ!誠せんぱーい、助けてーッ!…ッ!」


泣き叫びながら必死に誠に助けを求める夏美だったが、それも叶わず、娘のハンカチを口に当てられた。


「ふごおーっ、ぶがごおおおおーっ!」

(いやあーっ、いやあああああああ!)


最後の抵抗も虚しく、夏美は全身から力が抜けたかのように大人しくなり、遂にはパタリと抵抗を止めて意識を失いその場に倒れた。


「催眠効果のある花粉でよく眠るが良い。明日には色々と人体実験をした後にこれを打って、お前を怪獣ラフレにしてあげよう。」


山崎親子がお互いに片手に透明な液体のある注射器をちらつかせながら、気絶して横たわる夏美をみてほくそ笑んだ。


翌日、定時連絡をよこさない夏美を気遣い、誠が夏美を収容している研究施設に来た。


「すいませ~ん、失礼しま~す。」


誠は何度も呼んだが、誰もやっては来なかった。


「誰もいないなんて…?」


不思議に思った誠は取り敢えず夏美に会い、着替えを渡すのと、定時連絡をよこさなかったことを叱りつけるために入ろうとし、階段にさしかかった時!


「誰ですかぁぁぁ!」


と、地下の階段から白衣を纏った女性が階下から怒鳴り込んで来た。


「すいません。自分はただ、こちらで世話になっている伊藤夏美に渡したいものがあって…。」


誠がびっくりしながら言い終わる前に、山崎の娘の方は誠から鞄をひったくるようにもぎ取ると、


「伊藤さんは面会謝絶ですから、私が渡します。」


山崎の娘は面会謝絶を理由に誠をさっさと追い出そうとした。


「あと、本人に伝えたいことが…。」

「駄目です!お帰り下さい!」

「用件を伝えるだけでも伝えさせて下さい!」

「お帰り下さい!」


階段の前でお互いに言い合いになっていた。

そこに、山崎の父親の方が現れた。


「仕方無い。ただし、花粉の感染が疑われるので、ガラス越しでしかお会い出来ませんよ。」


困り顔の山崎の父親としかめっ面の山崎の娘に案内され、誠は夏美が捕らわれている地下室に通された。


(何で女の方は頑なに、それもヒステリックに拒むんだ?)


誠は何がしかの疑問を抱いていた。


「何で夏美…、いや、伊藤君を地下室に入れているんですか?」


誠が何気に訪ねた。


「正体不明の花粉が万が一外部に漏れ出さないようにしているからです。」


山崎の父親の方が淡々と答えた。



「こちらです。」


無機質な地下通路の先に、ガラス越しに中が見える部屋に案内された。


ガラスの向こう側には、いつの間にか先に来ていた山崎の娘の方が白の防護服を着用し、ベッドの上で隊員服姿で横たわる夏美の右腕に注射器を刺していた。


(夏美、辛くても我慢な。)


治療の為と思っている誠は、実際には実験台として某かの薬品を注入されている夏美を憐れんだ。


「あの注射は何ですか?」

「体内に入った花粉を殺菌する抗生物質です。」

「何故彼女はあの服を着ているのですか?」

「彼女が着たいと言うので着せてますが。」

「治療には何時までかかりますか。」

「さぁ…、何分と初めての事ですのでわかりません。」


2人が問答している最中に、ベッドの上に横たわる夏美が身体をビクビクと震わせた。


「せ、先生、あれは大丈夫なんですか?」

「大丈夫ですよ。彼女の場合、特殊な花粉を浴びてますから、抗生物質も強力なのを入れてますので、身体がウィルスと間違えて拒否反応を示しているだけで、やがて収まります。」


次第に、夏美のけいれんも落ち着いて来た。

しかし、誠の目には、


(何で体の両端と胴体の部分だけが動いていないんだ?)


誠には見えていなかったが、夏美は両足首と両腕と胴体と首を透明なバンドでベッドに縛り付けられており、自由に身動きが取れなかった。

そんな中で、夏美はガラス越しに自分に面会しに来た誠を見つけた。

しかし、投薬のせいか、人体実験の被験者にされた夏美はただただ誠を見つめるだけで、助けを呼ぶことさえも出来なかった。


(誠先輩助けて!私、人体実験された上に怪獣にされる!)


誠を見つめる瞳から涙がこぼれ落ちた。


(…夏美。)


「職場への連絡が必要なら、私か娘から伊藤さんの容態をきちんと説明しますから、これでお引き取りを。」

「…、わかりました。」


渋々ではあったが、山崎の父親の方に急かされ、誠はガラス越しにいる夏美と離れるのを悔やみながら地下室から去った。


(行かないで、助けて、せんぱーい!)


これから始まる惨劇から自分を救ってくれる唯一の希望であった誠が遠ざかって行くのを見て、夏美は絶望感に満たされた。


(私…、怪獣にされるのね…、そして地球防衛軍のみんなと戦うの…、仲間を敵にして…、誠先輩を敵対して戦うのなんて嫌っ!神様助けて!)


絶望のどん底に叩き落とされた夏美の周りを山崎親子が囲んだ。


「けいれん効果はどうだった?」

「けいれんしたけど、直ぐに収まったわ。お母さんの時は凄まじかったけど、彼女の効きって、何だか普通の人間とは大違いね。」

「まだ二人目の実験だ!データが不十分でない時から勝手に想像するな!」

「ごめんなさい。」


夏美が特別なのは無理もない。彼女はスーパーシャイニーだから、普通の地球人の反応とは違って当然である。


「午前中から幻覚作用や身体の硬直状況、異常発汗作用とかを見てきたが、どうも彼女の身体は特異体質かも知れないな。」

「じゃあ、お父さん…。」

「地球防衛軍に感づかれそうだし、そろそろラフレに改造しようか?」


父親の言葉に娘は一本の太い注射器を手に取った。


「フハハ、あの時母さんは『止めて!』だの、『あなた達は狂ってる!』と大暴れしたから大変だったが、今回は筋弛緩剤を予め打っておいたから楽だな。」


(や、やっぱり、嫌がってたんだ!ヒドい!人間じゃない!)


ベッドに磔られた夏美が、非人道的な2人を見ながら悔し涙を流した。


「この子ったら、泣いてるわ。」

「ではそろそろ打ちなさい。」

(もうダメ…、誠先輩…。)


万事休すとなった夏美は観念したその時だった!


「待てええぇぇぇい!」

「誰だ?お、お前は!」


夏美の事が引っかかっていた誠が、夏美が捕らわれている部屋に入って来た。


(先輩っ!)

「お前等、夏美に何する気だ?」

「邪魔するな!お前には関係無い!」

「今すぐそいつを返せ!」

「この子は人体実験のサンプルよ!様々な毒性の強い花粉を体内に投入してるから、返したところでどうなるかわからないわね!」

「人体実験だとぉ?」

「最後の仕上げをするところだ!邪魔するな!」


誠が娘の方を見ると、娘は手に持っていた注射器の太い針を夏美の首筋に刺そうとしていた。


「させるかああ!」

「きゃっ、は、離せ!」


誠は娘の持つ注射器を奪おうと娘の右腕を掴み、させまいとする娘との間で取っ組み合いとなったが、その最中、


「ギャアアアア!」


娘の左腕に注射器の針が刺さり、中の液体が娘の体内に注入された。


「ああっ…、あっ…、がはあっ…。」


注入直後から娘はけいれんを繰り返して来た。


「貴様あ~っ!よくも娘をーっ!」


父親の方が誠に殴りかかろうとした。


「お前等、親子だったのか?」

(もうっ!ツッ込むとこはそこじゃない!)


ベッドの上で誠のツッ込みに対して心の中でツッ込んだ夏美だった。

誠と父親は取っ組み合いとなったが、誠の膝蹴りが父親の金的に命中し、父親はその場にしゃがみ込んで悶えうった。


「夏美!今すぐ助けるぞ!」


誠が夏美をベッドの上から起こそうとしたが、ベッドに透明バンドで拘束されている夏美を起こすことが出来なかった。


「ど、どうなってるんだ?」

(透明バンドで拘束されてるの…。花粉の毒で喋れない!お願い、気付いて!)


人間を起こそうとしただけではバンドは切れない。

起き上げられない夏美の異変に戸惑いと苛立ちを覚えた誠だった。


そこに、


「ギャア!」

(きゃあああ!)


金的を膝蹴りされて悶えうっていた父親が起き上がって誠の後頭部を殴ると、誠は膝から崩れ落ちて、夏美のベッドの上にもたれかかった。


「じ、実験の邪魔をする、な…。」


父親はもう一つのラフレに変身する注射器を持ち、夏美の右腕に刺そうとした。


(いやああああ!)

「や、止めろーっ!」


恐怖でひきつる夏美の目の前で、誠が懸命になって父親の右腕を掴み、夏美が怪獣にされるのを防いだ!


「は、離せ!」

「させるかあああ!」


再び取っ組み合いとなる二人だった。

その時!


(…ッ!)


夏美だけがこの部屋のとある異変に気がついた。


某かの蔦のような物が誠に向かって伸び出していた!


「先輩、危なあああい!」


誠を助けたい一心で奇跡的にも花粉の毒に冒された身体から夏美は懸命に声を張り上げ、誠にピンチを知らせた。

誠は夏美の悲鳴から後ろを振り返ると、自分に向かって伸び出ている蔦のような物を見て反射的によけた。

すると、蔦のような物は父親に巻きつき、身体を締め出した。


「う、うわああああ!」


父親に絡まる蔦のような物の根元を見ると、さっきまで娘が倒れていた所に大きな植物のようなものが横たわっており、ゆっくりと立ち上がった!


「ヨクモ…、ヨクモ…ッ、ユルサンゾ!」


植物のような化け物は自分の蔦で巻き付けていた父親を離すと、ベッドの上で拘束されている夏美に巻き付こうとして、再び蔦を伸ばした。


「止めろーっ!」


誠は夏美を庇おうとして夏美の体に覆い被さったが、蔦は誠を夏美からどかそうとして、強かに誠の身体を鞭打った。


「くっ…、ウッ…。」

「先輩!私の事はほっといて逃げて!」

「俺1人で逃げれるかよ!お前は俺の…、お前は俺にとって…。」

「…ジャマダ!」


誠が言い終わる前に蔦が誠に絡みつき、誠を壁に向かって投げつけた。


「ギャアアアア!」

「止めてーっ!」


その時だった!


『シュッ!』


以前、夏美がビット星人に襲われ、拘束された時に、ビット星人に取り上げられていたシャイニーアイを奪い返して顔に装着させる、ベルトのバックルの上部にあるスイッチが、誠が蔦に投げられる前に作動したらしく、隊員服の胸ポケットから飛び出したシャイニーアイが自動的に夏美の顔に装着された。


「…え?夏美…?」


壁に打ちつけられ、激しい頭痛によって周りがよく見えない誠だったので、夏美がスーパーシャイニーに変身した事には気がついてなかったようだった。


「でやああああ!」


スーパーシャイニーは鉄拳で怪物をどかせると、壁に打ちつけられて悶えうつ誠を抱き上げ、研究施設の地下室から飛び出した。


「…シャイニー、ありがとう。」


シャイニーに抱えられた誠はポツリと礼を言うと、シャイニーは心の中で、


(誠先輩、いつも私の事を助けてくれて、ありがとうございます!)


と呟いた。


シャイニー達が研究施設の外に逃げ出した直後、


『ガシャアアアン!』


突如として研究施設が崩れ落ち、中から怪獣ラフレが2体も現れた…?


「2体も…?あの親子なの…?」


シャイニーは誠を施設の外に置くと、現れたラフレ目掛けて戦いを挑んだ!


「グアオオオ!」

「ギャオオオ!」


2体のラフレは、互いの腕から伸びる蔦のような物がシャイニーを雁字搦めにしようとした。


「ハッ、シャアア!」

(あの蔦が邪魔して攻撃出来ない!)


しかし、困難はそれだけではなかった。


(か、身体が…、重い…。)


スーパーシャイニー、否、変身前の伊藤夏美にとって、拷問にかけられ、かつ、生物試験にかけられる事は拷問に等しかった。

しかし、宇宙人の侵略ならば全力で取り組む!

地球を守る任務を帯びた誠は必死になって怪獣ラフレに向け、拳銃を撃った。


しかし、ラフレには効かないのだろうか?

2体のラフレは漫然としてスーパーシャイニーに立ち向かう!


が、変身前の伊藤夏美の状態でいろんな毒性の強い花粉を注入され、夏美は、戦い方に良作を見出すことにあぐねていた。


「か、身体が…、重い…。」


スーパーシャイニーに変身しても、体内の何種類もの毒花粉が作用して、思った動きが取れない。

それは、近くに居た誠も同じく感じていた。


「何で、いつものシャイニーじゃない?…、ま、まさかな?」


誠は以前から何気なく思っていた疑問がこの時にも湧いたが、スーパーシャイニーの危機に戸惑いは無用とばかりに、スーパーシャイニーの援護を必死になって続けた。

だが、当のスーパーシャイニーは身体的な不調からか、動きが鈍いままで、遂には双方のラフレの蔦に両手を絡められた。


(し、しまった!)


両手を双方向に引っ張られては必殺技のシャイニーアローも繰り出せない!

スーパーシャイニーはピンチを迎えた。


「畜生ォォォォォ!離せェェェェェ!」


誠がスーパーシャイニーを縛るラフレの蔦に狙いを定めて拳銃を撃つものの、等身大の人間と、体長約50mはあるスーパーシャイニーやラフレには蚊に刺されたよりも効果がないであろう。

だがしかし、誠は決して諦めずに何度も何度も、ラフレの蔦目掛けて拳銃を撃った。


(先輩、私を助けるために…。)


スーパーシャイニーは決して諦めずに自分の危機を救うために懸命になって戦う誠の姿に感謝してはいたが、このピンチに為す術も無く、どうすることもできない状態に苛立ちを感じていた。

そこに!


『ジャマダ!』

「わああああ!」

(先輩っっ!)


スーパーシャイニーの右手に蔦を絡めていた側の黒みがかったラフレが、新たな蔦を伸ばして誠を弾いた。

幸いにも、誠が弾き飛ばされた先が砂地だったので着地した際の衝撃は比較的軽い物の、怪獣の尋常ではないパワーを喰らえば、普通の人間にはそれだけでもダメージが大きい!

誠は地面で激しく悶えうった。


「よ、よくも先輩をっっ!」


スーパーシャイニーの怒りが頂点に達した時…、奇跡が起こった!


『ワアアアア!』


先程誠を弾き飛ばしたラフレの、スーパーシャイニーの右手を縛っていた蔦が炎を上げて燃えだした!

そこは、スーパーシャイニーを助けるために誠が拳銃の銃弾を撃ち込んだ場所だった。

銃弾の持つ熱が植物であるラフレを燃やしたのだ!

遂にはラフレの蔦が燃えてちぎれてしまい、スーパーシャイニーの右手が自由になった。


『オ父サン!』


残る一体、赤みがかったラフレがスーパーシャイニーを縛っていない方の手の蔦をまとめてスーパーシャイニーに振り下ろした。


刹那!


「シャイニーアロー!」

『ぎゃああああ!』


棍棒と化したラフレの蔦が振り下ろされる前に、スーパーシャイニーの必殺技であるシャイニーアローがラフレに命中し、赤みがかったラフレが瞬く間に燃え上がり、灰と化した。


『オ、オノレ…、娘ヲ…!』


手が燃えたまま、残るラフレが立ち上がってスーパーシャイニー目掛けて突進したが、スーパーシャイニーは再び右腕に光を集め、シャイニーアローを放った。


『ぎゃああああ!』


黒みがかったラフレをシャイニーアローで燃やし、スーパーシャイニーと誠が2体の怪獣ラフレに勝利した!

しかし、ラフレが、


『…ごーま様…。』


と、謎の言葉を残して灰と化した。


(…ゴーマ?何者なの?)


スーパーシャイニーはラフレの最期の言葉に疑問を抱いたものの、変身時間である5分が過ぎようとしたために、遥か上空へと飛び去った。


「せ、先輩…。」


程なくして、ラフレの攻撃で負傷し、漸く地面から立ち上がった誠の前に、満身創痍の身でも誠の事を案じた夏美がふらふらとやって来た。


「な…、夏美、無事だったか?」

「…わ、私の事よりも、先輩の方こそ大変でしょ!」

「べ、別にこの程度、何とも…、イテテ!」

「無理しないで下さい!今日は2度も先輩に助けてもらったのに…。私の事を助けるために…、こんなになって…、私…。」

「え…、2度も…?」


夏美の言葉に誠は疑問を感じた。

研究施設で捕らえられ、人体実験されていた夏美を助けたのは覚えていても、あともう一回が何の事だか検討がつかなかった。

夏美にとっては研究施設で自分が怪獣ラフレにされそうになっていた時に助けてくれた事とスーパーシャイニーに変身していた時にラフレの蔦から自分を解き放ってくれた事が誠に助けてもらった事実でも、誠は夏美の正体がスーパーシャイニーであることを知らない訳だから、誠には夏美の言葉がいまいち理解出来なかった。

しかし、感激している夏美は自分がスーパーシャイニーである事を隠している事をつい忘れ、


「そうですよ!私の事を何度も助けてくれて、今日だって2回も私のピンチを救ってくれたんですよ!」

(そう言えば…、研究施設でいきなりシャイニーが現れたし、施設で夏美を助けたのと、スーパーシャイニーがラフレの蔦に絡められたのを助けたのを足したら2回だよな…?)


誠の中で夏美とスーパーシャイニーが同一人物かと思い始めた。

その時!


「先輩っ!」


感極まった夏美が誠に抱きつこうとしたが、夏美の事が気にかかるがどうしても周りや夏美自身に悟られたくない誠はつい反射的に両手を前に突き出して夏美を止めると、


「わーっ、寄るなブス!お前のブスと馬鹿が移るだろ!」


と、心にもないことを言ってしまった。


(や、やっべー、また言い過ぎた…。この前みたいに往復ビンタを何度も喰らうかな…?)


誠は夏美の怒りを買って、報復される事を心配したが…、


「せ、先輩っ…。」

(わーっ、く、来る!頼むから叩くなら優しく叩いて!)


誠は夏美の報復を覚悟したが…、


「ひ、ヒドいよ…、せんぱ…ぃ。」


いきなり夏美は膝から落ちてその場に倒れ込んだ!


「え?な、夏美?夏美?夏美ーっ!」


怪獣ラフレとの激闘と、その前に受けた人体実験により何種類もの毒花粉を体内に注入された夏美は高熱を発して意識を失っていた。

誠が幾ら叫び続けても起きない夏美はただただ誠の腕の中で眠り続けていた。

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